2/4、5 VCL2 群馬・前橋大会 観戦記

「ハートを射抜かれた。」と指揮官の気持ちを掴んだように、多くの観衆を魅了した高校生内定選手の田中瑠奈の活躍は素晴らしかった。だが、田中に限らず、各選手が役割を果たし、持てる強さを出し切ったことがホーム戦2連勝へと繋がったと思う。苦しみ、悔しさを味わったシーズン序盤があったからこそ今がある。ラスト4試合はもちろん、その先へ。グリーンウイングスが目指す場所へ、一喜一憂することなく、更なる強さを求めて進んでいこう。

新チーム始動からなかなか歯車がかみ合わなかったグリーンウイングスは、皇后杯を含む、年末年始の中断期間を利用し、攻撃重視から守備に力点を置く戦い方へと修正を加えた。「ボールが繋がり、リズムが作れるようになってきた。」とキャプテンの須﨑杏が話すように、ゲームに安定感が生まれ、結果、チームが求めた攻撃にもいい効果をもたらした。チームの修正に成功したグリーンウイングスは、中断明け3勝1敗と調子を上げてきた。

そして、迎えた今季ラストのホームゲームは、2位ブレス浜松、そして、ここまで負けなしで首位を走るトヨタ自動車ヴァルキューレとの2連戦。リーグ戦の順位だけでなく、グリーンウイングスが掴んだ自信を確かなものにできるかどうかと言う意味でも重要な2連戦だった。

だが、そんな大一番にもチームが掴んだ自信は揺らぐ事がなかった。須﨑が、「持てる力を出し切らないといけない。ひとりひとりが強い気持ちを出した結果。」と振り返ったように、浜松には3-1、そして、トヨタ自動車には3-0と、内容、結果で相手を圧倒し、ホームゲームに集まったファンに応えてくれた。

特にトヨタ自動車戦では、高校生内定選手の田中が初スタメンながらアタック決定率50%と驚異的な数字をたたき出し、チームの勝利に大きく貢献した。試合後、田中は「緊張したがやりきらないといけないと思った。練習した事もでき、思いっきりプレーできた。」とはにかみながらゲームを振り返った。

高校バレーの名門・川崎橘に在籍し、春高バレーでもチームのエースとして活躍した。とはいえ、チームに合流してまだわずか、未知数の田中の起用に指揮官は不安がなかったのだろうか?

石原昭久監督は、「首位チームには既存の力だけでなく、新たな必要だと思った。」と起用理由を語り、田中については「すごい、苦しい中でも決める勝負強さがある。」と絶賛した。今シーズンはもちろん、将来のエース候補としても楽しみな存在が現れた。

田中の活躍は2連勝の大きな原動力になったが、もちろん、彼女の活躍だけでは、2連勝は成し得なかったろう。

チームの成長を実感していると言うセッターの栗田楓は、「アタッカー陣は頼もしい、サイドに信頼を置いているし、スパイカーからも要求されるようになってきた。」と話している。選手の入れ代わりが多かった今シーズンは、連携面でちぐはぐさが見られたが、時間が経つごとに改善が見られ、失いかけていた自信を取り戻した各選手たちは、より上を目指して互いに切磋琢磨できているようだ。

リーグの山場だった上位2チームとのホーム2連戦を完勝したグリーンウイングスは、2位のブレス浜松と通算ポイントで並んだ。リーグラスト4試合は、比較的相性のいいチームとの対戦だ。こうなれば4連勝で、昨シーズンの4位を上回る最終順位を期待するが、「まだまだ甘さやくだらないミスもある」(栗田)、「気を緩めたらすぐに崩れるチーム」(須﨑)と各選手が話すように、それほど簡単な事ではない。

石原監督は、「我々は、目先の勝利ではなく、先を見据えたチームを作っている。」と常々話している。そのチーム作りの過程では、苦しさや、悔しさを味わう事もあるだろう。実際、今シーズン序盤は、サマーリーグで1セットもとることができず、国体予選、皇后杯では大学生に敗れ、嘲笑も浴びた。選手たちは、チーム作りの難しさ、勝つ事の大変さ実感してきた。だが、それを乗り越えた先には、チームが求める「強さ」を得られる事もこの2連戦でわかったはずだ。

グリーンウイングスはまだまだ強くなる。だから、ラスト4試合もグリーンウイングスらしい強さを出して戦っていこう。目先の結果に惑わされる事なく、求める強さと、目指す場所に向かって、そして、グリーンウイングスを応援してくれるすべての人の笑顔のために。

2016/17 VCL2 群馬・前橋大会(ヤマト市民体育館前橋)

2/4(土) ブレス浜松戦 ○3-1(25-21、25-22、23-25、25-19)

2/5(日) トヨタ自動車ヴァルキューレ戦 ○3-0(25-20、25-15、30-28)