【新加入選手インタビュー】V1昇格への思いを共有する仲間とともに挑む新シーズン~中田唯香選手

群馬銀行グリーンウイングスは、新シーズンに向けた新たな戦力として、昨シーズンまで同じV2の大野石油広島オイラーズでOHとしてプレーしていた中田唯香選手を迎えた。

中田は、「グリーンウイングスに入ったのもV1昇格をしたいという思いで来たので、まずはそこを目指したい。プレーでも、精神面でも、中心になれるようやっていきたいと思う。」と意気込みを語った。

167センチと小柄ではあるが、昨シーズン、総得点でリーグ6位、サーブレシーブ成功率もリーグ8位と、攻守に活躍した選手だ。27歳の中田選手は、今回の移籍で、Vリーグも3チーム目。豊富な経験は若い選手が多いグリーンウイングスにおいても大きな支えになってくれるだろう。そして、何よりも、自身が強い思いを持って目指すV1の舞台に立つために全力を尽くしてくれるはずだ。

中田は、今年3月をもって大野石油を退団した。だが、次のチームは決まっていなかった。かといって、バレーボールをやめるつもりもなかった。バレーを続けてきて、抱き続けている「V1のコートに立ちたい。」その思いが、中田の背中を押し、次なる道へと進めたのだ。

とは言え、新型コロナウイルスの影響もあり、Vリーグの移籍市場はいつになく動きが鈍く、次のチームはなかなか決まらなかった。

そんな時に、中田とグリーンウイングスを繋いだのが、かつて、グリーンウイングスでキャプテンを務めるなど、18/19シーズンまで活躍した三好紗弥香さんだ。ふたりは、小さい頃から家族ぐるみで交流してきた中で、中学、高校は、Vリーガーを数多く輩出している大阪国際滝井でチームメイトとしてプレーしてきた大親友なのだ。

中田の状況を知った三好は、チームに連絡を取り、トライアウトのチャンスへとつなげた。そして、そのチャンスを掴んだ中田はグリーンウイングスのメンバーとしてV1を目指す新たな戦いが始まったのだ。

年下ばかりのチームだが、練習では早くも和気藹々とチームになじんでいる様子がうかがえる。そんなチームの印象について聞くと、「上を目指しているチームだから自然とみんながそっちを向いていると感じた。『優勝したい』、『勝ちたい』ではない、その上にある『V1』を目指している雰囲気を感じた。バレーを集中してできる環境で、皆がそこを向いている環境だと感じた。」と話す。中田にとっては願ってもない場所だ。

早い時期からVリーグに触れる機会は多かった。中学、高校時代は、学校との係わりもあったV1の岡山シーガルズの応援に駆け付ける事が多く、国内トップレベルのプレーを目の当たりにしていた。そうした経験は、徐々にVリーグへの思いを強くさせ、大学2年生の頃には「Vリーグでバレーがしたい。」という明確な目標に変わった。卒業後も、当時のプレミアリーグ(現在のV1)昇格を目指し活動を続け、元日本代表監督の葛和伸元氏が監督を務める仙台ベルフィーユに進んだのも、「V1で戦いたい。」と言う中田の明確で、シンプルな思いからでしかない。

グリーンウイングスもV1昇格のチャンスを入れ替え戦と言う分厚い壁に阻まれた昨シーズンだ。中田同様、V1への強い思いで挑む大事なシーズンになる。中田は、V1へ行くために、「私は、入れ替え戦の経験がなく、どういうものが手ごたえなのかわからないが、、、まずは1位を取りに行きたい。今シーズンは無敗ぐらいの気持ちじゃないと上には勝てない、そういう気持ちでV1を取りに行きたい。」と力を込めた。

そのために、中田はどんな活躍を見せてくれるのだろうか。

「気持ちの部分の強さ。自分らしさと言えば、感情をむき出しにするところだと思う。昔から、コートで黙っていられないんです。嬉しい気持ち、悔しい気持ちが自然と表に出てしまうんです。」と中田は話す。

若い選手が多い中で、厳しい局面、苦しい場面で、そうした気持ちを前面に出す中田のプレー、存在は大きく、頼もしいものになるだろう。もちろん、気持ちの部分だけではない。「守備の面でチームに貢献したい、大事な所で出してもらえるような選手になって活躍したい。」とプレー面でも、献身さ、粘り強さを前面にチームを支えることを誓ってくれた。

次のチームが決まらず、続けるか、辞めるか、葛藤する日々だったという。三好や同じタイミングで大野石油を退部し、引退した仲間が励まし、大きな支えとなった。そして、コロナウイルスで無理と思ったら終わり、前だけ向いて、目標を達成したいという思いで乗り越えてきた。

群馬銀行グリーンウイングスという、V1昇格を目指す同じ思いを持った仲間と挑む新シーズンのリーグ戦がはじまる。中田唯香らしく、V1への思いを出し切って、最高のシーズンにしてもらいたい。

【新監督インタビュー】託されたV1昇格へのミッションに挑む新指揮官~髙橋悠監督

「監督就任はびっくりしました。」

予想だにしていなかった監督交代に驚いた。周りも驚いたが、それ以上に髙橋悠監督自身が一番驚いたろう。

髙橋監督も、「まずは、1年、コーチとして、石原さん(前監督)とやって、と言う思いだった。急遽、こういうことになりビックリした。」と、その時の様子を振り返る。しかし、「監督だから、コーチだからでなく、今まで通り、バレーを通じて成長していこうという初心の思いだ。その中で、これまでの経験から自分の監督像を作っていきたい。」と、肩書にとらわれず、あくまでも、これまで通り、ひとりのバレーボールの指導者としてV1昇格と言うミッションに挑もうとしている。

9人制の名門チームによる6人制バレー、Vリーグの挑戦は石原昭久前監督により、V2優勝という結果を残し、髙橋悠新監督に引き継がれた。コーチとして、豊富な経験を持つ髙橋監督の指導力で、群馬銀行グリーンウイングスをV1という舞台に導く戦いがはじまったのだ。

当初、石原監督を支えるコーチとしてチームに合流する予定だったが、石原監督の退任に伴い監督に就任することになった。新型コロナウイルスの影響もあり、髙橋監督は、5月中旬からチームに合流し、指導にあたっている。

髙橋監督の指導歴は、大学時代にさかのぼる。国際武道大に在学中から女子日本代表チームのサポートなどを通じ、指導の道を経験し、大学では女子の学生コーチとしても時間を過ごした。卒業後は、トヨタ車体、NECでコーチを務める傍ら、女子日本代表の年代別のコーチとしても活躍し、2019年には、若手主体の女子日本代表で臨んだアジア大会でコーチとして日本の優勝に貢献した人物だ。

そんな、髙橋監督にグリーンウイングスがアプローチしたのは、昨シーズン、19/20シーズンの前だったという。その時点で、話しは進展しなかったが、シーズン後、NECとの契約が満了し、次のチームを探す中で、「最初に声を掛けてくれた石原さんの下でと思い来ました。V1、V2は関係ないし、V2で、まだまだ上を目指せるという向上心、成長できる場所で、私も、指導者として成長したいと思ってきました。」と、グリーンウイングスにやってきた理由を教えてくれた。

指導者に変わりはないが、監督として初めてのシーズンになる。髙橋監督は、指揮を執る、グリーンウイングスの選手、チームの印象について、「選手たちは明るい選手が多い。そういう所を大事にしながらバレーもしたい。ただ、それだけではシーズンを戦う上で、辛い時、苦しい時は乗り越えられないので、そういう部分も乗り越えながら、楽しみながらやっていきたい。」と話す。その上で、「このチームで昇格したい。選手たちも、スタッフも、入れ替え戦を経験して、何が足りなかったのか向き合っている。これまでとも違うなかでできているし、自分もワクワクしている。」と意欲十分だ。

実績ある指導者を迎え、才能も、伸びしろもある選手たちと挑む新シーズンは楽しみでもあるが、昨シーズンの入れ替え戦で痛感したV1との差をどの様に埋め、上回ろうとしているのだろうか。

髙橋監督は、「まだまだ上との力の差はあるが、差があるから勝てないわけではない。勝つポイントを教えて、上を目指す事もできる。」と話す。その裏付けとして、自身の経験を挙げる。「アンダーカテゴリーの日本代表での時間が凄い経験になっている。低身長のチームでも勝てるし、トップを獲れるというのを学んだ。力だけが全てじゃないし、日本には、日本のいいバレーがある。それを学んだので、このチームで発揮したいし、活かしていきたい。」と髙橋監督は考えている。

具体的には、「技術、戦術、細かいボールのコントロール、チームとしての一体感、そして、1対1ではなく、相手に対して、1対6で戦う、全員で戦う意識を持たせるため、コート内で意識を共有することが大事だ。そのために、限られた時間の中で、どれだけ質のいい練習ができるかが大事になる。」と話す。

髙橋監督が就任し、選手たちからも、これまで経験したバレーとは異なり、新たなバレーにチャレンジして、充実感や前向きな疲労感を得ている様子が聞こえてくる。V1昇格のために、髙橋監督のバレー観が着実にチームに広がっているようだ。

V1昇格に成長、改善すべきポイントはいくつかあるが、髙橋監督は、その一つにサーブを挙げた。

V2優勝を果たした昨シーズンだが、サーブ効果率(サーブが得点、勝ち負けにどれだけ貢献したかを示す数値)は8チーム中の最下位だった。1位との差も、それほど大きなものではなかったが、リーグで最もサーブが苦手なチームである一方、チーム力を大きく伸ばせるポイントであることは間違いない。

そんなサーブについて、髙橋監督は、「今年は1位を獲ります!それぐらい毎日取り組んでいる。」と力を込める。バレーボールの中で、唯一、誰にも邪魔されずに攻撃を仕掛けられるサーブの重要性について髙橋監督は、「この数値が上がれば、失セットゼロ、負けもゼロで行けるそんな感覚はある。選手たちの実力はある。だから、サーブで主導権を握れば、そこを武器に、自信もっていければ、入れ替え戦にも勢いがつくだろうし、いい形になる。」と考えている。

サーブは、現代バレーにおいて特に重要視されるものだ。かつては、サーブはどんな形でも相手のコートに入れるもの、ミスなど許されないものだったが、今は違う。最適なボールの打ち出し位置、角度、速さで変化を生み出し、データによって導き出された相手のウィークスポットに打ち込み、サービスエース、もしくは、相手にレシーブされたとしても、攻撃の形を限定させるようなサーブを打つことが求められる。仮にネットやアウトになっても、その意図が十分あれば、次回以降、相手にプレッシャーを与えるものになるからだ。だが、そうしたサーブを身に付けるのは簡単ではない。それでも、髙橋監督は、前任のNECでサーブ改革に取り組み、成果を上げてきた実績がある指導者だ。確かなサーブ力が身に付けば、いたずらに高さだけを追い求める必要もないし、髙橋監督が標榜する、全員で戦う意識を持ち、コート内での意識の共有で1点を取る、勝利を掴むバレーへとつながるだろう。

インタビューの終わりに髙橋監督は、「新しいチャレンジにとてもワクワクしている。『V1昇格』この一言。ここに向けて突っ走るだけだ。」と語気を強めた。

昨シーズンの入れ替え戦、どこか期待先行の自信があったが、2試合ともにV1との差を痛感する結果になってしまった。V1との真剣勝負を経験できたことは大きな収穫だったが、本当にこの壁を越えられるのか、途方に暮れるような気持になったのも偽らざる気持ちだった。だが、才能豊かで、更なる成長が期待できる選手たちに、髙橋監督の経験、指導が注がれ、花開くとき、V1という、まだ見ぬ景色を見ることができるのではないかと感じた。