18/19シーズン新加入選手 斉藤千佳選手インタビュー   

群馬銀行グリーンウイングスは、6月1日付でV・チャレンジリーグⅠのフォレストリーヴズ熊本でプレーしていた斉藤千佳の加入を発表した。斉藤は、最高到達点が295cmと高さを生かしたバックアタックやブロックを武器に、グリーンウイングスが優勝したV・チャレンジリーグⅡのひとつ上のカテゴリーであるV・チャレンジリーグⅠで活躍してきた選手だ。頼もしい仲間を加え、グリーンウイングスはV2リーグという新たな戦いに挑むことになる。そして、斉藤にとってもアスリートとして、ひとりの人間として新たな高みを目指すチャレンジが始まるのだ。

「バレーボールをするつもりはなかったんです。」

意外な言葉が返ってきた。彼女が所属していたフォレストリーヴズ熊本は、17/18シーズンをもって残念ながら廃部となった。そんな彼女のリスタートに、当初、「バレーボールを続ける」という選択肢はなかったというのだ。

V・チャレンジリーグⅠで、総得点242点はリーグ10位、1セット当たりのアタック決定本数3.26点もリーグ11位。ブロックでも高い指標を残した高い能力を誇る彼女を欲しいと思うチームはいくらでもあったろうし、彼女にもトップカテゴリーでバレーボールを続けるチャンスはあったと思う。

だが、バレーボールを止めようという思いになったのは、チームが廃部になった事とはまた違う所にあった。

斉藤は、「Vリーグで3年間プレーして、自分では、やり切った思いがあったし、これから先の人生についても考えるようになったんです。」と当時の思いを教えてくれた。

ただ、小学生の頃からバレーボールに一心不乱に向き合ってきた斉藤にとっては、次に何をしたいのかがすぐに答えは出なかった。「バレーボール以外で何かを見つけないと・・・。」そんな思いが大きくなるばかりで、時間だけが過ぎていった。

そんなタイミングで、群馬銀行グリーンウイングスの石原昭久監督から声がかかった。

斉藤と石原監督は無縁ではない。斉藤の高校時代の恩師が、石原監督と同じ大学の後輩であった事から石原監督やグリーンウイングスの話は聞いていた。また、2016年の熊本地震の際には、石原監督の呼びかけもあり、Vリーグ各チームから熊本へ寄せ書きが贈られた事があり、恩返しをしたい気持ちもあった。少しずつ気持ちが傾き始め、春になって群馬を訪れ、チーム練習に参加した。

シーズンが終わった2月下旬から、本格的なトレーニングから遠ざかっていて不安もあったが、グリーンウイングスへの練習参加を通じ、新たな環境でチャレンジしてみたい思いや、人として社会性、人間性を高められる場所だと感じた。グリーンウイングスと言う場所が、彼女にとって、さらに自分を大きくしてくれる場所だと確信した。そして、斉藤千佳は、Vリーガーとして再びコートに立つ事を決意した。

斉藤は、これまで熊本を離れたことはなかった。だが、彼女は「あんまり熊本を出たっていう感じがしていないんです。」と笑顔で話す。チームメイトは面白く、毎日笑って過ごせている。初めての銀行での仕事も、まだまだわからない事ばかりだが、職場の皆も優しく、気にかけてもらいながら、社会人として新たな経験をしている。グリーンウイングスでの生活は始まったばかりだが、彼女は、自分が求めた道をしっかりと歩み始めたようだ。

気が付けばサマーリーグがすぐそこまでやってきている。夏が始まれば、国体予選も始まり、皇后杯に、Vリーグと一気にシーズンが進んでいく。

V・チャレンジリーグⅡのチャンピオンチームである群馬銀行グリーンウイングスは、新たに始まるV2リーグで力強く、堂々たる戦いが求められる。そのためには斉藤千佳の活躍が不可欠なのは言うまでもない。

熊本では攻撃の核となるオポジットだったが、グリーンウイングスでは、ミドルブロッカーでの起用が濃厚だ。斉藤は、「熊本ではそれほどやってこなかったポジションなので不安もあるが、高さや速さを活かしたい。たとえ1本目が崩れても、ミドルで行けるようなプレーをしたい。前衛でのプレーはもちろん、後衛でのレシーブやバックアタックでも存在感を示したい。」と意気込みを語ってくれた。ポジションこそ違えど、グリーンウイングスでも、彼女の特徴を存分に見せてくれそうだ。

気持ちもさることながら、身体的な部分でも、新たな環境下で、充実のトレーニングを重ね、新しい自分を作り上げている最中だ。本人も「これまでとは違う自分をイチから作り上げている。体も変わってきているのが実感できている。」と話している。また、初めての場所で、新たな人との出会い、これまでになかった考え方、取り組みにも触れ、コート内外で、新しい事にどんどんチャレンジしたいと意欲に満ち溢れている状況だ。

斉藤は、グリーンウイングスでのチャレンジについて、「これからの人生のカギとなるような時間にしたい。」と語っている。バレーボール選手としてだけでなく、斉藤千佳という、ひとりの人間としても非常に重要な時間がグリーンウイングスではじまったのだ。ならば、そんな彼女のチャレンジを我々は力強く応援したい。そして、斉藤には、グリーンウイングスを応援するファンが、後々、彼女を語った時に「グリーンウイングスの輝かしい未来の扉を開くカギとなった選手であった。」と思わせてくれるような活躍を見せてもらいたい。