「近くて遠いV1を掴むはじまりに」群馬銀行グリーンウイングス チャレンジマッチReview

「みんなは、『V1が近いね、もうすぐだね。』と言ってくれるけど、入れ替え戦を戦って、V1は近いようで遠い、まだまだ差があるなと感じた。」

キャプテンの吉岡みなみが、振り返ったように、V1とV2の間にある差は思っていたよりも大きかった。奮闘する場面はあったが、1勝どころか、1セットも取れず、群馬銀行グリーンウイングスにとって初めてのチャレンジマッチは幕を閉じた。

結果は臨むものではなかったが、この場で真剣勝負をできたことは選手にも、チームにも、V1に行くために必要なものが何かを教えてくれる時間になったのは間違いない。

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試合後、選手、スタッフから聞こえてきたのはV1とV2の差だ。

石原昭久監督は、「今回の様に、緊張度の高い中で、平常時と同じように考えて、冷静にプレーできるようにならないといけない。V1のチームはそれができる。それに、つなぎの部分のクオリティーに差があった。」と振り返った。

副キャプテンの古市彩音は、「個人も、チームも相手との差を感じた。V1との差は大きいなと感じたスキや穴を突いてくる、見逃してくれない。」と話し、斉藤千佳も、「自分たちの実力じゃ勝てないというのを痛いほど知った。」と感じたことを口にした。

第1試合も、第2試合も、いずれもストレート負け。第2試合の第1セットこそ、長いデュースに持ち込んだが、セットを奪うことはできなかった。

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今季のグリーンウイングスは、強さ、高さを武器にV2を制したが、それだけで勝てるほどV1チームは簡単ではなかった。もちろん、対戦相手のヴィクトリーナ姫路の対策は十分に行った。得点源で、ブラジル代表のアタッカー、イブナには自由にやらせなかった。だが、内定選手含め、切れのある日本人アタッカーを封じる事は出来なかった。パワーゲームには強いが、足を使う相手を苦にするグリーンウイングスの弱さがでた。グリーンウイングスの核でもあるミドル陣も、攻守においてリーグ戦の時の様にゲームの主導権を奪う事は出来なかった。また、姫路と比較して、ミスも多くなり、流れをつかみきれないもどかしさもあった。

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その理由をキャプテンの吉岡みなみは、明確に振り返る。

吉岡は、「試合中、気持ちで乗り切ることも大事だが、気持ちは一時的なもので、3セットは取れない。気持ちだけではダメなんだということも知れた。それに、高さが通用するのは、V2だけ。V1ではわずかなものでしかない。ネット際の技術、1本目、2本目の精度も上げないと戦えない。高さもいいが、それ以外の部分も上げないと戦えない。」と振り返った。

メンタル的な強さも必要だし、プレーひとつひとつの正確さも重要だ。今季のグリーンウイングスとV1との比較で言えば、相手を崩すサーブの効果率ももっと上げなければいけない。状況に応じて二段トスやアンダートスではなく、オーバーハンドパスでより精度の高いボールをアタッカーに送りたい。攻撃でも、バックアタックを増やし、シンクロ攻撃をすることで、相手のブロック枚数を減らしたり、的を絞らせないことが必要だ。そんなことをV1チームは当たり前のようにやっている。グリーンウイングスがやるべきことはまだまだ多い。他方、このチームが強くなる要素がまだまだあるという裏返しにもなる。

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V1昇格は逃した。だが、V1に行くために何が必要かというのを肌身で感じる事ができた時間でもあった。

チャレンジマッチの前、選手に話を聞いた時、未知なる戦い、相手に対し、どこか雲をつかむような、明確でない、ぼんやりした感覚なのかなとも感じた。練習試合やサマーリーグでV1との対戦経験はあるが、今回の様な真剣勝負の場ではない。イメージや映像で対戦相手を感じる事は出来ても、同じコートで、ネットを挟んで感じるものとは大きく異なる。

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石原監督は、「V1とV2の差がどんなものか、試合を通じて、本当の意味で知ることができた。来季に財産を残すことができたんじゃないのか。どこまでできて、何ができないかというのは、選手たちが一番痛い思いをして知ることができた。一皮むけてくれたらと思う。」と、今後の選手たちに大きな期待を寄せた。

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9人制から考えれば長い歴史のあるチームだが、6人制ではわずか5年の歴史しかない。それに、V参入後は、右肩上がりで成長し、駆け抜けてきたチームだ。V1昇格を逃したのは悔しいが、ぶち当たったこの壁を乗り越えるために、この悔しさが大きな原動力となり、更なる成長につながることだろう。

そして、再び、V2チャンピオンとして、この場所に戻ってこよう。この日流した悔し涙を嬉し涙にするために。

「V1の扉を開けるために」群馬銀行グリーンウイングス チャレンジマッチPreview

リーグ開幕前から優勝候補に挙がっていた群馬銀行グリーンウイングスは、ラスト4試合を残し、V2優勝を決めた。2位以下に差をつけた優勝に今季のV2で抜けた存在であることを示したように感じた。

強さがあり、高さがある。銀行での仕事をしながらとはいえ、練習場となる体育館をはじめ、施設、練習の環境はV1に引けを取らない。「そりゃ強いよね、優勝して当たり前だよね。」ちょっぴり意地悪な声も聞こえてくる。だが、今季の群馬銀行グリーンウイングスの本当の強さは、そこではない。スタメン、控え、選手、スタッフ関係なく、それぞれの役割を全うする、誰かが苦しい時に、しっかりと支える事ができる。ひとりでなく、チームとして、勝利という目標に向かえるチームに成長した事だ。

入れ替え戦となるチャレンジマッチまでの時間は限られている。新しい事はいらない。今季やってきたことをしっかり出し切る。これまで作り上げてきたもの、そして、今季、彼女たちが確立したバレーを出し切れば、V1への扉は開かれるはずだ。

新チームが始動した時、各選手から聞かれたのは、「攻撃力と高さを武器に戦いたい。」というものだった。V2の他のチームと比較しても、高さがあり、アタッカー陣のタイプも様々で攻撃面には期待があった。守りでもブロックの高さはもちろん、レシーバーの位置取りも含めたトータルディフェンスに力を入れ、選手の特徴をチームの強さに変える事に力を入れていた。

そうしたバレーはリーグ戦の中でも徐々に形となり、結果につながっていった。特に、ミドルブロッカーの鈴木日葵、安福若菜のふたりは、中心的な役割を果たし輝きを放った。だが、そんなふたりもリーグ優勝の喜びに浸ることなく、入れ替え戦へ気持ちを向けている。

スパイク賞も獲得した鈴木は、「正直、優勝の実感はない。試合もまだ残っている。レギュラーシーズンの戦いには満足していない。自分の納得いくプレーは多くなかった。」と話し、安福も、「3レグの戦いは厳しかった。相手のミスで得点できた部分も多かった。チャレンジマッチでは、相手はミスしないと思う。」と優勝の余韻に浸っている様子はない。

入れ替え戦で対戦するV1のヴィクトリーナ姫路とは、昨シーズン、V2で、プレーオフも含め、グリーンウイングスが、3戦2勝と勝ち越した相手だ。だが、それは過去の結果に過ぎない。鈴木は、「姫路は1年、V1でやっていて揉まれている。向こうも負けられないだろうし、気合を入れてくるだろう。自分たちは挑戦者なので全員で頑張りたい。」と気の緩みはない。

安福も、「相手の外国人選手は大きいし、パワーもある。」と警戒するが、「ここまでこれたのは、チームメイト、スタッフはじめ、いろいろな人の支えがあるから。感謝の気持ちを忘れず、チャンスを無駄にせず、全力で挑みたい。」と決戦に向かう。

レギュラーシーズンを圧倒したように見えるグリーンウイングスだが、そうではない。

「レギュラーシーズンはしんどかった。少しでも気を抜くと負ける。」と、数字が示すほど簡単ではなかったことをキャプテンの吉岡みなみは口にする。

吉岡がポイントに上げたのは、1レグで敗れた大野石油戦だ。前日のJAぎふ戦にストレート勝ちし、大野石油戦でも第1セットを大差で奪う好スタート。だが、グリーンウイングスは、そこから連続で3セットを失い、1-3と逆転負けを喫した。

「気の緩みが出てしまった。もちろん、そんなつもりはないけれど出てしまった。」と振り返った。選手たちからすれば、意識して手抜きをしたというよりも、どこか安堵感の様なものから自身も、チームも、集中しきれなかったという事なのだろう。そんな、大野石油戦の経験から、吉岡は、声掛けをより大事にし、チームに緩みが生まれないよう、キャプテンとして気を配っている。

そして、そうした行動は、キャプテンだけに限らない。控えの選手たちも、同様に、積極的な声掛けで、コートでプレーする選手たちを支えている。今季は、セット間やタイムアウト間に、控えの選手たちが自発的にチームメイトに声を掛けに行く姿が格段に増えた。そして、外から見て感じる事を伝え、オンコートで戦う選手たちをサポートする。これこそが、今季の群馬銀行グリーンウイングスの強さなのだ。

吉岡も、「そうしたところに成長を感じる。リザーブの選手が気付いて、伝える声が増えた。自分が入った時にどうするのか、常に考えて、準備してくれている。」と話す。

今シーズンのグリーンウイングスは、劣勢の場面でも、途中から入る選手が流れを変え、勝利につなげるシーンが多く見られた。もちろん、選手は、スタートから出たい、より多くの時間コートでプレーしたい。その思いも持ちつつも、チームのために、自分が何をすべきか忘れず、行動できるのも今シーズンのグリーンウイングスの選手たちの成長と言える。

副キャプテンを務める斉藤千佳も、昨季と違い、今季は、途中出場が多かった。だが、ひとたびコートに立てば、チームの流れを引き寄せる事に大きく貢献した。

斉藤は、「途中から出る事が多く、気持ちの面で難しかった。だけど、シーズン後半は、起用法に関係なく、無心でプレーすることで自分らしさが出せた。」と振り返る。シーズン中、チームの状況や同ポジションの選手の様子、自分の状態などを冷静に見た時に、「気持ちを切り替えられるようになってからは、出た時の役割を考えるようになった。」と話す。

斉藤もまた、チームのために何ができるか、何をすべきか、考え、実践できる頼もしいひとりなのだ。もちろん、入れ替え戦でも、その思いは変わらない。

「出た時には、チームのみんなをいい方向に持っていけるようにしたい。自分より、チームの結果のためにがんばりたい。」と、斉藤は決意を口にした。

V1ヴィクトリーナ姫路との入れ替え戦は、2試合合計の結果で決まる。

吉岡は、「通用する部分もあると思う。大切なのは弱気にならない事だ。私たちの今のレベルの最高を出さないと同じラインに立てないと思う。試合までの残りの時間を無駄にせず、意識高く、勝つつもりの行動をしないといけない。」とV1昇格のために必要な条件を口にする。

斉藤も、「ここにきて、入れ替え戦に臨めるのも縁だと思う。差はあるけど、ぶつかって出し切りたい。」と覚悟を決める。

そう、逃げたら負けなのだ。できる準備、自分たちのバレーをやり切る事がV1への道を開き、何よりも大切な事だ。

吉岡は、「入れ替え戦は、自分たちで勝ち取ったもの。無駄にせず、やるしかない。バレーができる事に感謝して、恩返しできるよう、挑戦者らしく、戦いたい。」と決意を述べた。

群馬銀行グリーンウイングスが、6人制に移行し、Vリーグ参戦を決めた5年前、こんなにも早く、V1の扉の前に立てるとは思わなかった。チームの歴史においても、大いなる挑戦である。当然、期待やプレッシャーなど、選手たちにのしかかるものは多いだろう。だが、キャプテンが話すように、今回の入れ替え戦は自分たちが勝ち取ったものだ。誰に気にすることなく、自分たちのバレーをやり切って欲しいし、これまでに培ったものを出し尽くして欲しい。我々は、そんな彼女たちの姿を支持するし、全力で応援するだけなのだから。

2/22、23日の二日間、群馬銀行グリーンウイングスの持てるすべてをぶつけて、皆で、V1の扉を開けに行こう。