11/14、15 VCL2開幕節(群馬・大泉) 観戦記

不安に思うことなど何もなかった。9人制であろうと、6人制であろうと、彼女たちは、変わらず、1点のために、勝利のために、個々が力を出し切り、一致団結して向かっていった。ただ、いつもと違って見えたことがあるとするならば、より一層、バレーボールを楽しんでいたということだろうか。Vリーグチームとしてのスタートを切った群馬銀行グリーンウイングスの新たな歴史は開幕2連勝という最高の形で幕を開けた。

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グリーンウイングスは、開幕戦で、同じく新加入のプレーステージ・インターナショナル・アランマーレに3-1(25-21、25-18、19-25、25-18)で勝利、そして、翌日は、格上とみられたトヨタ自動車ヴァルキューレに3-2(27-25、25-19、24-26、17-25、15-13)とフルセットの死闘を制し、開幕2連勝を飾った。

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2連勝の要因は何か。まずは、選手たちの確かなレベルアップだ。チームは、6人制に向け、様々な取り組みを、段階を踏みながら、焦らず、着実にやってきた。夏のサマーリーグの頃には、攻撃はレフトのみで幅がなく、ブロックやレシーブもくらいつくので精いっぱいだった。だが、この2試合では、レフトの成長はもちろん、ライトやセンターも有効な攻撃として機能し、攻撃の選択肢が増えたところを示した。また、ブロックやレシーブにおいても、対応力や意図した形でのディフェンスができるようになり、選手、チームとしての戦いに成長を感じることができた。スタートメンバー以外の選手も、重要な局面で起用に、それぞれの特徴を出しながら応え、チームの勝利に貢献した。こうした選手たちの成長について、石原昭久監督も「選手たちは、なりたい姿のための努力をしてきたし、やってきた分の力はついている。」と褒め称えた。

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そして、石原監督の経験からなる確かなマネジメント力、さらに、そんな石原監督への選手たちの信頼の強さも順調なチーム作りを可能にした。 石原監督は、常々、選手やチームができること、できないことを見つめている。そして、できる部分でバレーを組み立て、相手に対応する。また、想定からずれた場合でも即座に対応策を練り、選手たちの能力を最大限発揮し、劣勢を挽回する場面が何度もあった。未知なる6人制に向け、不安を抱きながら準備を続けてきた選手たちも、段階を踏む中で、石原監督の指導、指示により、結果、成果が出た事から、当然の如く、監督への信頼感は高まり、「監督を信じてバレーをすればいいんだ。」と、不安が取り除かれた中でゲームを進めることができ、持てるものを存分に発揮できた。石原監督の指導力、カリスマ性は、このチームの力をより大きなものにするだろう。ますます楽しみだ。

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こうした中、選手たちは、一体感を持って、のびのびとプレーする事ができた。佐藤智美は「みんなが繋いでくれた。チームプレーで勝てた。」と振り返り、柿沼杏奈は「苦しいところで先輩たちが支えてくれた。」とチーム一体での勝利を強調した。須﨑杏が叫び、松尾由紀子が吠え、佐藤の笑顔が弾ける、1本を決めた選手に対し、仲間が思いをひとつにし、ムードは高まり、苦しい場面も乗り越え、そして、勝利を掴み取った。まさに「誰が」ではなく、「皆が」つかんだ2連勝だった。キャプテンの須﨑は「全員が役割を果たさないと勝てない。」と話ており、今後も、個ではなく、チームで戦えるかどうかはポイントになってくるだろう。

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こうして、6人制への完全移行を表明してから1年も無い中で、チームはしっかりと戦う力を身につけ、望むべき、最高の結果を手にしたのだ。 6人制チームとして、歴史的な1歩を踏んだグリーンウイングス。そんな中、初勝利を挙げたプレステージ・インターナショナル・アランマーレ戦の後、須﨑はここまでの道のりについて、「9人制から6人制に変わる時の心境は今でも忘れていない。その時に別れた仲間もいるし、いままで支えてくれた人もたくさんいる。そうした人たちの事は忘れないようにしようと思う。後輩にも支えてくれる人がいるんだよという事をしっかり伝えていきたい。」と話した。

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大切なものを捨て去る必要などない。「仲間を大切にする思い」「支えてくれる人への感謝」9人制の名門チーム・群馬銀行バレーボール部の根幹でもあった、その精神を受け継ぎ、6人制のVリーグチーム・群馬銀行グリーンウイングスとしてしっかりと歩みだした2日間だった。この2日間を忘れずに、今シーズンを、そして、これからを進んでいこう。