開幕直前!選手インタビュー #2 松尾由紀子選手

松尾由紀子は群馬銀行バレーボール部の歴史と伝統を付け継ぐ象徴的な選手だと思う。絶えない笑顔、コートいっぱいにはじける元気さ、そして、結果が出なかった時の悔しさと、そこから這い上がろうとするパワー。9人制から6人制へ。フィールドが変化しようとも、彼女の存在は大きなものであり、これからもその精神を後輩たちには受け継いでもらいたい。それだけ大きな存在である選手なのだ。

群銀バレー部の6人制チャレンジは2012年に遡る。国体での9人制バレー廃止に伴い、周囲からの要請を受け、国体限定で6人制を組織する事になった。その中で、本国体出場をかけ、関東ブロック大会に出場した群銀バレー部は、同じく9人制で、国体のみ6人制で挑むライバルチームと対戦した。9人制では負け知らず。負けられない、負けるわけにはいかない。そんな思いがあったがフルセットの末、ライバルチームに敗れた。当時、キャプテンを務めていた松尾は、人目もはばからず、悔しさを抑えきれず大粒の涙を流していた。不慣れな6人制であろうと、条件が不利であろうと、勝負であれば、結果にこだわる群銀バレー部の魂と彼女のバレーに対する熱い思い、リーダーとしての責任感をその涙から感じた瞬間だった。

松尾のバレー人生は、小学5年生の夏にはじまる。親に誘われ出かけたバレーボール教室。ちょっとだけのつもりが、いつしか楽しい時間になり、上手くなりたいという向上心を抱くようになっていた。そうした中、進路選択でも、よりハイレベルな環境を求め、進んでいった。

埼玉の強豪高校を卒業するに当たり、6人制への思いもあったが、様々な選択肢の中で9人制の群銀バレー部を選択した。当時の監督から「闘志もあり、チームリーダーとしての資質がある。」と評されるなど、周囲の期待も大きかった。厳しく、豊富な練習量で知られる群銀バレー部での日々は、決して楽なものではなかったが、歯を食いしばってがんばった。

伝統あるチームも様々な変化を迎える中、セッターの座をつかみ、キャプテンにもなった。入部した時に考えた目安の「5年」はすぎ、チームにとって欠かせない存在となる中で、時間が過ぎていった。

そして、チームは6人制へ大転換を決断し、松尾も葛藤の中で決断を迫られた。「引退か、挑戦か」

心身ともに疲弊もあったろう、緊張の糸がきれそうになる中、「もうやめよう。」そんな思いに気持ちも傾きかけたが、彼女はグリーンウイングスのメンバーとして名を連ねた。理由は「まだバレーボールがやりたい。自分がどこまでできるのかチャレンジしたい。」小さい頃と同じように、バレーに対する思いが彼女を6人制のチャレンジへと突き動かした。

Vプレミアで優勝経験もある、名将・石原昭久を監督に迎え、新たなスタートを切った群馬銀行グリーンウイングスの中で、新たなバレーボールの魅力、考え方に触れ、松尾の笑顔もより一層、輝きを増しているように感じる。

「いつまでやれるかわからないけれど、まずはチャレンジⅡの中で一番のセッターになりたい。誰が打っても『センさん(松尾さん)のトスはナイストスです!』って思われるようなトスを上げたいです。」

松尾由紀子は、更なる高みを目指して、新シーズンのスタートを切る。だから、まだまだ辞めてもらっては困る。ここからさらにグレードアップするセッターなのだから。そんな姿を多くのファンにみせてもらわねば。

女の子らしい弱さもある。けれども、それをはるかに越えるバレーボールに対する思いと、負けたくない、上手くなりたいという強さを持っている頼もしく、魅力的な選手だ。初めての挑戦で、チームにも苦しさや迷いが生まれる事もあるだろうが、きっと、松尾由紀子が培ってきたバレーに対する強さが支えてくれるだろう。そして、セッターとして、チームを、ファンを勝利に導くトスを上げ続けてもらいたい。

151112 matuo