第4節・長野戦レビュー「J3優勝、J2復帰へ希望を残し、選手たちが思いを示した今季初勝利」

開幕3連敗スタートとなったザスパ群馬は、30日、アウェイで長野と対戦し、2-1で逆転勝利を収め、待望の今季初勝利を掴んだ。

「選手、スタッフ、みんなが自分たちを信じて練習に取り組んでくれたことがこういう勝利に繋がった。すごく大きな壁を越えて成長した。この1勝は自分たちにとって価値がある。」

ザスパの沖田優監督は、この日の勝利の意味をこう語った。

J3優勝、J2復帰を掲げながら開幕から結果が出ないチームに対し、「スタイルの変更」、「監督交代」といった厳しい声も飛び始めていた。その中でも、沖田ザスパ1年半のスタイルを貫き勝利した。

「自分たちの1年半やってきた事を信じて、選手がもっともっと自信を持ってやってくれさえすれば勝利する力はあると思っていた。自信を喪失することなく、いかに自信をもって攻撃も、守備もするかにフォーカスして1週間準備をしてきた。それをしっかりと強さを見せて勝利してくれたのが頼もしかった。」

沖田監督もそう話す様に、実際、やろうとしている事はこれまでの3試合と大きな変化はなったが、ピッチ上の選手たちの振舞いは大きく違った。走り、戦い、声を掛け合い、最後まで勝利を求め続ける姿を見せ、試合終了の笛とともに、ピッチに倒れ込んだ。見ている側にも、頼もしさが十二分に伝わるサッカーだった。

もちろん、待望の初勝利だが、まだ1勝、遅すぎる初勝利で、厳しい状況は何ひとつ変わっていない。

それでも、この日のゲームは、我々にはまだ希望が残されている事、そして、選手たちがその思いを示してくれたことを伝えてくれたゲームだったと感じた。

前節・滋賀戦からスタメン3人を入れ替えたザスパだったが、攻守に可変するスタイルはいつもと同じだった。

この日も立ち上がりから主導権を握り、序盤から幾度も決定機を掴んだが、ゴールを奪えないもどかしい時間が過ぎていった。

すると26分、ザスパの左サイドを突かれ、ゴール前に折り返したボールに、ニアで合わせられあっさりと失点してしまった。

「いつものザスパ」の姿に、「またか、、、」と誰しもが思ったが、この日のザスパは違った。互いに声を掛け合い、慌てることなく、連続失点をしないことを意識しながら、逆転できると信じ、戦い続けた。

すると55分に下川太陽が同点ゴール、75分に百田真登が逆転ゴールを挙げた。

最終盤こそ、疲労感から押し込まれる時間もあったが、最後まで我慢し続け、待望の今季初勝利を手にした。

この日のザスパには、3つの点で違いを感じた。

ひとつは、各選手の積極的な姿勢だ。

キャプテンマークを巻いた神垣陸は、「ひとりひとりが勝つ気持ち、魂のこもったプレーを全面に出してくれた。ゴールに向かう姿勢もこの4試合で一番多かったと思う。」と振り返った。

その言葉通り、出足の良さ、球際での強さを出せ、局面でザスパにとって優位さを生み出すことに成功した。そこから攻撃に転じた際、長いランニングで攻撃に厚みを増し、ボールを持てば、前に運ぶ意識、個人での突破など意欲的な姿を見せ、相手に脅威を与え続けた。

もうひとつは、連続失点を許さなかった事だ。

前節の滋賀戦もそうだったが、先制点を許すだけでなく、そこから浮足立ち、短い時間に連続失点し、試合を壊してしまうのがザスパの負けパターンだったが、この日は、先制点こそ許したが、そこで堪えた。

選手たちも連続失点をしない事への意識は強くしていた。

百田は、「連続失点をしない、1失点だったら、自分たちの実力ならひっくりかえせる自信があった。まずは崩れないという所を徹底しようと話をしたし、みんなも声掛けができていた。」と話し、下川も、「連続での失点を無くすというのは考えていた。負けた試合でも2点は取れていたので点を取り返す力はあると信じていた。だから、連続失点を無くすというのをみんなで話して、それができたのが逆転に繋がったと思う。」と話した。

その連続失点を許さなかった事にもつながる3つ目が、選手間のコミュニケーションの強化だ。

この日、ザスパでリーグ戦初スタメンとなった野嶽惇也は語る。

「『やりたいサッカーはあるが、ピッチの中で主体的にやらないと難しいよ。』という事を若い選手も多い中で伝えた。今日もピッチに立っている選手たちで声を掛け合ってやれた。サッカーをやる上でそこが大事。その部分ができれば、勝ちに繋がるんだという意味でもいい勝利だったんじゃないか。」

沖田ザスパ結成にあたり、集まった選手の多くは、技術があり、若く、これからの成長も含め期待値の高い選手だった。一方で、そうした選手たちがリーグ戦の経験が少なくもあった。沖田監督の目指すサッカーに対し、表現する力はあったが、ゲームの中で状況判断、対応するためのコミュニケーションの部分では、物足りなさは否めなかった。それは、試合だけでなく、練習を見ていてもそうだ。残念ながら声が出ているのは特定の数名の選手だけだ。自分たちのサッカーがハマればいいが、上手くいかなかったときに立て直せない、連続失点を止められないのはそうした所もあると思う。

この日は、失点後も、選手が集まり、声を掛け合い、気持ちをひとつにするシーンがあり、印象的だった。ゲームの中でも、互いに声を掛け合うシーンが多く、活発なコミュニケーションで、ピッチ内で連携、一体感が強まったのは確かだった。

野嶽は、「僕はコンディション的にもまだまだだが、いろいろ経験してきた分、それを伝えながら、若い選手が多くて今からのチームなので、作っていくという意味では、自分のやるべき事は多いと思う。しっかり、言葉でも、行動でも示したい。」と話す。

ザスパには、野嶽をはじめ、小柳達司、青木翔大、風間宏希といった経験のある選手がいる。彼らが、日々、落とし込んでくれるものの重要さがこの日の勝利で証明された事だろう。経験ある選手も、若手も関係なく、皆が勝利のためにコミュニケーションを深め、一体となれるチームになって欲しいと思う。

今季初勝利、そして、内容も含め、安堵した一夜になった。だが、課題も少なくなかった。

ゲーム序盤、そして、全体を通しても決定機は多かった。先にゴールを奪っていれば、さらに、逆転後、3点目、4点目が取れていれば、もっと楽に勝てたゲームだったろう。

また、ボールを失ってから、カウンター対応も、相変わらず不安定さが残り、失点シーンも、いつもの様にサイドからあっさりとやられてしまった。ゴール前だけでなく、チーム全体として守備対応には、引き続き、向上が求められる。

そして、高い目標を掲げるチームにとって、状況は厳しいままだ。

初勝利となったが、首位・岐阜とは勝ち点7差と大きな差があり、順位も19位で、最下位こそ脱出したが、立ち位置的には何も変わっていないに等しい。

沖田監督も、今後に向け、気を引き締める。

「今日、できたことは必ず続ける事、それに加えてプレーの質、もっと走る、強いメンタリティーを持つこと、試合やりながら強くして、やればやるほど強くなる、負けないチームにならないと目標達成できない、それを選手に求めたい。」

そして、2018年に鹿児島でJ2昇格を経験している野嶽は、改めて、J2復帰への道のりの厳しさを口にする。

「鹿児島で昇格したが、昇格ってホントに簡単なものではない。今日の勝利も、みんなが何とか今の状況をひっくり返そうとパワーをすごく出した上で勝てている。『チームの一体感を出していこう!』ではなく、自然と、みんなが目標に向かって取り組む中で、一枚岩になった時に目標に近づける。先の事は考えず、今できる事、また明日からやれる事の積み重ねで1年後の結果が決まってくる。僕らもスタートが切れた、この勝利を無駄にしないために、連勝して、1試合でも早く上に追いついていけるよう、またみんなで頑張りたい」

リーグ開幕3連敗で、J3優勝、J2復帰への希望を失いかけたのは私だけではないと思う。この日の勝利は、まだ希望がある事、そして、選手たちがその思いがある事を示してくれたと感じた。

ひとつひとつやるしかない。一夜の出来事にせず、継続し、成長し続けられるかどうか。そして、野嶽が話す様に一枚岩になれるか。いや、なるのだ。そのためにも、次節・福島戦が重要だ。


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