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真田広之『ラスト サムライ』秘話
 日本が世界に誇る俳優の一人、真田広之。映画『ラスト サムライ』(2003年)で世界に“真のサムライ像”を見せ、数々のハリウッド超大作の主要キャストを務めてきた彼が、主演だけでなく自らプロデュースも手がけた『SHOGUN 将軍』が、動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の「スター」で独占配信されている。海外に拠点を移してからの約20年、「すべてに縁を感じてます」と振り返った。

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■『ラスト サムライ』前夜

 真田のキャリアの転換点として重要な作品である『ラスト サムライ』は、オーディションだったという。

 「以前の自分だったらたぶんオーディションすら受けなかったと思うんです。やはり日本でずっと時代劇をつくってきた一人としては、ハリウッドにつくれるはずがない、と思っていましたから。ですが、イギリスでシェイクスピア(※)を経験して、異文化交流の中から新しいものをつくっていくことの難しさ、大切さ、面白さを学んで、国際的なプロジェクトにこれから積極的にかかわっていきたいと思い始めた矢先に、『ラスト サムライ』のオーディションの話が来たんです」。

※真田は1999年から2000年にかけて、イギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの公演『リア王』(演出:蜷川幸雄)に唯一の日本人キャストとして出演。英国演劇界の名優ナイジェル・ホーソーンらと共演した。

 日本を題材、あるいは舞台にしたハリウッド映画は少なくない。しかし、ステレオタイプな日本や日本人の描写に「なんか違う…」とモヤモヤさせられることが多かった。

 「国内で批判しているだけではハリウッドには届かない。『ラスト サムライ』の話を聞いた時、相手の懐に飛び込んで、誤解された日本を描く時代を自分の世代で終わらせよう、と思ってしまったんですね、なぜか。無謀にも(笑)。最初で最後のハリウッド映画になってもいいから、日本人から見ておかしいと感じたことは全部言うぞ、という懐刀を忍ばせて参加してたんです」。

 撮影開始時点ですでに英語が話せた真田は、積極的に意見を述べ、主演のトム・クルーズに殺陣や侍の所作、日本語などを親身になって教え込んだエピソードも伝わっている。

 「撮影を終えてからも監督(エドワード・ズウィック)に頼まれ、そのまま残って半年間、仕上げにも付き合いました。これを認めてくれるんだったら、将来、どんどん変えていくチャンスはあるな、と思いました。洋の東西に壁があるとしたら、それをぶち壊して、橋をかけて、次の世代に渡す、そんなテーマが自分の中に宿ってしまったんです。それでロスに引っ越して、とにかく一作、二作では変えることはできないから、少しずつでも日本の描かれ方を正していく。それを続けるしかない、と思ってやってきました」。

 『ラスト サムライ』に出演して以降、『ラッシュアワー3』(07年)、『ウルヴァリン』(13年)、『47 RONIN』(13年)、『モータルコンバット』(21年)、『MINAMATA』(21年)、『ブレット・トレイン』(22年)、『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23年)などの映画、『LOST ファイナルシーズン』『リベンジ』などのドラマで活躍。約20年が過ぎた。

■『SHOGUN 将軍』集大成のその先へ

 『SHOGUN 将軍』は、映画『大脱走』や『いつも心に太陽を』の脚本などでも知られるジェームズ・クラベルが1975年に発表した小説『将軍』が原作。日本の戦国時代を舞台に、徳川家康ら歴史上の人物からインスパイアされた登場人物たちによる覇権争いに、海を渡って日本にやってきた英国人、アジア圏の貿易を独占していたポルトガルの宣教師や商人らも絡んで、関ヶ原の戦いに突入していくさまを描く。1980年に米国でドラマ化され、三船敏郎などが出演。絶大な人気を博し、欧州や日本では再編集版が劇場公開されて大きな反響を集めた。

 約40年を経ての再映像化となる本作で、真田は主演に加え、日本文化に関する一切を担うプロデューサーを兼務。「企画段階だった2016年頃、まず俳優として主人公・吉井虎永役のオファーをいただきました。引き受けるにあたって、日本人の役は日本人がやり、日本から時代劇専門のスタッフを呼ぶことを求め、それを言い続けていたら、ジャスティン・マークス(エグゼクティブプロデューサー/ショーランナー)やレイチェル・コンドウ(エグゼクティブプロデューサー)から、プロデューサーとして力を貸してくれないかという話になったんです」。

 「誤解された日本を描く時代を自分の世代で終わらせる」と奮闘してきた真田だが、俳優の立場で意見するには限界も感じていた。「『ラスト サムライ』以降、自分ではどうすることもできないことにもどかしさや悔しさを感じつつ、相手のプライドを傷つけずに日本人が納得するものを提示する術を学んできました。今回、プロデューサーという役職を得て、これまでの全ての経験をつぎ込めた」と語る。

 脚本の執筆、衣裳デザイン、美術の構想の段階から徹底した時代考証が行われ、実際の撮影でも動きのひとつひとつ、せりふの一言一句まで妥協を許さないこだわりで“本物の日本”を追求。そんな真田のもとには、長年にわたって日本映画界を支え続けてきた職人たちや時代劇経験豊富なスタッフが集結した。

 「これまではおかしなところはないか、と気にしながらお芝居をしなければいけないことも多かったのですが、今回はカメラの前に立つ前に全部の準備を終えていたので、あとは俳優として演じるだけ。役に安心して集中することができ、まるでご褒美のような自由を感じました。演じることをとにかく楽しめました」。

 『SHOGUN 将軍』は、真田のこれまでのキャリアの集大成であり、未来への新たな一歩でもある。

 「役者としては、この年になって初めてできる役というのもあると思うので、その時はまた1年生から始めなければならない。必死に食らいついて、新たな領域を開拓していきたいです。プロデュースの喜びを知ってしまったので、機会があればまたやってみたいと思っています。『SHOGUN 将軍』がいい布石になったらうれしいです」。

 常に未来を、より良い“あるべき姿”を見据えて行動してきた真田の姿は、『SHOGUN 将軍』で演じた主人公・虎永の目の前の“勝ち”や、対立する勢力の“排除”ではなく、争いや対立のない“理想の未来”を追求していく姿に、約260年間にわたって天下泰平の世をもたらした虎永のモチーフとなった徳川家康にも重なる。

 『SHOGUN 将軍』は、「Disney+(ディズニープラス)」の「スター」で独占配信中。毎週火曜に新エピソードが追加され、最終話は4月23日配信(全10話)。

ヘアメイク:高村義彦(SOLO.FULLAHEAD.INC)



(提供:オリコン)
ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)主演・プロデューサーの真田広之(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc.
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