【オリコンニュース】
ヒット曲原案コンテンツのねらい
 あいみょん作詞作曲によるDISH//のヒットソング「猫」をテレビ東京が連続ドラマ化し、話題を呼んでいる。8月には、中島みゆきの「糸」がリリースから28年経って映画化。ほかにも、曲原案の過去作品として『涙そうそう』(2006)、『ハナミズキ』(2010)、『キセキ』(2017)などが挙げられるが、今回の“連ドラ”化には驚きの声が寄せられている。13日に第1話が放送されると、早速「泣ける」「やばいドラマが始まった」などの反響を呼んだ『猫』のプロデューサー・漆間宏一氏に、今作発案のきっかけと曲原案コンテンツの可能性を聞いた。

【画像】DISH//ヒット曲がどんな映像に?ドラマ『猫』EDで北村匠海も出演

■“猫”をきっかけに出会う男女の切ないラブストーリー 挿入歌は北村匠海が作曲

 同曲は今年3月、アーティストによる一発撮りのパフォーマンスを配信するYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』で公開。その後、この収録のためにDISH//メンバーがアレンジしたアコースティックバージョン「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」が4月29日に配信。これも反響を呼び、現在ではオリジナルバージョンの「猫」と合算で配信総再生回数1億5千万回を突破する大ヒット曲となった。

「『猫』をドラマ化しようと思ったきっかけは、皆さんに知られている曲である、ということがまずは大きいと思ってます。もともと『猫』自体は3年前の曲なのに、今年配信された動画がすごく盛り上がってるということが入り口でもありました。それから曲が視聴者にとって登場人物やストーリーが違っている、というのもおもしろいと思いました、また力強く歌い上げる感じがこのご時世に合ってるなと思って、映像化したいと思ったんです」(漆間氏/以下同)

 “当たり前の大事さ”、“ちょっと前までは横にいたのに”――。ベースにあるのは、男女の何気ない日常。これまでの当たり前が当たり前ではなくなった今だからこそ届けたい内容だと思ったという。また歌詞では、主人公がいつもの帰り道に“君”がいないことに違和感と寂しさを覚える描写があるため、「いつもの帰り道」がドラマの大事な舞台となる。

 そして紡がれる物語は、余命宣告を受け自らの死と向き合う女性・金子みねこ(小西桜子)と、やりたいことや夢もなくその日暮らしの生活を送るフリーター・天音光司(前田旺志郎)が、一匹の“猫”をきっかけに出会ったことから始まる、切なくも温かいラブストーリー。楽曲「猫」の世界観を引き継ぎながらのオリジナルストーリーとなっている。

 主題歌のみならず、挿入歌にも力を入れている。「2話でいうと、光司がみねこにギターで曲を弾くシーンがあるんですね。ラララって歌っている部分なのですが、これはDISH//の北村匠海くんに作曲してもらいました。主題歌『猫』とはまた違って、ポジティブでギターを学びたての光司が作った曲として心に響く内容になってます。

■古くからあった曲原案コンテンツ “原作”ではなく“原案”であることの自由度の高さ

 映画界では、これまでもヒット曲を実写化した作品は数多く作られてきた。古くは1940年『支那の夜』から、美空ひばりの『悲しき口笛』(1949)、坂本九の『上を向いて歩こう』(1961)、このあたりは古き良き“銀幕スター隆盛期”であり、歌い手=主演自体が非常にシンボリックであり、それだけでも客が呼べる時代であった。

 しかしその後、テレビのカラー放送が徐々に人気を博していき、興行収入を含めたエンターテインメントの王者=映画の図式が崩れるのとほぼ同時に、ヒット曲映画化作品も数を少なくしていく。だが、00年代に入ってもヒット曲映画化が消滅することはなかった。2002年の『なごり雪』を皮切りに、『涙そうそう』(2003)、『未来予想図』(2007)、『ハナミズキ』(2010)、『キセキ』(2017)、『雪の華』(2019)、『愛唄』(2019)と数々の作品が生まれた。

 決してすべてがすべて受け入れられたわけではなく、興行収入が空振りで終わった作品もあったほか、「曲とタイトルを借りただけで退屈」「純粋に面白くない」など批判の声にさらされ続けているのも事実だ。しかし、登場人物のイメージやキャラクターがしっかりと原作ファンに植え付けられているアニメや漫画の実写化などと比べれば、批判リスクが小さいことは間違いないだろう。

 こういった背景のもと、漆間氏は「曲を聞いた感想や思い描くシーンが視聴者によって違うので、映像化にあたり曲のほうがある種自由というか、いろんな人の思いを汲んで物語が作れるいます」と持論を述べた。

 小説や漫画のようなある程度物語がある原作ものと比べての難しさについても、「どっちが良いという話ではなく、それぞれの魅力を生かすことができることが大事」と感じているという。

■これまで曲原案コンテンツが多くなかった理由とは 今後増えていく可能性は?

 とはいえ、楽曲『猫』の捉え方は聞く人によって様々かと思われるが、ドラマの設定やストーリーに迷わなかったかと漆間氏に尋ねると、「制作チームの間でも意見が大きく割れなかったんです。金井監督に脚本も書いてもらったのですが最初からすごく良くて、曲に対して多くのコメントが寄せられている“泣ける”という要素を、ひたすらアイデア出ししてブラッシュアップしていく感じでした」とのこと。

「僕は映像を通じて、視聴者の人生や生活に少しでも刺激があればよいなと思っております。この思いが叶うなら、原作・原案が小説でもアニメでも、それが楽曲でもなんでもトライしてみたい。選択肢が多いほうが良いものを届けられるのではないかと思っているんです」

 ただし、「楽曲は全部が全部物語になるわけではない」。物語が存在する小説や漫画と比べると、余白が多く世界観が広いということもあり、「実写の物語に落とし込むことができる楽曲って限られている。選択がなかったのは、そういったこともあるのではないと思います」と分析している。

「一視聴者として、僕自身も曲の映像化は見てみたいと思っています。『猫』は余命宣告を受けた女の子がヒロインですが、ただ悲しいだけの話ではなく、1分1秒を一生懸命生きる姿を日常の幸せと重ねた作品。家族や近い方との距離を大事に思ってもらえる作品にしたいと思います」

 小説や漫画、アニメのヒット作でいえば、これまでさんざん実写化されており、もはやされ尽くした側面もあるだろう。世界観やイメージの解釈の自由度があり、原曲ファンの様々な思いも組み込みやすいと考えられる曲原案コンテンツは、今後増えていく可能性を大きく秘めていると考えられる。同作が連ドラ史にその名をどう刻むのか、見守っていきたい。

(文=衣輪晋一)

(提供:オリコン)
DISH//のヒット曲を連ドラ化したドラマ『猫』(C)「猫」製作委員会
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