【オリコンニュース】
ヒロト&真島、独自の音楽論語る
 ザ・クロマニヨンズが13作目のオリジナル・アルバム『PUNCH』を発売。シングル「クレーンゲーム」を含む本作は、“これぞ、ザ・クロマニヨンズ!”と快哉を叫びたくなるロックンロールはもちろん、豊かなルーツミュージックを自然に反映したバンドサウンド、詩情に溢れた歌など、このバンドの奥深さが実感できる作品に仕上がっている。甲本ヒロトと真島昌利に楽曲制作の取り組み方について話しを聞いた。

【写真】ヒロト&マーシー、スレンダーでロックな姿

◆(音楽制作で)もともと目指す形がないし、どうなってもいい感じ

――新しいアルバム『PUNCH』がリリースされます。アルバムが完成したときは、どう感じました?
【甲本ヒロト】 「いいのができた」って。いつも同じだから、コピペでもいいくらいだけど(笑)。

――今回もヒロトさん、マーシーさんの曲が6曲ずつ。今回のレコーディングために準備した曲はどれくらいあるんですか?
【甲本】 6曲です。スタジオに入る前日に、「これで遊んでみたい」と思う曲(デモ音源)をCDRに入れて持っていって。
【真島昌利】 なんとなく「これをバンドでやってみたい」という曲を6曲か7曲くらい選んで、皆で聴いてもらって。

――それを合わせるとアルバムになる、と。そのやり方で毎年CDを作れるのはすごいですよね。
【甲本】 もともと目指す形がないし、どうなってもいい感じなので(笑)。曲を作るのも、バンドで演奏するのも、なんでもそう。そこで見当違いなことになったらおもしろくないし、楽しくないんだろうけど、現場が楽しいってことは、それでいいんだと思う。

――ヒロトさん、マーシーさん、コビーさん(小林勝/B)、カツジさん(桐田勝治/Dr)で演奏すれば、ザ・クロマニヨンズの音になるだろうし。
【甲本】 そうだね。もしかしたら、僕たちよりもコビーとカツジのほうがサウンドのキモを握っているのかもしれない。「マーシーとヒロト、こんな曲を持ってきた。だったらこういうドラムを叩いてやろう、こんなベースを弾いてやろう」ということが非常に重要なんだと思う。
【真島】 2人ともすごく起用だし、上手いんですよ。
【甲本】 しかも伸びしろもある。できなかったことも、すぐにできるようになるから。何よりも雰囲気を作るのが上手なんです。上手く言葉にできないけど、いいムードにしてくれるので。

◆(音楽制作が)楽しくないことにすごく危機感を覚える

――ザ・クロマニヨンズはリズムセクションが支えているんですね。
【甲本】 そうです。僕らに限らず、多くのバンドがそうじゃないですかね。

―― 一発で「マーシーの音だ」とわかるギターもバンドの核だと思いますが、音作りやプレイを含めて、どんなことを意識していますか?
【真島】 特にないんですよ。
【甲本】 たぶん、マーシーは本当に何も考えてないんじゃないかな。ギターの音に対して一喜一憂しないし、変な音だとしも、本人が気づいてないこともあるから。それはギターの音を構築するタイプじゃないから、「この音に飽きたから、こういうエフェクターを使ってみよう」ということもない。30年くらいずっとそう(笑)。さっきの話と同じで、目指しているものがないからだと思う。「この曲にはこういうギターの音が必要」みたいなことがあれば言うけれど、そんなこともないので。
【真島】 そうだね。
【甲本】 それをクリエイティブと言えるかわからないけれど、楽しいからいいんじゃないかなって思う。

――ライブに近い一発録音を続けているのも、楽しいから?
【甲本】 そうです。昔は違う部屋に入って録音したこともあるんですよ。そうすれば、いわゆる“いい音”になるんだけれど、自分たちがぜんぜん楽しくなかった。でも、それでは意味がない。
【真島】 (レコーディング時に)演奏するのも2回か3回だしね。
【甲本】 多くて3回かな。「何となく楽しい」がゴールだから、それでいいんです。楽しくなければ、顔が真剣になって「もう1回やろう」ってことになるけれど。僕は、楽しくないことにすごく危機感を覚える。

――“ラク”していたら、楽しくないですからね。
【甲本】 その通り。
【真島】 楽しむっていうのは、いい加減にやることじゃないから。

◆ロックンロールに出合って、単純に感動した

――歌詞に関してですが、1曲目の「会ってすぐ全部」には<会ってすぐ全部 わかってたんだな>というフレーズがありますが、ロックンロールに出合ったときも同じ感覚だったのでしょうか?
【甲本】 「わかった」じゃないんですよ。単純に感動したんです。まだ、子供で無知だったのも良かったんでしょうね。世の中にはおもしろいことがいっぱいあるのに、子供はなにも知らないし、大して見てないじゃないですか。そういうときにロックンロールと出合って、打ち震えて、感動して。「わかった」ことがあるとしたら、他のことでしょうね。「生きてるんだな」とか「あ、お父さんがいる。お母さんもいる」とか。本当にその次元のことなんですよ。「ごはんは美味しい」とか、それまではごはんの時間が嫌いだったけれど、「ごはんは美味しいし、楽しいんだな」ということがわかって、好き嫌いも減りました(笑)。

――マーシーさんはどうですか? ロックンロールと出会った瞬間というのは。
【真島】 “ワーッ!”ってなった。それはずっと今も続いています。

――7月31日には、DVD『ザ・クロマニヨンズ ツアー レインボーサンダー 2018-2019』がリリースされました。ライブ映像作品は4年ぶりですね。
【甲本】 ライブを映像に残すことに大賛成というわけではないんですよ。たとえば好きなバンドのライブを観に行って、めちゃくちゃ良かったとするでしょ? あとでDVDを観て、「もっと良かったんだけどな」と思うことが多いから。ただ、ライブを観たことがないバンドは、映像があるとありがたいなと。ジミ・ヘンドリックスのライブは、映像でしか観られないんだから。
【真島】 自分たちのDVDはマスタリングのときに観るだけで、あとで見返したりしない。もちろん好きなライブビデオはいっぱいあるけど。ステージの様子やメンバーの動き、顔もよく見えるし、どんな機材を使っているのかもわかって、そういうのは楽しいよね。

――最後に、近年はストリーミングサービスなど、音楽の聴かれ方も変化しています。2人はストリーミングサービスを利用していますか?
【甲本】 使ってないよ。レコードしか聴かないから。インターネットは使いますよ。使っていると、信じられる情報の見極め方もわかってくるし、単純に面白い。
【真島】 僕もインターネットは使いますよ。ディスクユニオンのセールス情報をチェックしたり(笑)。でも、インターネットで音楽は聴かないかな。

――インターネットは、あくまでも情報を得るものであって、音楽を聴くものではないと。
【甲本】 音楽は情報ではないから。歌詞やメロディーについての情報収集ならインターネットでもいいのかもしれない。

(文/森朋之)

(提供:オリコン)
ザ・クロマニヨンズ、バンドの奥深さが実感できるアルバムが完成
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