新チーム始動前。オフを実家で過ごしていた小西宏登のもとにクラブから一本の電話が入った。
「背番号を7番にしないか?」
相手は佐藤正美強化部長だ。
まだ寝起きだった小西は、突然の申し出に驚きながらぐるぐると思考を巡らす。
「38番は思い入れのある番号だ。」
「でも、正直、そこまで番号にはこだわらずやってきた。」
「もしも、他に付けたい人がいるなら、、、」
いまひとつ考えが定まらない小西に、佐藤強化部長は言う。
「7番の話は、まだコニ(小西)にしかしていない。」
7番は言わずもがな、J2大分に移籍した西村恭史がつけていた番号だ。ザスパがJ3に降格したこの1年半、チームの大黒柱として活躍した西村の番号を勧めるのは、大きな期待を寄せている事を意味する。
佐藤強化部長は、「小西は、西村とも仲が良かったのもあるが、今シーズン、彼には期待しているから。」と理由を口にする。
一度電話を切ったが、小西も、その意味の大きさを理解し、すぐに佐藤強化部長に折り返しの電話を入れ、「7番をつけさせてください!」とお願いした。
小西は、「良くしてもらったヤスくん(西村)が付けていた番号だし、7番というのはチームの中でも良い番号。それに、自分が成長するためにも、覚悟を持ってやるためにもプラスな事。勧めてもらえたのはありがたいし、チームの中心としてやらなければいけない。」と、新シーズンに背負う「7番」の重みを教えてくれた。
立命館大学から加入し、2025シーズン、百年構想リーグを経て、今シーズンは、3シーズン目を迎える。ルーキーイヤーの開幕戦からJデビューを果たし、4節・鹿児島戦では初ゴールも挙げた。右サイドを中心に突破力があり、個で局面を打開しながらゴール前に侵入もできる。クロスの精度も日増しに向上し、ザスパには欠かせない存在となった。だが、小西への期待は、もっともっと大きなものだ。アシストも、今の数字ではまだまだ足りない。そして、なによりもっとゴールを見せて欲しい。「若手」ではなく、「チームの中心」として、7番をつけていた前任者・西村の様な存在にならなければならない。
変化は、番号だけではない。新シーズンに向け、小西を取り巻く環境は一変した。大卒ルーキーで加入した、野瀬翔也、秋元琉星がともにチームを離れた事だ。野瀬はJ2札幌に完全移籍、秋元はJFL青森に期限付き移籍した。当たり前の様にいたふたりが、今シーズンはそばにいない。
「率直に悲しいと感じました。ポジションは違うけど、ふたりはライバルだったから。それに、ふたりとも急な移籍だったので、、、当たり前だけど、プロは大学とは違って、1年で急にどこかに行ってしまうんだなって実感しました。だから、悲しさもあるんですが、それだけでなく、自分ももっと頑張らなきゃいけないという思いにもなりました。」
サポーター心理で言えば、愛すべきザスパの選手には、いつまでもこのクラブでプレーしてもらいたい。このクラブとともに上位カテゴリーに上がって行って欲しいという思いがある。だが、サッカー選手が高いパフォーマンスで出来る期間は限られる。クラブの成長よりも、さらに自らの成長を加速させ、クラブを押し上げながらも、自らの価値をより高め、より高い評価を得られるようにならなければならない。今シーズンの小西は、まさにそのタイミングなのだと思う。
チームは開幕2連敗と最悪のスタートを切ってしまった。次節・滋賀戦は、早くも必勝が求められる大一番だ。そんな重要な一戦に、7番をつけていた前任者なら必ずやゴールと勝利に導く活躍を見せてくれていたはずだ。その番号を受け継いだ小西にも同様、いや、それ以上の活躍を見せてもらわなければならない。
同期の野瀬、秋元も、それぞれに新たなスタートを切った。クラブは違えど、これからも、良きライバルとして活躍し、刺激し合って、それぞれに成長をして欲しい。
小西宏登が、プロサッカー選手として大きく飛躍するために、様々な刺激を受けながら、ザスパの「7番」を更に価値のあるものにしてもらおう。
