赤岩集落・重要伝統的建造物群保存地区

前略、中之条より

母さん、元気ですか。亮平です。今回も中之条町に行ってきました。今回は、日本の原風景を懐かしむことが出来る赤岩集落という場所です。

かつて養蚕農家がさかんだったこの地区には蔵をベースにした天井の高い独特の建築様式の家が沢山残っています。駐車場に近い「ふれあいの家」から、小さな時間旅行が始まります。重伝建活性化委員会の会長、篠原さんがガイドをつとめて下さいました。

初めて来たのに、なぜか「懐かしい!」と声を上げてしまったこの風景。火の見やぐらを見たときは、幼稚園の頃を思い出してしまいました。ほら、みんなで待ち合わせしましたよね、母さん。

ここは、個人の自宅が歴史的価値を持つ「重要伝統的建造物群保存地区」なので、ひと声かければ家の写真も撮影してOKなんだそうです。町のみんなで話して決めた、と篠原さんは話して下さいましたが、皆さんの懐の深さにはただただ、頭が下がるばかりですね。さらに、地区の皆さんで定期的に絹製品のワークショップを開いているそうです。

忙しい毎日に追われて、昨日の晩御飯も思い出せないような時こそ、この赤岩地区に来て日本人の原風景に抱かれ、安心することが必要なのだと今回つくづく思いました。いろんなことをリセットして、また週明けから頑張ります!

それでは、また書きます。篠原さんの自信作、桑の葉茶をお土産に送りますね。

亮平より

 

冬住みの里資料館

前略、中之条より

母さん、元気ですか。亮平です。今週も中之条町に行ってきました。今回訪れたのは、草津と山ひとつ隔てた小雨地区です。ここにある「冬住みの里資料館」を訪ねたのですが・・・

なんと、ここは市川さんご夫婦のご自宅なのです!なんという大きさの家なんだろうとびっくりしていたら、資料館は敷地内の蔵だと教えてくれました。しかも、ご主人の市川さんご自身がガイドを勤めて下さるのだそうです。

蔵に入ってまず驚くのは、その涼しさ!とても暑い日でしたが、少し肌寒く感じるほどです。そして何より、収蔵してある数々の貴重な品々に、僕たちは驚きの声を上げるしかありませんでした。市川さんは朗々とした語り口で、この「冬住み」というフシギなシステムを教えてくださいます。

かつて六合村が出来る前、交通の要であった暮坂・小雨も草津の一部でした。当時草津で温泉を営む人々が、冬の間「町そのもの」を空っぽにして、この小雨地区の自宅で過ごしたシステムを「冬住み」と言うのだそうです。別荘ではなく、自宅が二つあったなんて羨ましいですね!江戸時代から多くの観光客が訪れた草津でしたが、市川さんのご先祖はここで「山本館」という旅館を営んだ名士です。

20150522前略、中之条より 035

当時から英語の看板を擁するあたり、山本館には当時から外国人客にも人気だったことがうかがい知れます。こうして多くの文豪や政府要人が訪れた宿には貴重な文献が残りました。しかし時は流れ、貴重な品々は市川家の蔵で静かに眠ることに。それを改めて発見したのが市川さんご夫婦です。

蔵を片付けたらどんどん出てくる文献や当時の生活用具。これは貴重なのではないかと専門家に問い合わせたところ、とんでもない貴重品ばかりだったことが判明し、市川さんはご自宅での資料館開館を決意します。横山大観に小林一茶、西郷隆盛や若山牧水、さらには水戸黄門直属の部下の直筆などが出てきたわけですから、想像しただけでびっくりですね。

名門・市川家ならではの家紋入り漆器には珍しい緑色の椀も。数百年の時を経てもなお、美しい輝きを見せてくれます。三々九度で使う杯は、実際にお二人がお使いになったそうです。

資料館にある素晴らしい収蔵品にも驚きましたが、僕がなにより心打たれたのは市川さんご夫婦の温かなお人柄です。とても大きな母屋には、びっくりする太さの大黒柱がありました。その横で、お二人のお話を聞きながらお茶を頂きました。

ご自宅に多くの人々を招き入れ、蔵を案内し、さらにその後は居間で美味しいお茶を振舞う。僕にはとてもそこまで出来ません。手作りのフキの煮物も、カブの漬物も、何度も何度も入れてくれたお茶も、本当に本当に美味しかった。母さん、中之条に来ても、僕は何も出来ていません。ただただ、ここで出会う人々の優しさに甘え続けてばかりです。でも、それがすごく温かくて、嬉しいのだけれど。

20150522前略、中之条より 028

それでは、また書きます。今度の休みに、おじいちゃん・おばあちゃんに顔を見せに行きますね。

亮平より

 

野反湖

前略、中之条より

母さん、また中之条に行ってきました。今月は、山深い六合地区へ向かうとの事で、長いドライブになります。今日は僕がドライバーを担当しました。中之条のつむじからおよそ1時間、目の前に現れたのは…

野反湖です!山にはまだ残雪が。それにしても空の青いこと!そして空気の澄んでいること!一気に観光気分になってしまいました。ここには有名なキャンプ場もあります。

ここでお話を伺ったのは野反湖の達人、中村一雄さん。見ごろを迎えたシラネアオイを求めて、僕たちは少しだけ山に入ることになりました。

中村さんにお話を聞いている間、ウグイスの歌声が軽快に響きます。足元には紫色がきれいなシラネアオイが群生していて、その可憐な花を間近に見ることが出来ました。

駐車場では太陽が照りつけていたのに、一歩山に入るとひんやりとした空気が漂います。中村さんいわく、6月でも羽織るものは忘れずに、とのこと。僕はスーツを着てきて正解でしたが、Tシャツ一枚の竹村さんは軽く震えていました。

野反湖周辺には、色々な動植物が暮らしています。物言わぬ彼らの命を大切にするために、山のルールはしっかり守らなければなりません。たとえば、一本くらいいいだろう、という気持ちでみんなが山野草を手折ってしまったら、きっと野反湖の生態系は壊れてしまうでしょう。美しいこの風景を守るため、中村さんは日夜奔走しています。

写真集を出すような中村さんには到底叶いませんが、僕なりに撮影したシラネアオイの画像を送ります。母さんが好きな、紫色の花です。

それでは、また。

亮平より