1/24 VCL2 東京・日野大会 観戦記

負けてもおかしくないゲームだった。流れは相手にあった。そして、初めてのリーグ戦を戦う中で、自分たちが想像していた以上に体も心も疲弊した状態だった。だが、負ければ、この先、ズルズルと失速することも考えられた中で、グリーンウイングスは「全員バレー」で勝利をつかんだ。もがき苦しむ中で、それぞれが役割を果たし、仲間を支えながら、ようやく自分たちのバレーがどういったものなのか。それが見えてきた大きな1勝だったのではないだろうか。

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リーグ戦は2連敗、対戦相手のブレス浜松にも2連敗中と嫌な流れの中、3レグの初戦を迎えた。

グリーンウイングスは、スタメンを大きく入れ替えた。リーグ前半戦を中心的に戦ってきた選手には、疲労が蓄積し、各チームの対策が進む中、内定選手やバックアップの選手を起用し、変化をつける狙いもあった。

そうした中、ゲーム序盤は、内定選手で、金沢商業の寺坂茜と日立二高の小林愛里の高校生コンビが躍動し、得点を重ねていった。サウスポーの寺坂はサーブと強打で、小林は緩急を使い分けたスパイクで相手を翻弄した。特に、寺坂は、先日の春高バレーでもチームを石川代表に導いたアタッカーで、将来性も高い。本人も「スパイクとサーブに手ごたえを感じた。この後も、活躍したい。」と意欲十分だ。

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そんなふたりの活躍もあり第1セットを奪ったグリーンウイングスは、勢いそのままに、第2セットもリードする展開だったが、ローテーションミスをきっかけに、主導権を奪われてしまう。すると、バタバタと連続失点し、相手の流れを止めることができず、このセットを落とした。第3セットも相手の勢いに飲まれ、一気に相手ペースに。そして、点差こそ離れていない場面でも、なかなか悪い流れを変えられない。なぜか?コート内の雰囲気がまるで違うのだ。得点、失点に関わらず声を掛け合い、士気を高めるブレス浜松に対し、プレー自体が悪いわけではないが、静かなコート内で、淡々とプレーをしているだけに映るグリーンウイングス。結局、相手の流れのまま、中盤以降、引き離され、第3セットも落とした。

そんなチームの雰囲気を変えたのが、小宮眸だ。ここまで出場の機会に恵まれず、前の試合でようやく公式戦デビューを果たした小宮は、4セット目、入りの1点目をきっちり決めると、その後も、攻守で流れを作り、積極的な声だしでチームに良い雰囲気を作り出した。小宮は「とにかく流れを変えたかった。自分のできることを120パーセント出そうと思った。」と話したとおり、自分の力を出し切り、失った流れをグリーンウイングスに呼び戻した。

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そして、小宮とともにチームを勇気付けたのが、須﨑杏、そして、松尾由紀子というグリーンウイングスの絶対的な存在だ。浮き足立つチームの中で、プレーで引っ張るとともに、的確な指示、声掛けで、コート内の選手たちの気持ちを落ち着かせ、プレーに集中させる状況を作り出したのだ。レフトの柿沼杏奈は「ミスからバタバタし、動揺してしまった。だけど、キョンさん(須﨑)、センさん(松尾)の声掛けで安心感が生まれた。」とふたりの存在の大きさを語ってくれた。

そんな柿沼も、試合に出続け、心身ともに疲弊する中、チームのため、勝利のために自らに鞭打ちコートに立っていた。高校生内定選手のふたりの活躍にスポットライトが当たったこの日、誰よりもアタックを打ち、サーブを受けたのは柿沼だ。「ふたりは力がすごくある。だから、のびのびプレーできるようにしないと。苦しむのは自分でいいんです。」とキッパリ言い切った。

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苦しい展開ではあったが、この日は、コート内の選手も、バックアップの選手も、チームスタッフも、それぞれが役割を果たし、誰かのために力を尽くし、支えあいながら勝利を掴んだ。そんな姿がそこかしこに見られた印象的なゲームだった。

こうして、グリーンウイングスは、苦手のブレス浜松から初勝利をあげ、リーグ後半戦のはじまりである3レグの初戦を白星で飾った。須﨑は「全員バレーができた。勝てたことは自分たちの中で大きいこと。」と安堵の表情で勝利を喜んだ。また、「勝つためには、相手ではなく、自分たちを見つめられるかだということを今日思った。」と話し、今後のゲームに向けてやるべきことはなにかというヒントを得た。

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リーグはラスト7試合。ここから先、優勝へ向け、競り合いが続くグリーンウイングスには、勝利を積み重ねていくしか道はない。より一層、厳しい戦いが続くが、彼女たちなら大丈夫だろう。この日、見せた「全員バレー」が、優勝に必要な答えだとわかったのだから。そして、我々も、グリーンウイングスとひとつになって彼女たちのチャレンジをしっかりと支え、応援しようではないか。

VCL2 東京・日野大会

23日 ○ブレス浜松戦 3-2(25-19、21-25、17-25、25-17、15-10)

VCL2 1月24日現在

1位 トヨタ自動車 6勝3敗 19ポイント

2位 ブレス浜松 6勝4敗 17ポイント

3位 群馬銀行 5勝4敗 16ポイント

4位 GSS 5勝5敗 16ポイント

5位 プレステージインターナショナル 2勝8敗 4ポイント