【選手インタビュー】不安と向き合い、日々を大切に。そして、V1へ~古市彩音選手

昨シーズン、V2優勝を果たしたものの、V1昇格にあと一歩及ばなかった群馬銀行グリーンウイングス。悲願のV1昇格へ向け、力強く新シーズンのスタートを切るはずだったが、グリーンウイングスもまた新型コロナウイルスの余波を受け、4月下旬から活動を大きく制限されることになった。5月下旬になり、感染状況が落ち着きはじめ、政府による緊急事態宣言も解除されると、ようやくチームも全体練習を再開できるようになった。

今回は、そんなタイミングで、昨シーズン、チームの副キャプテンを務めた古市彩音選手に、チームの様子、そして、今シーズンへの思いなどを電話インタビューで伺った。

およそ1か月間の活動制限から動き出したことについて、古市は「やっとスタートできた気分です。」と答えてくれた。その口調には、どこか安どした様にも感じた。

新型コロナウイルスは、バレーボール界にも大きな影響を与えている。黒鷲旗、サマーリーグといった主要大会は軒並み中止となり、各チーム、大幅な練習制限や活動自粛を強いられた。グリーンウイングスも、新体制でスタートした矢先の4月下旬から活動を制限することになったという。幸い、銀行が所有する体育館がある事から、活動自粛にはならなかったが、チームを半分に分け、午前・午後に分かれて練習し、内容も自主トレという形で、体を動かす程度の内容だったという。感染防止対策では、使用したボールや道具の消毒、練習や準備、食事などの際には密集、密接しないよう分散や時差での行動を心掛け、練習中は、体育館の換気にも気を配ったという。幸い、チーム内で調子を崩す様な選手、スタッフはおらず、無事に全体練習が再開となった。

全体練習が再開したチームの様子について古市は、「まだ体を慣らすところから始めているが、石原監督の指導のもと、ボール練習も始まった。」と話し、少しずつ状況が戻りつつあることを教えてくれた。ただ「チームの方針は少し話し合った程度。まだチームミーティングもできていない状態。」とも話し、新シーズンに向け、グリーンウイングスが、どんなバレーを目指すかも含め、本当にスタートしたばかりであることをうかがわせた。

新型コロナウイルスの状況は、落ち着きつつあるものの、まだまだ完全に不安が払しょくされたわけではない。古市は、「練習は始まったが、試合がどうなるかわからないのが気になる。サマーリーグも中止になり、国体もわからない。もしかしたら、最初の試合がリーグ戦になるかもしれないし、リーグ戦もどうなるか分からない。」と不安も口にした。たしかに、活動を再開するスポーツも出てきた一方、屋内競技であり、コート内で近い距離でのプレーを求められるバレーボールがどのような対策をもって競技が行えるかは、まだまだ議論が必要だろう。シーズンへの不安は、古市だけでなく、多くの選手が抱いている事だろう。

それでも、古市は、「試合がある前提で準備をしていくしかない。昨シーズンできなかったV1昇格を目指したい。」としっかりと前を向いている。

チームには、伊藤寿奈、藤原愛という楽しみなルーキー二人が加入したが、昨シーズンの主力を含め退団者もおり、新シーズンは、昨シーズンをベースにというよりも、また新たなチーム作りが求められることになりそうだ。

昨シーズン、入れ替え戦という場で初めてV1チームとの真剣勝負ができたが、1セットも奪う事ができず敗戦するという悔しい結果になった。古市は、「姫路は強かったが、V1ではリーグ最下位だった。最低でも、あそこまでのレベルにならなければならない。」と話し、「V1のクオリティーを常に心に持って取り組まないといけない。」と話す。他方、「入れ替え戦では、通用した部分もあったと思う。それに、今年は高さだけでなく、スピードも付けなければいけない。」と全体のレベルアップはもちろんだが、その上でのグリーンウイングスの特徴をどう出すか、ブラッシュアップに必要な事についてもしっかりと考えている。

新シーズンの目標について古市は、「昨シーズン、あそこまで行って果たせなかったV1昇格が目標。もちろんV2で優勝するのも簡単でない。V1に行くレベルにひとりひとりが上げていかなければいけない。そこに向かって全員で頑張りたい。」と話した。

社会情勢も含め、いつも以上に難しく、厳しいシーズンがスタートしたが、その中で、グリーンウイングスがどんな姿を見せてくれるのか、そして、明るい話題を届けてくれるのか楽しみだ。

そして、インタビューの最後に古市は、「今回の事(新型コロナウイルスによる影響)で、バレーができる事も当たり前じゃないというのが、みんなもわかったと思う。1日1日を大切にしながら頑張りたい。」とも話してくれた。

選手たちが今回の事態にどの様な事を感じ、考えたのか、そして、どんな思いでバレーボールや日常に向き合うのか。選手としてだけでなく、ひとりの人間として成長していく姿にも注目して、ぜひ今シーズンも群馬銀行グリーンウイングスに大きな声援を届けてもらいたい。