ザスパチャンネルコラム#83 ~FMGUNMAザスパ中継連動企画 笹川アナ 第32節仙台戦レビュー~

~FMGUNMAザスパ中継連動企画 笹川アナ 第32節仙台戦レビュー~


苦しい状況、厳しい状況を乗り越えるには、他力本願ではなく、自力で乗り越えなければ、確かなものは得られないと感じていましたが、強力攻撃陣を擁する3位仙台を相手に、1‐0で勝利。結果だけでなく、内容面でも、気持ちの面でも、すべてにおいて相手を上回るものを出し、自らの手でつかんだ勝利、そして、勝ち点3でした。内容はあれども、結果がついてこなかったここまでのザスパにおいて、「勝利」という、ひとつの正解を導き出したこの日のサッカーは、今季、残り10試合を戦っていく上で、手ごたえ、自信をつかめたゲームであり、どのくらいのものを出せば、好結果につなげられるのかというのを実感できた試合だったと感じました。


 


ゲーム開始からチャンスを作り続けたこの試合。ザスパの大槻毅監督は、「仙台さんの仕組みを選手たちがよく理解してプレーしてくれたことだと思う。」と振り返りました。戦い方のベースに大きな変更はなかったものの、攻撃では、いつものサイドからの攻撃だけでなく、中央で北川柊斗が楔の役割を果たしたチャンス創出、長いボールでDFの裏やサイドのスペースを使った攻撃、前の選手が連携し、ボール保持者に対してプレッシャーをかけ、奪った中からのカウンター攻撃など、バリエーションの豊かさが光りました。





決定機の多さに対して、1得点というのは課題を残しましたが、それでも前後半に渡り、相手をはるかに上回るチャンスをバリエーション豊かに作れたことは、とても素晴らしく、まさに相手の仕組みを理解し、弱点を突くことができた結果でした。


守備においても、高い位置からの追い込みだけでなく、攻守の切り替えの反応の良さや、不意にゴール前に入ったボールに対して、粘り強く対応した事、そして、危険なシーズンでも、シュートコースにしっかりと体を入れ、まさに体を張って、相手の攻撃を防ぐなど、集中力の高さ、そして、ゲームに勝つんだという気迫を十分に感じられるものだったと思います。


そして、期待を持って迎えた新加入選手たちも、力を発揮してくれました。






移籍2試合目で、J初ゴール、そして、この日の決勝ゴールを決めた、長倉幹樹選手は、「プレーしていた関東リーグでゴールを決められていた流れがあったから」と振り返ったように、関東1部の得点王は、チャンスシーンで、常に、相手ゴール前に顔を出すなど、チャンスをかぎ分ける能力の高さを見せてくれました。また、ゴール前だけでなく、球際の粘り強さや、守備の際にも、自陣深い所や逆サイドまで懸命に追いかける姿など、献身さを見せてくれました。


また、左SHで出場した高木友也選手も、ゴールライン際の難しいボールを、一番遠い所にいた長倉選手にしっかりと合わせた先制点のシーンはもちろん、それ以外にも、左サイドから精度の高いクロスを何本も配給するなど、能力の高さを見せてくれました。また、同サイドの選手たちとの連携も、小気味よく決まり、加入して、共にプレーした時間は短いながらも、アジャストしてきたのはさすがだと感じました。



そして、途中出場で、ザスパ移籍初ゲームとなった川本梨誉選手は、「まだ体調は完ぺきではない」としながらも、最初のプレーで、複数のDFの合間をするすると抜ける切れ味の良い突破を見せれば、セカンドプレーでは、惜しくもクロスバーに阻まれたものの、コースを狙ったシュートを放つなど、今後のゴール量産へ期待を持たせる質の高いプレーを短い時間の中で何度も見せてくれました。


さらに、この日は、全選手が、切り替えの早さ、競り合いでの強さを見せてくれ、ひとつひとつのプレーがしまったものになっていました。特に、キャプテンの細貝萌選手は、守備だけでなく、攻撃面でも積極的にプレーに関わり続けるなど、広いプレーエリアで、まさに力を出し切る、全力プレーを見せ、応援するサポーターに勝利を届けるとともに、高いキャプテンシーを見せてくれました。


サッカーは、自分たちもあれば、常に、相手もある話なので、ここから先、すべてがザスパの思い通りにいくとは限りませんが、ザスパがやってきたこと、そして、新たにやろうとしていることが、確かなものであるという事を、この日の試合で示すことができたのではないかと思います。


仙台に勝ち、勝ち点を30に伸ばし、再び、残留圏の20位に戻ったザスパ。しかしながら、残留争いという現実、厳しい状況に置かれているという立場は何一つ変わっていません。


試合後、CBの城和隼颯選手が、「戦いの内容の部分では自信はある。ただ、結果が出ていない。サッカーは結果が一番大事、結果にこだわってやっていきたい」と話していたように、ラスト10試合というカウントダウンに入るここからの戦いは、より目の前の試合、プレーに全力を注ぎ、ゴール、勝利という結果につなげていく他、道はありません。


ザスパがやってきたことは間違いではない。結果につながる。それを仙台戦で証明してくれました。ラスト10試合は、残留争いのライバル、北関東ダービーというライバルとの譲れない戦いが続いていきます。ザスパの意地とプライドにかけて、ゴール、勝ち点、勝利を積み重ねていきましょう。その先にこそ、求めるものがあり、「Beyond Thespa」という目標が果たせるのですから。


文・写真/笹川裕昭