【オリコンニュース】
倖田來未20年たっても恋が一番大事
 2000年にデビューし、“エロかっこいい”の代名詞としてゼロ年代の若者たちを魅了した倖田來未。テレビでは底抜けに明るく豪快に映る彼女だが、これまでの活動を振り返ると、「“倖田來未”がわーっと走って行って、私自身は後ろから追っかけている、みたいな感覚」だったという。セクシー路線でブレイクするまでの模索期間のことや、“倖田來未”であり続けることの苦悩からそれを乗り越えられた出来事、結婚を経た現在の境地など話を聞いた。

【画像】「“倖田來未”やから、きれいでいなあかん」デビュー20年経っても変わらない衝撃ボディ

■念願の姉妹コラボも大ゲンカで3年の絶交期間 それでも一番好きな“友達” 妹・misonoの存在

――この20年間を振り返ってみて改めてどんなことを感じますか。

【倖田來未】めくるめく日々でしたよ(笑)。下積み時代は、AIちゃんやCrystal Kayちゃんなど、クラブで活動しているメンバーと切磋琢磨していましたが、私は私にしかできない音楽を表現していこうというところから“倖田來未”という人が確立されて。ヒット曲にも恵まれて、結婚もして。辛い時期もありましたが、“倖田來未”にはよく折れずやってくれたなと思います。

――今も原曲キーで、当時のままの歌声で歌っていらっしゃることには驚きます。

【倖田來未】実は一時、声が出なくなっていたこともあったんですよ。発声法が我流で、それでもかつては若さでやっていけたんですが、2015年頃、1、2曲歌ったらしんどくなって。そこからボイストレーニングに通い始めて、良い先生と出会えたことで、今では1日に2公演でも全く声がつぶれなくなりました。自分がブラッシュアップしている実感を持ちながらボイストレーニングできているから、成長が楽しいし、ボイトレが楽しいです。どんどん高度な曲を歌っているから、それをこなすにはスキルを磨き続けるしかなくて。ボディコントロールも含めて、時代に置いていかれないように自分磨きをすることが自分の使命だと思っています。意外に考えているの(笑)。

――20年の中で特に思い入れのある楽曲は何ですか。

【倖田來未】妹・misonoとコラボした曲「It’s all Love」は大きかったかもしれないですね。misonoも私もライオンなので、一緒にやるうちに大ゲンカが勃発するんですよ。私はテーブルをひっくり返すし、むこうはPVの撮影に来ぉへんし。だから、あのPV、合成なんですよ。そこから3年くらいしゃべらないんですけど(笑)。

――それはすごい(笑)。仲直りはどうやってされたんですか?

【倖田來未】結局、友達の中で一番好きなのがmisonoなんですよ。面白いし、優しいし、内面はすごくナイーブな子なので。コロナ禍のとき3ヵ月くらい2家族で一緒に我が家で暮らしていたこともあったんです。そのときも料理を作ってくれたり、「おねえ忙しいやろ」って家の中をきれいにしてくれたり。そもそも私に自分を持たなきゃいけないということを教えてくれたのもmisonoなんです。

――いつもご自身の言葉で発信されていたイメージがありますが、“倖田來未”を演じているところもあったのですか。

【倖田來未】それはあります。私、本当は内向的で、人見知りで、普段の生活は地味やし。でも、「Crazy 4 U」ぐらいから、「峰不二子ちゃんみたいにかっこいい、女の子が見てもきれい~、セクシーって思ってもらえる女性になりたい」と思うようになりました。自分がやりたいことではなく、“倖田來未”がいかに輝くかを俯瞰で考えるようになったんです。だって、ラックにかかっている服を見て「え!? 今日の衣装これですか?」と思うような、下着みたいな薄い服のときがあるわけですよ(笑)。「倖田來未さん以外は誰も借りていない」と言われて、「そらそうやろな!」と思うけど、これを誰が着こなすのかと聞かれると、「倖田來未やんな」とも思うし。

■女性ソロアーティスト全盛のゼロ年代「どうやったら知ってもらえるか“すき間”を探した」

――ゼロ年代には10代や20代の若者達のアイコン的存在でした。当時を振り返ってどう思いますか?

【倖田來未】「すごいな、倖田來未」と俯瞰で見ていました。レコード大賞とかディスク大賞、ネイルクイーンなどいろいろいただいて、若い女の子たちがみんなヘアスタイルやファッションを真似してくれて。こんなに褒めてもらっていいのかなと思っていましたよ。“倖田來未”がわーっと走って行って、私自身は後ろから追っかけている、みたいな感覚でした。時には、私の内面にいる神田來未子さん(旧姓の本名)に引きずられそうなことも。普段は夜9時には寝ているのに、クラブで活動している時代は、夜中の1時2時にクラブで歌えと言われて、眠たいし。それに、神田來未子さんはあまりお酒も飲まないのに、“倖田來未”はクラブで朝までお酒を飲んでいそうじゃないですか(笑)。自分のできないことを具現化するのが“倖田來未”であり、自分が思うかっこいい女性の理想像が“倖田來未”なんですよ。

――そうした理想像はどのように作られたんですか。

【倖田來未】歌うことが好きだったから、最初は歌えたら良かったんです。でも、売れないし、知ってもらえない。どうやったら知ってもらえるかと考えたとき、当時、安室奈美恵さんやあゆ(浜崎あゆみ)さん、ELTさん(Every Little Thing)がいて。安室さんは踊るけど、セクシーなファッションでは踊ってないよなとか、あゆさんはロックやしなとか、そういう感じで、すき間を探したんです。すき間を探しつつ、突拍子もないことをやろうとしているときに、「Crazy 4 U」のPVを見た庵野秀明監督が「キューティーハニー」を歌ってほしいと言ってくださったんですよ。

――実はアーティストであり、プロデューサーでもあったのですね。

【倖田來未】それ、もっと言って〜(笑)! 実は3年でCD売れなかったらクビって言われていたんです。最初は用意されたレールに乗ってるだけやった。でも、「Crazy 4 U」に出会ったときに「これや!」って思って、こういうPVにしたい、こういう振りが踊りたい、こんな衣装が着たいと初めて主張したんです。

――そういった中でもご自身の中でぶれてしまいそうな時期はありませんでしたか。

【倖田來未】親が私のことで「お前の娘、あんな格好して」などと言われていた時期は、辛かったし、やめたほうが良いんじゃないかとも思いました。でも、お母さんが「倖田來未は倖田來未、家に帰ったらくぅちゃんなんやから、大丈夫よ。好きにやればいい」と言ってくれたことに救われたんですよね。

――ご自身の理想として作られた“倖田來未”は、その後変化していますか。

【倖田來未】変わっていないなあ。まだ誰もやっていない初めてのことをやるのが“倖田來未”だと思うから。

――お仕事も、プライベートもサービス精神がベースにある気がします。

【倖田來未】そうですね。そのサービス精神が足を引っ張ることもあるんですけど(笑)、それが多分私やから。それが楽しいし、天性。倖田來未の「來」って、お母さんがつけてくれたんやけど、人を笑顔にさせるって意味があるんですよ。人が笑っているのを見るのが好きだから、誰かのためなら頑張れる。ダイエットもそう。“倖田來未”やから、きれいでいなあかんって思うけど、普段の私やったら太っていると思いますよ。めっちゃ食べるから。

■結婚して10年…妻として母として、いちアーティストとの両立「仕事も大事だけど、一番は恋」

――またサービス精神の盛り上げトークが(笑)。辛い時期はどう乗り越えてきましたか。

【倖田來未】結局は、人なんです。良い家族、良い友達がいて、守ってくれるスタッフや仲間がいて。そして、私はやっぱり仕事も大事ですけど、一番は恋なんです。恋を頑張らないと、仕事を頑張れないの。特に忙しい時期は、地方に連チャンでライブがある中でも、深夜バスに飛び乗って帰って、彼に会って補充してまた始発で行くみたいな感じでした。

――恋愛体質は今も変わらないですか。

【倖田來未】全く変わらない(笑)。今は私が仕事でいない時は、パパと息子が二人で「ママはライブなんや~。男同士楽しもうぜ」と頑張ってくれています。結婚してもうすぐ10年経ちますが、変わらず好きです。

――どうやってその気持ちを維持するんですか?

【倖田來未】 私はいつも男を落とす方法を聞かれると、「申し訳ないと思うぐらい尽くせ」と言うんです。ちょっと尽くすぐらいやったら都合のいい女になるけど、とことん尽くして「申し訳ないな、こんなにしてもらって。俺もなんかやってあげな」と思うところまでもっていかなあかん、と。だから、私は彼が一番だし、彼も私が一番と思ってくれているの。そのかわり、新鮮さを保つための努力もしていますよ。手編みのマフラーとかね。1回もつけているのは見たことないけど(笑)。それに、私は彼の鼻毛が出ていても「恋が冷める」と言いながら、シェーバーでカットするんですよ(笑)。逆に、かっこいいと思うときは「今日みたいな感じでいてほしい!」「今日の顔好き」「今日のスタイリング好き」「その表情好き」と、常に言っています。

――12月6日にデビュー20周年の集大成ともいえるオールタイムベストアルバム『BEST~2000-2020~』が発売されます。21年目向けて、今後の目標をお聞かせください。

【倖田來未】例えば「『キューティーハニー』を聴いていたとき、この人と恋していたな」とか、「学生時代は大変やったな」とか、歌によってよみがえる思い出ってあると思うんですよ。このベストアルバムを聴いて、思い出にぜひ浸ってほしいし、皆さんの人生に私の曲が寄り添えていたら幸せやなと。今後もずっと歌っていきたいし、5年後や10年後に思い出に乗せていただけるような楽曲を今後も出していけたら何より嬉しいです。
(取材・文/田幸和歌子)

(提供:オリコン)
倖田來未 撮影/逢坂聡 (C)oricon ME inc.
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