【オリコンニュース】
中高年の女装男子も増加、業界の今
 近年、テレビ番組やネット、SNSなどでも取り上げられ、かつてはタブー視されていた“女装男子”は、今や市民権を得た感がある。男性に女装メイクを施し、衣装コーデや撮影を行う女装サロンも盛況のようだ。バラエティ番組『ぐるナイ』(日本テレビ系)や『5時に夢中!』(TOKYO MX)などで女装企画を担当し、新宿のサロン『ハイクオリティ』を経営する女装専門美容家・保志エリカさんに、今の女装シーンと問題点を聞いた。

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■美容部員から女装専門美容家に転向、きっかけは目撃した“差別”

――保志さんが”女装専門美容家”になったきっかけを教えてください。

【保志さん】もともとは普通の美容部員として働いていましたが、あるきっかけで女装専門美容家に切り替えて10年目になります。美容部員時代、仕事先で、ある男性のお客さんが差別されていたのを目撃したことが転機になりました。

――差別とは?

【保志さん】男性のお客さんが「メイクしてほしい」と来られたので、私は店頭でその男性にメイクをしたんですね。そうしたら、後でマネージャーにすごく怒られて。今はデパートでも男性のメイク、女装さんのメイクにも対応しますが、当時は全面的にNGでした。誰にも迷惑をかけているわけではないのに…と、私としてはすごく疑問に感じて。その男性は、いわゆるニューハーフやオカマと呼ばれる人とは違うタイプの人で、「実はこういう人ってすごく多いんだろうな」と興味を持ち、この方向性で勉強してみようと思ったんです。

――なるほど。

【保志さん】私は当時、美容部員をしながら裁判官の国家資格を取るために勉強していてました。35歳で受からなかったら方向転換しようと思っていたんですが、ちょうどその頃に東日本大震災が起きて。そのタイミングで「今、切り替えよう」と”女装専門美容家”の道に切り替えました。

■すでに最盛期は過ぎ、厳しい淘汰が始まっている女装サロン業界

――女装サロン『ハイクオリティ』を開店して9年目とのこと。現在は、新型コロナウイルスの影響で来店をお断りしているとのことですが、ネットやSNSでも女装が話題になっている昨今、お客さん自体は増えていたのでは?

【保志さん】ずっと増えていましたが、実は去年から少し落ちています。女装サロン業界の最盛期は過ぎていて、3年くらい前からつぶれる店も出てきているんです。以前は素人でもサロンを出せば儲かりましたが、今はメイクの質が良い店や「画像処理が恐ろしくうまい」といった特性を持つ店が生き残り、それ以外は淘汰されているのが現状です。

――女装メイク市場は成熟期に入っているということでしょうか。お客さんの傾向も変わりました?

【保志さん】以前は「女性の服が着られればいい」という人が多かったけれど、今は「こういうメイクをしてくれない店には行かない」など、お客さんの志向も高まっていますね。逆に、自分が望むメイクをしてくれる店には高額でも行く人はいます。年齢層で言うと、30代後半から50歳手前くらい、アクティブに動けてお金を持っている層が一番強いですね。そういうお客さんに選ばれ、定期的に通ってくれているお店が残っているんだと思います。

――お客さんと接する上で、大切にしていることはありますか?

【保志さん】技術的なことでは、”メイクをした男性”っぽく仕上げないようにしています。意外に、誰が見ても女に見えず、いかにも”男性がメイクしてます”という女装にする店は多いんですよ。うちでは、あくまでも“女性の枠”に入れてあげたいので、外を歩いてもバレないように、一見薄く見えるメイクにしています。

 また接客においては、緊張していたり、女装することに後ろめたさを感じていたりするお客さんが多いので、友だちのようにフラットに話すようにしています。特に初めての方はかなりガードが固いので、こっちから思い切り懐に飛び込むようにと。

――やはり初めての人は固いですか?

【保志さん】最初は不安でしょうし、予約して来店するだけで精一杯なんだと思います。若い人の場合、子どもの頃から女装の情報もあったし、イベントで友だち同士でメイクをしたりして、抵抗は少ないんでしょう。40代くらいの人が、一番緊張していますね。

――若い人と年配者ではやはり違いがあるんですね。

【保志さん】大きな傾向として、若い人は完全に趣味として「楽しいからやる」という人が多いです。一方、年配者は真面目で高学歴、高収入の人が多い。医師や弁護士、官公庁の関係者とか…。普段は真面目で、色々なものを背負っていて、それをうまく荷下ろしできないタイプの人が来ます。現実逃避ともまた違う…全然違う自分になって、普段の自分から離脱するイメージでしょうか。お店に来るのはそういう人が8割で、2割くらいが「ただ楽しいからやる」という人です。

――希望するメイクや服装にも違いがありますか?

【保志さん】「楽しいからやる」という人は、ズラを被ってメイクすればそれなりに楽しいので、あまりクオリティを気にしません。若い人だと、YouTubeの動画を見て、自分でメイクしたりもしていますね。目指す方向性もある程度年相応で、「同い年くらいの女子大生風がいい」というようなことが多いです。

 でも真面目タイプの人は、クオリティをとても気にします。実際、「普段と全然違う感じにしてほしい」と言われて、そのように仕上げると、泣き出す人もいるんです。おそらく、ストレスが溜まりすぎているんでしょうね。昔から女装したかったけれど叶わず、思いを溜めに溜め込んで来るんだと思います。年配の人でも「セーラー服を着たい」という人がいますが、やはり長年の夢と希望をどうしても実現したいんじゃないでしょうか。

 一昔前と比べて「女装男子」はかなりメジャーな存在になってきた。そういった願望を持つ男性にとっては、ある意味で生きやすい世の中になったのだろうか? だが、女装業界の現場を知る保志さんは、選択肢が増えたからこその危険性も訴える。

――そういった嗜好を持った人たちには、生きやすくなったのでしょうか?

【保志さん】どうなんでしょう。個人的には、女装に対してある程度の“区別”は必要なのではないかと思っています。女装が全面的に受け入れられると、服装にしてもメイクにしても、ものすごいクオリティを求められる。普通の女性と同じ土俵に乗ってないからこそ、「あれ?」っていう女装さんがいても「ま、女装だからな」と何となく目をつぶって許せるんだと思います。

――一概には言えないんですね。

【保志さん】私が気になるのは、趣味や荷下ろしで女装を始めたけど、それがエスカレートして「自分は女性になった方がいいんじゃないか」、「本来の自分は女性なのではないか」と勘違いする人たちです。性同一性障害の人は自分の内面によって、性別を変えることもあると思います。ですが、女装していると安易に「自分もそうなのだ」と思い込んでしまうことがある。それで性転換してしまって、後で後悔する…そういう人がすごく増えているのは怖いと思います。選択肢が増えたからこそ、そういうことが起こりえるし、Twitterで警告している女装さんもいますね。

――そういう勘違いは危険だ、と。

【保志さん】はい。女装さんって、外見はきれいにしても、根幹に男子の部分がちゃんとあるところが魅力だと思いますね。

――最後にメッセージをお願いします。

【保志さん】ストレスが溜まっているであろうお客さんが心配です。また、女装に興味のない方でも、話題作りでもいいので、男性は一度女装をやってみると楽しいと思います。体験すれば、メイクが意外と面倒臭いことや女性服が動きにくいことがわかる。だからこそ、自分の彼女や奥さんに対して優しくなれるんじゃないかと思います。女性が買い物している時間、メイクしている時間も、待ってあげられるようになりますから(笑)。

(提供:オリコン)
女装サロン『ハイクオリティ』で変身した男性(写真:ハイクオリティ提供)
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