【オリコンニュース】
経験談描く“カルト2世”の現在地
 2018年に『カルト宗教信じてました。』、今年1月に続編『カルト宗教やめました。』を出版した、漫画家として活動するたもさん。母親がエホバの証人に入信し、自身も10歳の時から25年間“2世”として生きてきた。息子の病気をきっかけに35歳で脱退。入信から脱退までを描いた2作は、「同じ境遇なので共感した」、「続編の“楽園は自分で作れる”の言葉に泣いた」など、大きな反響を呼んでいる。「全てを背負う覚悟で描き切った」というたもさんに、漫画を描くことになった経緯や、今後の展望について聞いた。

【漫画】夢に見たり、奉仕中の信者を目撃し猛ダッシュしたり…脱退後のたもさん家族の日々とは、ほか入信のきっかけもエピソードを一部公開

■信者の場所を奪ってはいけない でも漫画を描きたかった

――第1作となる『カルト宗教信じてました。』の出版が決まるまでの経緯を伺えますか。

【たもさん】最初は、アメーバブログにカルトの体験記や信者あるある、息子の病気のことなど、思いつくままに漫画を描いていました。アメブロにはすでに元信者のコミュニティがあったのですぐに認知してもらえて、たくさんの人に反応をもらいました。

――最初から反響があったんですね。

【たもさん】そうですね。その後Twitterにも投稿し始め、宗教ゆえに進学できなかったという話で「バズる」という体験をしました。ちょうどそのころ、夫が仕事先で出会った出版社の方に声をかけていただき、出版が決まりました。

――続く今年1月には『カルト宗教やめました。』も出版されました。2作目を描かれたきっかけは?

【たもさん】もともと1冊で終わる予定だったんですが、続編も出して欲しいという声と、たくさんの方が宗教を抜けた「その後」の生活に苦労しているという話を聞いて、これも1つのテーマとして描けるんじゃないかと思いました。

――2作目に込めた思いは?

【たもさん】1作目は内容のインパクトもあり、わりと攻めた内容になっていたかと思いますが、2作目はどちらかというと落ち着いた作風になったと思います。感想の中にも、「ややインパクトに欠ける」なんてものがありました。私の中にも若干の心境の変化があり、「宗教に走る人にもそれなりの理由がある」と、親を許すまではいかなくても理解するような内容になったと思います。

――どんな方が本を読まれているのか、わかる範囲でお聞かせください。

【たもさん】元エホバの証人の方、親がそうだという方、配偶者や恋人がエホバだ、またはエホバだった、またエホバでなくても他の宗教だったり、宗教でなくても親子関係に悩んでいる方などがいらっしゃるようです。

■新たなテーマにも挑戦 自分の人生経験が少しでも役に立てば

――漫画家になることは、たもさんの子どもの頃からの夢だったと思います。今2冊本を出されて、漫画家としての活動をしていることへのお気持ちをお聞かせください。

【たもさん】ありがたいことに漫画を描かせて頂いて、下手なりに評価していただき感謝しかありません。ただいつまでも宗教ネタで引っぱるわけにもいかないので、これからかな、と思っています。

――今後はどんな内容の漫画を?

【たもさん】私の人生経験はそのまま生かしつつ、いろんな分野の漫画に挑戦していけたらいいなと思います。実は今、“性教育”の漫画にチャレンジしていて。なかなか難しいテーマだと思いますが、日本では性教育がとても遅れているらしいんです。私自身、かなり偏った教育を受けてきたので、まったく土台が無い状態ですが、日々勉強させてもらいながら描いています。

――性教育を描こうと思った理由は?

【たもさん】とても面白いんですよ。性教育って決してエッチなものではなくて、対人関係において傷つかない、傷つけないために重要なものだと思います。時々、私の特殊な環境の話を入れたりしながら描いています。私の漫画が、ちょっとでも誰かの役に立てば嬉しいです。

■面白いことはどんどんやっていきたい 「イベントバー」を定期開催

――「宗教二世を語るバー」なども限定でされています。入信中は対面も含め、自身の経験を語るSNSの使用なども禁止なのでしょうか?

【たもさん】禁止というよりも「節度を持って。信者以外との接触は注意して」だったかと思います。Facebookなどをしている人はいるようです。もちろん、辞めた人とつながることは厳禁ですが、中には辞めた人を説得しようとしてつながる猛者もいるようです。

――いろいろな方がいるんですね。

【たもさん】辞めようか悩んで元信者のSNSを覗いて、そこで目が醒めて宗教を去る人もいます。自分の中だけに秘めていた悩みを打ち明けて心が軽くなったり、共有して立ち直る助けになることもあります。

――イベントバーもその1つ?

【たもさん】そうですね。私はTwitterで偶然知りました。誰でも気軽に1日店長になれて、テーマを決められるんです。参加者は事前申し込み無しで、いつでも来たい時に来たい人が集まって、お互い名乗らず、連絡先交換も無し。ただ飲んで喋るだけ。合わないなーと思ったらすぐに帰れるところも、いいなと思いました。

――気軽に利用することができるんですね。

【たもさん】私自身、友達を作るのが苦手なんですが、その日限りと思うと気楽に話せます。どこの誰が来るか分からないのは正直怖かったですが、結果は大成功でした。普段は絶対に出会えないような人から、貴重な話がたくさん聴けました。すぐに他の元信者の子が次のイベントバーを計画してくれて。このままライトな集まりが続けばいいなと思います。

――漫画以外で、今後やってみたい事はありますか?

【たもさん】漫画以外となると、なかなか思いつかないのですが…。たまに、カルト2世の代表みたいに扱われることがあって、ちょっと違うかな…と思ったりします。ただ、「二世バー」「生きづらいバー」「友達いないバー」「親とのしがらみしんどいバー」なんてテーマを色々変えて、日本全国でやってみたいです。どれだけ集まるか分かりませんが(笑)。

――テーマを変えて、いろいろできそうですね。

【たもさん】「キングオブ壮絶人生バー」なんてどうでしょうか。我こそは壮絶な人生のネタを持っているぞ!という人に集まってもらって、一番面白い話を漫画にする、とか決めたら集まるかもしれません。とにかく面白いことはどんどんやっていきたいです。

(提供:オリコン)
カルト2世として25年間教えを信じてきた「たもさん」、自身の経験を描いた漫画で伝えたい事とは(画像提供:彩図社/たもさん)
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