【オリコンニュース】
サンリオ新キャラなぜ“おばけ”?
 先日、サンリオにとって初の試みとなった投票企画『NEXT KAWAII PROJECT』の結果が発表された。こちらは、次にデビューする新キャラクターを決めるユーザー参加型プロジェクトで、「第2のハローキティやシナモロールを生み出したい」という思いから実施。1位となったのは、“頑張ったあなたにハナマルをくれる”という「はなまるおばけ」だった。いま求められるキャラクター像、そしてなぜ“おばけ”なのか? プロジェクト担当者とデザイナーに聞いた。

【動画】「これは泣ける…」報われなかった努力にもハナマルくれる癒しの“おばけ”

■頑張っても報われないことも…「努力した事実」を褒めてくれるキャラクターが1位、内面や世界観に支持

 昨年6月10日より審査が行われてきたサンリオ『NEXT KAWAII PROJECT』の最終結果が3月1日に発表され、ユーザー投票で390万3377ポイントを獲得した「はなまるおばけ」のデビューが決定した。

 今回、初めて開催された『NEXT KAWAII PROJECT』とは、「第2のハローキティやシナモロールになれるようなニュースター」をユーザーの応援で決めるプロジェクト。サンリオといえば、毎年開催される『サンリオキャラクター大賞』が有名だが、投票するのが既存のキャラクターでない点が特徴。ユーザーが投票することで、まったく新たなキャラクターをデビューさせることができるという、昨今ブームの“推し活”のようなシステムだ。

 同プロジェクトでは、社内で応募のあった120以上のキャラクターから、まずは社内投票で上位25キャラクターがエントリー。ユーザーによる「デザイン投票」「動画投票」「グッズ投票」という3つのステップで審査され、その期間は約10ヵ月に及んだ。

 「はなまるおばけは、『NEXT KAWAII PROJECT』がテーマにしていた“共感性”にまさにハマったキャラクターでした。昨今の人気キャラクターはデザインの可愛らしさだけでなく、内面や世界観も含めて支持される傾向があります。こうした時代性というのは意識しなくても常に入ってくるもので、たとえば『ぐでたま』であれば“だりぃ”などやる気の無さへの共感、『ポムポムプリン』はゴールデンレトリバー人気、『コロコロクリリン』はハムスターブームなどが影響して生まれてきました」(『NEXT KAWAII PROJECT』担当者・池内慎一朗さん)

 今回1位となったはなまるおばけは、頑張った“あなた”にハナマルをくれる不思議なおばけ。動画でも、テスト勉強を頑張ったもののいい点数が取れず、落ち込んでいる女の子のストーリーが描かれた。はなまるおばけは女の子に気づかれないようそっと答案用紙に近づき、小さな体で一生懸命ハナマルを描くのだ。

 「SNSで他人と自分を比較しがちな今の時代、過剰に自分を低く評価してしまっている人って多いと思うんです。求められる能力はどんどん上がっているし、頑張っても報われないこともある。だけど頑張ったことそのものは尊いはず。そこを褒めてくれるキャラクターがいてくれたら──。そんな私自身の願望を投影したのが、はなまるおばけでした。個人的な思いに共感してくださった方がたくさんいたことが、何よりもうれしかったです」(デザイナー・Misatoさん)

 おばけをモチーフにした人気キャラクターといえば、マンガやアニメから生まれた『オバケのQ太郎』のQ太郎、『妖怪ウォッチ』のウィスパー、ゲームでは『マリオ』シリーズのテレサなどがいる。また絵本『ねないこだれだ』のおばけ、『バーバーパパ』なども古くから親しまれるおばけキャラクターと言えるだろう。

 古今東西さまざまなおばけキャラクターがいるが、上記のとおりエンタテイメントコンテンツから生まれている場合が多く、独立したキャラクターは意外にあまりいないようだ。サンリオにとっても、おばけそのものを模したキャラクターは稀で、多くが動物モチーフだったりする。なぜ今回、あえておばけのキャラクターを選んだのか。

 「はなまるおばけは、デザインより先にコンセプト から生まれたんです。 まず、“身近に潜む何か×癒し”をキーワードにしたいと思い、それならば“おばけ”かなと。ただ、おばけであるというのは一つの要素にすぎないんです。頑張っても報われない経験を持つ人、自己肯定感が下がってしまった人に寄り添う…そんな方向性を見つけて、詰めていきました。こうして生まれたはなまるおばけは、『頑張った人にこっそりハナマルをつけてくれる』キャラクターであり、いつも近くで見守ってくれる存在。たとえば、お星さまになった大切な人、遠い昔の素敵な思い出とか、そういった形のない“概念”みたいなものなんじゃないかなと考えたんですね。だから、はなまるおばけはみなさん一人一人についていて、その人の思いを映し出しているものなのかなと思います」(Misatoさん)

 キャラクター解説によると、「おばけたちはみんなの近くに潜んでいて、人それぞれ違ったコがついているらしい」という。おばけがモチーフであればそれもたしかに腑に落ちるが、ユーザーごとに違い、一緒に創作できる自由な余地があるという点でも、新しいキャラクター像だ。

 「はなまるおばけという種族がいて、その概念を具現化したのが『まるまる』というコです。癒しの意味も込め、ふわふわで柔らかそうなフォルムをデザインしました。アイテムの赤鉛筆はどこかからピュッと取り出すのですが、その辺の都合のいい感じもおばけならではなのかなと思っています(笑)」(Misatoさん)

 頑張っているすべての人のそばに、自分だけのはなまるおばけがいる──。キャラクターとしての可愛らしさに加えて、自分の心の柔らかい部分を託したり、メッセージ性を込めたりできるのも、はなまるおばけが“概念”であるからにほかならない。

 そんなはなまるおばけが1位となった今回のプロジェクトで、今までと大きく異なったポイントが、 動画投票でのショートアニメ審査だ。かつては、好きなキャラクターはイラストやグッズで楽しむものであり、アニメーションとして“動くキャラクター”を見るのはテレビでアニメ化しない限り難しかった。だが昨今では、YouTubeやSNSを通じてショートアニメなどを閲覧できることも多く、キャラクターへの理解や愛着も以前よりずっと生まれやすくなっている。

 「動画投票では、5秒程度のショートアニメでユーザーのみなさんに審査していただきました。平面イラストだけでは伝わりきらない動きや立体感の可愛さを表現しつつ、短い時間で世界観を的確に伝えることが大事です。キャッチーでわかりやすいこと、現代人の心に寄り添える要素を持っていること。動画投票では、そうした部分をデザインだけでなくコンテンツとして伝えることができ、キャラクターの裏側を見せることができたのではないかと思います。このあたりが伝わったことが、はなまるおばけが支持された理由ではないでしょうか」(池内さん)

 はなまるおばけだけでなく、エントリーキャラクターそれぞれに熱い応援が寄せられた『NEXT KAWAII PROJECT』。デビュー前にも関わらず、グッズ投票で販売したマスコットホルダーやクリアファイルが完売するといった事態は、プロジェクト関係者の想定を超えた反響だった。

 「近年キャラクターを推し活の対象として見てくれる人が増えていることもあり、はなまるおばけ以外のキャラクターも”推しキャラクター”としてみなさんからたくさん応援していただきました。みなさんからの応援に感謝し、最終ステップに進んだ10キャラクターによる期間限定のアフターパーティも実施します」(池内さん)

 そしてはなまるおばけは、公式ツイッター開設にグッズ販売、キャラクターカフェの実施やライブキャラクター化など、続々と展開が発表されている。

 「いつも近くに潜んでいるという設定なので、今後もずっと“あなた”のそばにいるキャラクターであれたらうれしいです。ちょっと気が早いですが、ハロウィンシーズンには特に活躍できるかも? 仮装した先輩キャラクターたちの中にこっそり紛れ込んだりしてみたいですね(笑)」(Misatoさん)

 伝わりやすさや共感は、キャラクターに限らず、現代のコンテンツにとってなくてはならない要素。しかも“概念”であるはなまるおばけは、可愛らしいだけでなくそれぞれの心に寄り添ってくれる存在でもある。頑張ったのに結果が出なかったとき、誰も褒めてくれないとき…生きていればそうしたことへのフラストレーションは付きもの。以前、西武鉄道とキャラクター・コウペンちゃんによる車内広告「出勤してえらい!」が話題になったが、時代はそれほどに癒しや励ましを求めているのだろう。 今回、多くの支持を集めたはなまるおばけは、今後も人々のすぐそばで弱った心にハナマルをつけて、癒してくれるに違いない。

(文:児玉澄子)

(提供:オリコン)
サンリオ新キャラクター『はなまるおばけ』 (C)2023 SANRIO CO.,LTD. 著作(株)サンリオ
【関連記事】
【画像】「え、うん●のキャラクターも!?」ネクストカワイイTOP10
【画像】「可愛すぎる」の声続出、ちいかわ×サンリオの限定デザイン
【貴重画像】シナモン誕生以前の2000年にサンリオの社内公募に提出されたうさぎのキャラ
『ちいかわ×サンリオキャラクターズ なりきりフィギュア』登場 3・21から順次発売
『2023年サンリオキャラクター大賞』開催発表、10キャラ増“90キャラクター”参加 ドキドキ顔ビジュアル公開

▲ページTOPに戻る