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相武紗季、“悪女役”で吹っ切れた
 ‘03年放送のドラマ『WATER BOYS』以来、今年で俳優デビュー20周年を迎える相武紗季。'09年放送の『ブザー・ビート』では初の“悪女”役を演じ、清純派イメージから一変、役者としての幅を大きく広げた。しかし4年後には、アメリカに単身留学。その背景には、下積み無しに“王道ヒロイン”としてブレイクした彼女ならではの苦悩があった。「壁にぶつかってばかりだった」と明かす相武紗季が、20年の芸能活動を経て辿り着いた境地とは。

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■多忙極めた10代は“絶望”の日々だった…「自分を取り繕うのに精一杯でした」

 2001年、幼馴染で俳優の木南晴夏が「夏の高校野球PR女子高生」に選ばれたことをきっかけに、高校野球に夢中になった相武。翌年、高校球児に会いたい一心で自身も同オーディションに応募すると、約1000人から選出され、16歳で芸能界入りした。

「デビューして最初の5年くらいは、記憶がないぐらい忙しかったです(笑)。とにかくがむしゃらにやっていましたね。器用なタイプではないので、人一倍やらないとついていけないと思って、寝る間も惜しんで日々のお仕事に臨んでいました」

 デビューして初めての作品が『WATER BOYS』。山田孝之、森山未來、永山瑛太、宮地真緒、香椎由宇など、同世代ながらキャリアのある俳優陣と肩を並べることに、劣等感と罪悪感すら抱いていたという。彼らと相武のデビューの差はたったの数年だが、10代にとっての「数年」はとても大きく感じるものだ。

「なんで自分だけできないんだろうって、ずっと自問自答していました。毎日壁にぶつかって、『明日が来なければいいのに…』って願ったりもしていましたね。でも、現場に行ったら自信を持たないとお仕事ができないし、とりあえず自分を取り繕うのに精一杯でした」

 下積みもなく、休みなく大舞台に立たされ、どんなに精一杯やっても手応えはなかった。現在のようにSNSは発達していなかったが、世間の心無い声は本人にも届いていた。それでも求められるがゆえに逃げ場もなく、多感な時期に、試練の連続だった。

「10代の頃は特に、人からの見られ方を敏感に感じ取っていたんですよね。周りからの声にいちいち傷ついて、絶望して。でも、どんなに忙しくてもセリフは完璧に覚えて現場に入ろうとか、絶対に噛まないとか、下手なりにできることは何か考えていた気がします。全力すぎて楽しめていなかったかもしれないけど、やろうと思ったことはクリアしたから大丈夫と自分で自分をなだめて、なんとか乗り越えていましたね」

■『ブザー・ビート』オファー時は姉妹役だった「顔合わせ後、なぜか悪女役に(笑)」

 『Happy!』『レガッタ~君といた永遠~』『絶対彼氏〜完全無欠の恋人ロボット〜』など、立て続けの王道ヒロイン役に、相武には清純派イメージが定着していた。それが、ある種のプレッシャーと恐怖になっていたという。

「いい子の役をやると、“ちょっと態度が悪かったら性格が悪く思われるかも”という恐怖があったし、そういう目線を繊細に感じていたんですよね。常に礼儀正しくしていないと、そういう役ももらえなくなっちゃうと思っていたので」

 転機となったのが、山下智久主演の『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』だ。北川景子が演じたヒロインの恋敵役として、濃厚なベッドシーンや喫煙シーンにも臨んだ。

「今まで出会えなかった悪い役を演じることができて、すごく嬉しかったです。それまで主演じゃないと共感してもらえないと思っていたけど、そうじゃなくても受け入れてもらえたことが、私にとって新たな気づきでした。それまではコソコソしてたのが、『悪い役やってるやつでーす』みたいな感じで、ちょっと吹っ切れたというか(笑)」

 しかし、それまで積み上げてきたイメージを壊すことや、嫌悪や批判の対象となりかねないような役柄に挑むことに、抵抗はなかったのだろうか。

「それが、最初オファーをいただいた時は、確かちょっとめんどくさい姉妹の役だったんですよ。顔合わせでスタッフの方とお話した後に、なぜか設定が変わっていて(笑)。私のどこかに悪女の要素を感じたのかな?って若干悩んだんですけど、演じれば演じるほどに、『えー』っていうキャラクターが出来上がっていきました(笑)」

 それまで散々、一途で純粋な女の子を演じてきた相武。初の悪女役と向き合い、自分に“いい子クセ”が付いてしまっていたこと、演技のレパートリーの少なさを痛感した。

「たばこを吸ったり、長いキスシーンがあったり、私にとって初めての挑戦ばかりでした。それまでのいい子要素がつい出てしまうと胡散臭くなってしまって、監督に『もっと悪く!』って言われてましたね。悪く見えるにはどういう目線がいいか研究したり、生々しいラブシーンのあるドラマをたくさん見たり…。試行錯誤しながら演じていました」

 その演技は、“いい子”イメージの強かった相武だけに、ギャップが大きな反響を呼んだ。以来、彼女に舞い込む役のオファーも一気に幅を広げた。

「途中ぐらいから、街で年上のお姉様方からも声をかけていただけるようになったんですよ。『悪い役だけど、私はアナタ派!』みたいな(笑)。それがすごく嬉しくて、やる気に火も付いて、楽しんで演じることができました。自分が加わることで話が面白いと言ってもらえたことが初めての経験だったので、作品を見る着眼点も変わりました。今にも通じますが、メインよりサポートする役が好きだし、向いてるなと気づきました。自分が一員になることで、いいスパイスになるといいなと思いながら演じています」

■人気絶頂期に27歳で単身渡米した理由「留学するか、仕事を辞めるかの二択でした」

 その後は、主演ドラマ『リバウンド』だけでなく、『家政婦のミタ』や『リッチマン、プアウーマン』では助演として存在感を発揮。キャバクラ嬢役や美空ひばり役にも果敢に挑んだ相武だったが、役柄が広がったことで、余計に自分の引き出しのなさに愕然としたという。

「16歳からこの世界に入って、必死に目の前の仕事をする毎日だったので、吸収できていないことがたくさんあったんですよね。だから27歳の時に、留学するか、仕事を辞めるかどっちかにしたいと事務所の方にお願いしました。お芝居は好きでしたけど、自分が空っぽのまま、できない、できないって思いながらやることに負い目があったんです。留学ができないんだったら、まだやり直せる年齢だから、別の仕事も考えたいと伝えました」

 10代の頃から、どの仕事をする、どこに行く、何を着る、何を食べる…に至るまで、全て周りが整え、支えてくれた。そんな生活にずっと違和感を抱いていたという相武は、誰も助けてくれない環境に飛び込み、全て自分の選択で生きる暮らしを送ってみたかったのだ。自ら複数の留学エージェントの面談に足を運び、1人でアメリカに渡った。

「最初はサンフランシスコの語学学校に通って、自分のお金を使っているから、絶対に英語も習得したいと思って、猛勉強の日々。でも、3ヵ月くらい経った時に、そこまで語学力が伸びないことに気がついて。そこから全部解約して、ボストンへ。カナダにも旅行したり…飛行機や住む場所の手配も全部自分でやって、その方がよっぽど英語力がつきましたね(笑)」

 仕事がストップする恐怖や不安は全くなかった。それよりも、何も知らずに周囲に守られて生きてく方がよっぽど怖かった。留学中はマネージャーとも全く連絡を取らず、毎日が楽しく充実感があったという。

「帰国してすぐの作品が『ミス・パイロット』だったんですけど、英語を話すシーンもあって。しかも、演じた役がちょっと気の強い女の子。留学中に気の強い女の子にもたくさん会っていたので、つながるなって思いました(笑)。なんて良いタイミングで行かせてもらえたんだろうって」

 異国での経験を通じて、自分の逞しさ、自身で選択して生きていける自信、俳優業への想いに改めて気づくことができた。

「帰国後は、自分の中での仕事に対する心持ちも違ったし、みんなを支えたいって思いながら楽しんで演じることができました。お芝居が好きな気持ちや楽しさも再確認できましたし、インプットしたことをアウトプットする喜びを知るきっかけにもなりました。今後も、いろいろなものを吸収しながら、続けていけたらと思っています」

 20年もの時を経て、王道ヒロインの呪縛を打ち破り、主演に助演、良い女に悪い女のレパートリーをも手にした相武紗季。「良妻」も「不倫相手」も見事に演じ分ける今の相武には、“どっちに転がるか分からない”面白みを物語に加える力がある。そして、現在2児の母となった彼女が、今後さらなる引き出しを増やしていくことは間違いないだろう――。


(取材・文=辻内史佳/撮影=逢坂聡)

(提供:オリコン)
今年で俳優デビュー20周年を迎える相武紗季 (C)oricon ME inc.
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