【オリコンニュース】
彼氏と同棲、ワンオペ家事に嫌気
 付き合って6年、同棲を4年も続けながら、一向に結婚の気配を見せない彼氏。20代後半の結婚適齢期にモヤモヤを抱えていた主人公の前に現れたのは、“ハイスペック”に成長した元彼だった。総合電子書籍ストアを運営する『BookLive』のオリジナルコミック『花嫁未満エスケープ』で描かれるのは、マンネリ同棲カップルの“あるある”や、胸キュンな三角関係。連載開始から瞬く間に100万ダウンロードを突破する人気作で、現在は、テレビ東京系でドラマが放送中だ。多くの迷えるアラサー女性に共感を呼んでいる本作で、原作者の小川まるにさんが「批判されてもいいから伝えたかったこと」とは何か。

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■世話焼きな性格が仇となり…「家事やってなんて頼んでない!」彼氏の言い分

──本作の反響には、特に“お子ちゃま彼氏”の尚紀に怒り心頭の声が多いようですね。

【小川まるにさん】女性読者の多くが、主人公・ゆうと同じような経験をしているんだと思います。「お弁当箱を洗わない」、「スーツと靴下が脱ぎっぱなし」といったエピソードは、担当編集さんや、友人のリアル体験を元にさせてもらったものでした。尚紀に対して「クズ」と断罪している読者も多いんですけど、私は一度も「クズ」とまでは呼んでいないので、「そこまで?」とびっくりしつつ(笑)。前のめりに読んでいただけているのが、とてもうれしかったです。

──マンネリ彼氏を“悪役”にするつもりはなかった?

【小川さん】作品づくりで大事にしてるのは、完全な善人も悪人も作らないことです。尚紀のことを否定しているのではなく、「長い同棲の末に、彼氏から“お母さん扱い”されてしまう女性は多い」という現実を描写しただけなんです。相手のために頑張ったのに認めてもらえなくて、モヤッとしている女性って多いと思うんですよね。世のお母さんの多くも、同じ気持ちだと思います。私も子どもの頃、母に「部屋を掃除しておいたから」と言われて、「頼んでないし!」と反発したことがありましたから。

──2人のケンカの場面で、尚紀が「家事をやってくれなんて、一度も頼んでない」と言い放ちます。彼女としてはつらいですよね…。

【小川さん】そう、今となっては彼女の気持ちもわかるので、母には申し訳ないことを言ってしまったなって思います。でも一方で、彼氏側の気持ちもわかるんです。頼んでもいないことを「やってあげた」と上から目線で言われたら、そりゃあカチンと来るよなって…。だから、どっちも悪くないんです。なのに、2人の思いはすれ違ってしまう。切なさを描きたかったシーンでした。

──彼氏にお母さん扱いされてしまう問題はなぜ起きてしまうのでしょうか?

【小川さん】いろいろあると思うんですよね。洗い物も、彼氏にモタモタやられるより自分がやるほうが早いと、それを繰り返すうちに彼女が「家事担当」に定着してしまいます。ゆうは結婚を強く意識してるタイプで、どこか世話焼きな面もありますからね。

■適齢期に焦るアラサー女子、「いつ結婚するかは自分が決める」

──彼氏から“女性扱い”してもらえなくなったときに、目の前にステキな男性が現れたら…。彼女の複雑な心境も見どころです。

【小川さん】たしかに「元彼と今彼、どっちを選ぶ?」といった楽しみ方をしてくださってる読者は多いです。ですが私としては「どっちでもいい」と思いながら描いていましたし、どちらと結婚するかの結末も、最初はまったく考えていませんでした。

──ゆうは「結婚したい」と思っていて、20代後半の結婚適齢期であることに焦っています。だけど、彼女の幸せの落とし所は「結婚」ではないのかもしれません。

【小川さん】もちろん、結婚したいと思うことは悪くありません。ただ、自分の人生で「誰かに愛されて、選ばれた」ということだけに価値を置かないでほしい、ということを描きたかったんです。だから、どちらの男性と結婚するにしても、「結婚してハッピーエンド」みたいな終わり方だけはしたくないと最初から決めていました。

──“結婚適齢期”についてはどう思いますか?

【小川さん】先ほどの「家事をやってしまう問題」じゃないですけど、誰かの期待に応えようと頑張ってしまう女性は多いと思うんです。結婚適齢期というワードもまさに、自分と相手が「結婚しよう」と決めたわけでもないのに、「このくらいの年齢に結婚するものだよね」みたいな世間の圧というか…、期待が込められているような気がします。

──子どもが欲しいなどいろいろありますが、それも含めて「いつ結婚するか」は自分と相手が決めることですもんね。

【小川さん】もっと言えば、結婚しなくたって「自分にとっての価値」はまったく損なわれないはずです。本作で一番伝えたかったのは、「人生は一度きり」ということ。これを言ったら批判されるかもしれないけれど、たとえ結婚して子どもができても、子どものための人生ではなく、自分の人生を生きてほしいんです。世間や他人の期待に応えることで疲弊してしまう「誰かに愛される自分」よりも、「自分が大好きな自分」が何よりも愛おしいと思ってほしい。そんなことが連載を通して伝わったらいいなと思いながら描いていました。

──“お子ちゃま彼氏”に振り回されるゆうに共感していた読者には、そうしたテーマはどのように読まれるのでしょうか?

【小川さん】共感は、環境や価値観が近いから感じるもの。本作でゆうが成長していくことで、読者の中には「自分とかけ離れていって共感できなくなった」という方も出てくるかもしれません。それは仕方ないと思いますが、それでも「私もこういう生き方ができるかも」「迷いから抜け出せるかも」と思っていただけた方がいたら、この作品を描いた意味はあったんじゃないかなと思っています。

(提供:オリコン)
『花嫁未満エスケープ』より(C)小川まるに/ライブコミックス
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