【オリコンニュース】
サイバーモデル、差別に負けず躍進
 サイバーパンクファッション専門のモデルとして、活躍する斎藤ゆきえさん(@cyborgyukky)。8月に『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)で特集され、大きな注目を集めた。吃音や斜視といったハンディキャップを持ちながら、持ち前の根性で失敗を恐れず、次々にチャレンジ。SNSを駆使しながら100均グッズを使って衣装を制作し、今ではさまざまな企業からオファーが届くように。「社会への復讐心が、いつしか感謝の気持ちに変わった」という変化、現代における多様性や差別への考えも聞いた。

【写真】「まるで別人!」「スタイル抜群…」ピッタリしたサイバーファッションで決める斎藤さん

■『仰天ニュース』の反響に驚き、吃音へのいじめ、斜視で演技の仕事を諦めた過去

──先日、『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)で、唯一無二の「サイバー系専門のモデル」として取り上げられました。放送後の反響はいかがでした?

【斎藤ゆきえ】地元・仙台の同級生が久しぶりに「観たよ!」って連絡をくれたり、一瞬だけ「#サイバーパンク」というワードがトレンドに入ったり、テレビの影響って大きいなと思いました。サイバーパンクファッションの認知度も高められたのかなと思うと嬉しいです。

──サイバー系モデルという分野を確立された斎藤さんですが、そもそも斎藤さんがサイバーパンクファッションに興味を持ったきっかけは何だったんですか?

【斎藤ゆきえ】もともとは仮面ライダーが好きで、役者として特撮ヒーロー作品に出たいという夢があったんです。しかし、私は子どもの頃から吃音症に悩まされていて、それが原因でいじめられることもあって。それだけに、強い特撮ヒーローがずっと大好きだったんですが、吃音があるからやっぱり演技することは不可能だと思って、諦めました。

──それで得意の画力を生かして、美大卒業後に漫画家さんのアシスタントに?

【斎藤ゆきえ】ええ、絵を描くことも好きでしたから。でも、その漫画家アシスタントをしている間に吃音が治り、「これならお芝居ができる!」と思って演技を習いに行き、オーディションもたくさん受けはじめたんですけど、今度はその間に目がひどい斜視になってしまって。演技の練習をして実力を上げても、斜視では書類選考の写真審査で落とされてしまうんです。二度手術を受けたんですが再発してしまい、「吃音という病をひとつ乗り越えたら今度はこれかよ!」と、すごく悔しかった。でもそこで、「(斜視が)治らないなら生かすしかない!」という発想に切り替えて、左右非対称を逆手に取った「半身機械」設定のサイボーグ風自作コスプレ衣装に身を包み、友だちとハロウィンパーティーに行きました。そのときの写真がFacebookでシェアされ、あちこちに拡散されたんです。

──そこから100均アイテムやガンプラ(ガンダムのプラモデル)のパーツで作ったアクセサリーなど独自の製法でサイバーファッションを作り始め、SNSのフォロワー数も爆発的に増加。サイバーファッションモデルとして、衣装作りや体形維持など特に苦労したのはどんなことでした?

【斎藤ゆきえ】美大でたくさん勉強し、造形もやっていたので、衣装や小物を作る基礎があるとは思います。ただ、体型維持に関しては…自分ももう30代なので、かなり頑張ってキープしていますね(笑)。

──企業からオファーが来るようになったのは、SNSがきっかけだったそうですね。

【斎藤ゆきえ】Twitterのフォロワーが8千人を超えたあたりから、こちらからアピールしなくても企業からPRモデルのオファーが入るようになりました。イベント会場には、レースクイーンなどの事務所から派遣されてくるセクシーな格好のコンパニオンさんはたくさんいるけど、私のようにサイバーファッション特化型の人はいなかった。展示会の雰囲気とも親和性の高い近未来的な外観が人目を引き、そのまま武器になったんですよね。

――たしかに、目立ちそうですよね。

【斎藤ゆきえ】でも、SNSに自作のサイボーグ衣装の写真を載せるようになった最初の頃は、「身体を機械のように装飾するなんて、本当に手足が義手義足の人に失礼だ」というバッシングDMも来るようになって。その頃はフォロワーも少なかったし、下手に反応したらそれこそアンチの思うつぼになってしまう。知名度を上げたり大きな企業さんに使って頂いたり、結果を出すことで認めてもらうしかないと思い、自分の世界観を表現することに全力を注いでここまできた感じですね。

■パナソニック本社にコスプレで売り込み、失敗恐れない姿勢に社会のデジタル化が追い風

──社会のデジタル化で様々な分野でIT化やAI化が進み、 “サイバー”を連想させる要素が増えています。斎藤さんご自身でも、活動しやすい世の中になってきたなと感じますか?

【斎藤ゆきえ】そうですね。当初は、レースクイーン→レースのPRモデル、ラウンドガール→格闘技のPRモデルなどは認知されているけど、サイバーパンクは「そもそも何?」というのを一から説明しなければいけない大変さがありました。今でもまだ、知る人ぞ知るというジャンルですが、デジタル化が進むことでだいぶ動きやすくなったなとは思います。例えば今、オンラインイベントが増えたことによりカメラ機材などの需要が高まり、展示会でもどんどん新製品が出てきています。そのマスコットとして私はピッタリなので(笑)、そういう意味では時代が追い付いてきたのかなとも思うんです。むしろ、「サイバー系モデル」という肩書きを勝手に作って活動を始めた2017年の頃は、ちょっと時代の先を行き過ぎていたかもしれませんね(笑)。

──芸能界のオーディションに連続で落ちても、新しい分野を自ら開拓して、今や企業から続々とオファーが来るまでに。そこまでアグレッシブに動ける理由は何だと思いますか?

【斎藤ゆきえ】芸能活動に憧れてオーディションを受けまくっていたとき、エキストラとして行った現場で、ただの通行人の役なのに私だけワンシーンも使ってもらえなかったことがあるんです。でも、「まあ、そういうもんかな。じゃあ次!」と、すぐ切り替えられたのが良かったと思います。諦めがいいわけではなく、「ふふ、今に見てろよ~」という気持ちですね。

――不屈の根性ですね。

【斎藤ゆきえ】私のことを運が良かったと思う人は多いですが、決してそうではなく、自分で自分の背中を何回も押して、何度も失敗している。ものすごい数を撃って、その中で運よく当たったのが何発か…という感じなんですよね。例えば、大阪のパナソニック本社に自作のサイボーグコスプレ衣装を着て売り込みにも行きましたよ(笑)。でもそれで失敗したとしても、自分は何も失わないじゃないですか? 私自身のマイナスにはならず、現状維持なだけ。父も自営業をやっているおかげか、頑張ればどうにかなる!という確信が根底にあるんです。

──今は、多様性への理解を求められる時代です。自分のハンディキャップを個性として生かし、新たなステージを作った斎藤さんは、ある意味で多様性の象徴的存在ともいえますね。

【斎藤ゆきえ】私も外見や持病で差別を受けた人間なので、最初は「見返してやる!」という気持ちでした。でも、活動していくにつれて正しく評価されるようになってきてからは、「ざまあみろ」ではなく「同じ境遇の人の代表として、恥ずかしくないようになろう」と思ったんです。活動当初は正直、社会への復讐心もあったけど、欲しかったものを手に入れてみたら、いつしかそれが感謝の気持ちに変わってたというか。

――それは、素晴らしいことですね。

【斎藤ゆきえ】私の活動を見た同じ境遇の人たちから、「勇気をもらっている」と言って頂くことが多いんですが、逆に私が励まされていますね。いま、多様性が認められるようになってきた風潮は、すごくいいと思います。ただ、「身長が高い」「胸が大きい」という特徴は芸能界で喜ばれるのに、私のような「斜視」「エラが張っている」などの個性は受け入れられにくい。でも、「人と違う」という点では同じじゃないかと思うんです。人と違うことを敬遠するのではなく、人と違うことを生かせる世の中を、みんなで一緒に作っていけたらいいなと思います。

──そんな斎藤さんの、今後やりたいことや展望は何ですか?

【斎藤ゆきえ】かつての私のように、外見に影響を与える病気のせいで芸能活動を諦めている人たちに、私がファッションやメイクをプロデュースして、サイバーパンクの写真集を出したいです。そして私が今までやってきて成功したことを、同じ境遇の他の人も真似できるようにノウハウ化する方法を考えていきたいですね。

(文:川上きくえ)

(提供:オリコン)
斜視で悩んでいた斎藤ゆきえさん、サイバーモデルとして驚きの変貌(写真:本人提供)
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