【オリコンニュース】
飼い主入院、残された猫の運命は?
 少し前に、新型コロナウイルスに感染した男性が「猫がいるから」と入院を断り、死亡したというニュースがあった。コロナに限らず、いつ病気になったり、ケガをするかは誰にもわからない。ただそのとき、飼っている動物まで巻き添えにしてはいけない。猫のマロンは、ある飼い主が入院したことから、NPO法人『ねこけん』に保護された。“もしも”のときのために、飼い主にできることは? 代表理事の溝上奈緒子氏に聞いた。

【写真】「これはまさに“猫見知り”…」絶賛ひきこもり中のマロン、心を開いた瞬間

■1人暮らしの飼い主が突然入院、部屋に取り残された“猫見知りの”マロン

 『ねこけん』の預かりメンバー宅で保護猫生活を始めたマロン。だが、マロンはケガをしていたところを保護されたわけでもなく、虐待されたわけでもない。ある日、病院からかかってきた電話により、溝上氏が保護を決めた猫である。

 「実は飼い主が急きょ、精神科の病院に入院してしまって。病院から連絡があり、飼い主の方の鍵を渡してもらい、保護した猫なんです。最低でも1ヵ月、長くて3ヵ月の入院になると言われました。だから、飼い主本人に私たちも会っていないんです」。

 これまで、飼い主と2人…1人と1匹で生活をしていたため、マロンは人見知りならぬ“猫見知り”の猫だった。メンバー宅で生活を始めた当初は、ゲージからもなかなか出ようとしない。飼い主しか見たことのなかったマロンにとって、初めて見るほかの猫は未知の生物だっただろう。突然、飼い主と離れて心細くもあったに違いない。

 そんなマロンを出迎えたのは、臨月で保護され、そのあと腎臓病が発覚した猫「楓」と、石垣島からやってきた片目を病んだ「島美」だった。楓も島美も、決して無理に近づくことはしない。もしかしたら保護猫たちは、マロンの寂しさや悲しみを感じ取っていたのかもしれない。

 そんな周囲の見守りもあり、やがて恐る恐るケージから出てきたマロン。もともと、猫は好奇心旺盛な一面を持つ。飼い主と離れ離れになったとはいえ、虐待されたわけでも怯えるものがあったわけでもないマロンは、本能に逆らうことはできなかっただろう。優しく見守る先住メンバーたちの前でマロンは少しずつ、本来の元気を取り戻していった。

 少し前に、新型コロナウイルスに感染するも「ペットの猫の預け先がなく、入院したくない」と入院を拒否した男性が、自宅療養中に死亡したというニュースがあった。マロンの飼い主は精神科への入院だったが、猫が残されてしまう問題点は同じだ。

 猫を飼う際は必ず、猫を預かってくれる人の確保が必要である。一緒に住んでいる家族がいれば問題ないが、1人暮らしでペットを飼う場合、いつ何が起こるかわからないため、後見人は必須だ。最近では、飼い主に何かがあったときに、ペットを飼っていることを知らせるため緊急情報カードなども商品化されている。動物と暮らす人にとってはとても役立つアイテムだろう。

 「『ねこけん』では、自宅の扉前、入ってすぐわかるところに『ねこけん』の名前と連絡先、そして“私に何かあったらここへ連絡してください”という紙を貼ってもらえるよう案内を出しています。飼い主に何かあり、救急隊の方が、その張り紙を見て連絡をしていただけるように」。

 マロンを引き取りに行ったとき、家にはエアコンが付いていたので健康状態に問題はなかった。おそらく飼い主も、マロンに深い愛情を注ぎ、できる範囲のことを行ったのだろうことがわかる。

 「入院に何ヵ月もかかってしまえば、猫ちゃんを放置することもできません。ただその方は手持ちが2万円しかなく、ペットシッターさんに頼むこともできない。本人はマロンを手放す気はまったくないとのことですが、今後、同じ状況にもなりかねません。だから私たちとしてはマロンを保護させてもらえるよう退院したら説得するつもりです」。

 マロンにとっても、飼い主と幸せな生活を続けることが一番。しかし、今後も入退院を繰り返す可能性があるならば、勇気を持って『ねこけん』に保護してもらう選択もある。それも一つの愛情といえるだろう。大切な命を預かっているからこそ、猫が安心して暮らせる環境を整える責任が、飼い主にはある。いつか自分に起こってしまうかもしれない“もしも”のときのために。飼い主は、そのときに大切な家族である動物たちが困らないよう、準備をしておきたいものだ。

(文:今 泉)

(提供:オリコン)
入院した飼い主に取り残されたマロン(写真:ねこけんブログより)
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