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鉄拳、パラパラ漫画描き続け10年
 お笑い芸人で、パラパラ漫画家としても活躍する鉄拳。イギリスのバンド・MUSEの楽曲をバックに夫婦の半生を描いた『振り子』で世界的な注目を集め、その後も連続テレビ小説『あまちゃん』劇中アニメーションなど、数々の「パラパラ漫画」を発表してきた。一方で、「パラパラ漫画」への絶賛と反比例するように、ネタ披露の機会は激減。芸人として“いい人”に思われることへの困惑や葛藤もあったという鉄拳に、10年もの間パラパラ漫画に取り組んできた想いを聞いた。

【写真】素顔は? 鉄拳が『情熱大陸』で見せたノーメイク姿

■漫画家にプロレス、俳優も断念、すべての挫折が生み出した「鉄拳」という芸人

──もともと鉄拳さんは漫画家志望だったんですよね。なぜお笑いの道に入られたんですか?

【鉄拳】高校生の頃に「ちばてつや賞」をいただいたんですが、その後まったく賞に引っかからなくて、第2の夢だったプロレス団体に入ったんです。だけど、体が小さいからプロレスラーは無理だと言われて、次に劇団で芝居の訓練を始めたんですが、滑舌が悪くて諦めて。その頃ブームだった『ボキャブラ天国』を見て、絵を描くのは好きだし、フリップ芸だったらできるんじゃないかな? という軽い気持ちでライブに出たのがきっかけでした。

──昔から人を笑わせるのが得意だったんですか?

【鉄拳】いやー、クラスとかで笑いを取ってるのって明るいグループじゃないですか。僕は暗くて目立たないほうだったので、当時の同級生はお笑いの道に進んだことにびっくりしてます。

──「こんな○○は○○だ」のフリップネタでブレイクした時の心境は?

【鉄拳】笑いが取れたことよりも、イラストで何かやって認められたことがうれしかったですね。ちなみにメイクや衣装の元ネタはプロレスラーのロード・ウォーリアーズなんですけど、イカツい男が滑舌悪くネタをやることが面白がられたフシもあって。「鉄拳」という芸人は、それまで僕が挫折したものが全部合わさってできたようなものなんです。

■元来のブラックな持ちネタに「見損なった」の声も 次第にネタ番組にも呼ばれなくなり…

──パラパラ漫画でブレイクする直前に、芸人をやめようとしていたそうですね。

【鉄拳】2011年の震災の直後に、芸人の仕事が全体的になくなったんですよね。それでも僕は少ないながらもレギュラーはあったんです。だけど、周りにはものすごく面白いのに埋もれてる芸人もいっぱいいて、そういう人たちを見てたら自分が10年後にこの世界にいることが想像できなくなったんですよね。

──次に何をしようと考えていたんですか?

【鉄拳】特に決まってなかったですけど、田舎に帰ってのんびり仕事をしようかなあと。

──その矢先にパラパラ漫画で大ブレイク。ものすごい急展開でしたね。

【鉄拳】「振り子」の反響から、ちょっと異常なくらい仕事が舞い込むようになって。まあ、これも3年くらい続けばいいかなくらいに思ってましたけど、なんだかんだで10年経ちました。

──鉄拳さんのネタはブラックユーモアが持ち味でしたが、「パラパラ漫画」で世間から向けられる目線も変わったのでは?

【鉄拳】そうですね。"いい人"みたいに見られるようになって、それも困ったなあというか(苦笑)。ちょっとブラックな内容のスケッチブックネタをやったら、「見損なった」みたいに言われたこともあったので。

──ブラックなネタではなく、パラパラ漫画で鉄拳さんを知った人には驚かれてしまったと。

【鉄拳】かと思えば、昔のネタを知ってる人からは「お涙頂戴かよ」みたいに批判されることもあって、難しいなと。でも、基本的には反響というか、いろんなコメントをもらえることは確実にパラパラ漫画を描く励みになってましたね。

──パラパラ漫画でブレイク以降、テレビへの出演機会も増えたのでは?

【鉄拳】そんなこともなくて。単純に締め切りを守らないと怒られちゃうので、ネタ番組から声がかかっても断らざるを得なくなったんです。そのうち番組側も「鉄拳はもうネタをやらないんだな」と思われたのかどうかわかんないですけど、どんどん呼ばれなくなっていったんですよね。

──お笑いをやりたいというジレンマは?

【鉄拳】いやー、一時期はそんなことを考える余裕もないくらいの作業量だったので。みなさんムービーしか観ないので意外とご存じないんですけど、パラパラ漫画ってすごい時間がかかるんですよ。僕はコピーとかしないで全部手描きなので、ピーク時は1週間ほとんど外出できなかったくらいで。今はだいぶ落ち着いて1日30枚くらい、ちょうどいいペースで描かせてもらってます。

■新しい何かを探し続けた10年「パラパラ漫画も続くと思ってなかった」

──この4月に設立したYouTubeの新チャンネルでは、かつてのブラックユーモアのフリップ芸も披露されています。

【鉄拳】たぶん今の若い子は僕がネタをやってたことを知らないと思うので、ちょっとずつ観てもらえたらと。

──やはりネタをやりたい欲があったのでしょうか?

【鉄拳】ネタのストックはたくさんありますしね。パラパラ漫画だけじゃなくて、こういうのもやってますよ、みたいな感じで。あと最近はYouTubeチャンネルをやる芸人さんも増えましたけど、昔から仲の良かったゴー☆ジャスなんかはけっこう初期からゲーム実況をやってて、そんな稼ぎ方もあるんだなーと思いながら、締め切りに追われながらなかなかできなかったんですけど。

──バラエティ系のYouTubeにも興味があった?

【鉄拳】そうですね。ゴー☆ジャスに教わりながらいろいろやってます。まあ、そんな簡単に稼げるもんじゃなかったですね(苦笑)。でも、一人旅が好きなんですが、パラパラ漫画で忙しくてずっとできなかったので、YouTubeをダシに、全国をのんびり旅しながら旅先で絵を描いたりするのもいいなあと。今はちょっと緊急事態宣言とかもあってできないですけど。

──YouTubeでガッポリ稼ぐぞ、という野望を持って開設したわけでもなく?

【鉄拳】野望はないですね。もともとのんびりした性格で、仕事がすごい増えてもプレッシャーになってしまう方なので。でも今年はパラパラ漫画を描き始めて10周年なので、オファーでいただいた仕事のほかにも、何か記念作みたいなのを作れたらいいなあと、なんとなく考えてます。あとはやっぱり絵を描くのは好きなので、パラパラ漫画だけじゃなくて、1枚絵のイラストの仕事ももっといただけたらうれしいなと。

──今回のインタビューだけで"のんびり"というワードが3回出てきましたが、基本的にあまり焦らない性格なんでしょうか。

【鉄拳】焦ってもしょうがないというか、パラパラ漫画もこんなに続くとは思ってなかったけど、仕事がなくなったらなくなったで、描いてるうちにまた何か新しいものが見つかるんじゃないかなと思いながらやってましたね。結局、何も見つからないまま10年経っちゃいましたが、今もパラパラ漫画のお仕事は頂けているので、求められる限りはやり続けようと思っています。

(取材・文/児玉澄子)

(提供:オリコン)
「鉄拳チャンネル」を開設した鉄拳
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