【オリコンニュース】
「♪素材の会社はAGC」CMの真意
 広瀬すずが出演するCM『AではじまりCでおわる素材の会社はAGC/展開篇』や『AGCを知ってるかい?』が、「耳に残る」と話題になっている。AGC(旧・旭硝子株式会社)のCMと言えば、高橋一生が「なんだし、なんだし」と歌って踊るCMも印象深かったが、今回はさらにシンプルで、企業名を連呼するというもの。同社はB to B企業(企業間取引を主とする会社)であり、一般消費者をターゲットにしているわけではないが、それにしても扱う商品の説明もなければ、企業のイメージアップを図るような美辞麗句もない。昨今増加しているB to B企業のCMとは何のためにあるのか? 同社に聞いた。

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■社名を連呼し商品に一切触れず…、シンプルすぎるCMの裏にあった危機感

 CM『AではじまりCでおわる素材の会社はAGC』は、3月前期のCM好感度ランキングで3位を記録(CM総合研究所調べ)。AGCのCMとしては歴代最高であり、この結果に同社広報・IR部の山田彩乃さんは「正直、放映前は反応が読めない部分もありましたが、期待していた以上の反響でした」と喜びをにじませる。

 「シリーズ1作目ということもあり、どういう反応があるか未知数でした。社名を連呼しているので、もしかするとネガティブな反応があるのではないか…そんな懸念はありましたね。でも実際は、SNSで話題になったり、メディアにも多く取り上げていただくことができました。CMを観るためにわざわざAGCを検索してくださった方もたくさんいて、繰り返して観られている、飽きないCMになっていることをうれしく思います」(山田さん/以下同)

 過去には落ち着いたトーンのCMもあったが、路線変更したのには、ある理由があった。

 「2018年に、社名を旭硝子株式会社からAGCに変更しました。ところが、以前の社名のわかりやすさに比べ、ずいぶん認知度が下がってしまったんです。まずは以前と同じレベルで社名を知っていただきたい。そのためには、CMのメッセージを絞り込む必要性がありあました」

 しかし、せっかくのテレビCMである。もちろんタダではないし、同社の出稿量を思えば、莫大な金額がかかっているはずだ。そうなると、「もっと情報を入れたい」といった声が社内で起こらなかったのか。

 「広告主側には、伝えたいことがたくさんあります。ですが、CMの中にそれを全部入れようとすると、逆に伝わらないCMになってしまう。視聴者の方が消化しきれない情報量のCMでは、流す意味がないんですよね。もちろん、関係者の意見を集め、役員を含めて社内で議論もしました。ただ、意見を聞きすぎて“丸いもの”“響かないもの”にはならないようにと気を付けました」

 『なんだし、なんだし、AGC』シリーズでは、「スマホのガラスを作っている」など、多少なりとも商品について触れていた同社のCM。しかし、今作で伝えられているのは「素材の会社」「AGC」のみ。削ぎ落して、削ぎ落して、よりシンプルに。CMの裏側には、「AGCを知ってもらいたい」という強い思いがあったのだ。

■CMにもポリコレや価値観の変化、「丸くなりすぎず、メッセージを伝えるバランスは難しい」

 とはいえ、誰もがすぐに発言できるSNS時代。突飛で尖ったCMは、目立つがゆえに炎上の恐れもある。

 「もちろん、放送されるまでは『会社名を連呼しすぎかもしれない』という不安も少しありましたが、実際の反応を見て安心しました。30秒のCMではなく、15秒という短い尺だったのが良かったのかもしれません。無難で印象に残らないCMにはしたくないですが、一方で『炎上狙いでは?』と疑われることは良しとしません。また、昨今はポリティカル・コレクトネスの観点も重要ですし、今までとは価値観が変化してきた部分もあります。かつては許されてきたものでも、今は人を傷つけるものになってしまうかもしれない。そうした表現は避けたいと考えています」

 広告業界も、時代に合わせて変わっている。古典的なものでは、“母親が洗濯や家事をする”という表現が多かったが、現在では“役割の押しつけ”と捉えられ、避けられる表現となっている。

 「そうした意見、炎上を見ると、私たちでもハッとさせられることは多いです。人を不快にさせるかさせないか、しっかり感性を磨き続け、気付けるかどうかにかかっている時代になっていると思います。丸くなりすぎず、伝えたいメッセージを伝えるバランスはとても難しいですね」

 こうして生まれたCM『AではじまりCでおわる素材の会社はAGC』は、様々な工夫や思いが込められ、多くの人に届くものとなった。だが一つ疑問が浮かぶ。そもそも、一般消費者をターゲットとしないB to B企業である同社。CMによって社名の認知が高まったとはいえ、実際の売上に結びつくものなのか。山田氏は「すぐに業績には直結しないかもしれませんが、長期的には必ず貢献すると考えています」。

 「やはりまずは会社の認知が重要だと考えています。放映直後の効果としては、新しくAGCの社名を認知していただいたり、お取引先様との間で話題になったり、社員が自分の子どもから『お父さんの会社のCMだね』と言われ、うれしかったとの声もありました。社員のモチベーションアップにもつながっていますね」

 同社に限らず、昨今B to B企業のCMはとみに増加しているように見える。AGCと似た手法で社名認知を図る『日清紡』や『日野自動車』、企業が目指すところを描く『クボタ』、アニメのストーリーが印象的な『大成建設』。ほかにも、企業はもちろん働く社員へのアピールとも思える『ビズリーチ』『TISインテックグループ』なども、目にする機会が多い。なぜ、このような現象が起こっているのだろうか。

 「企業によって目的はいろいろあると思います。とにかくターゲットは広く、学生からビジネスパーソンまで認知を広げたいと考えるB to B企業が増えているのかもしれません。また、B to B企業は一般消費者とのつながりが薄いため、なかにはリクルート(人材募集)で苦労する企業もあるのかもしれません。そのため、リクルートの対象である高校生や大学生に、社名を知ってもらいたいという意図もあると思います」

■コロナ禍で変化する営業スタイルもフォロー、まだまだ強いテレビCMの力

 このコロナ禍では、従来の営業スタイルが難しくなっている。営業マンが出向き、直接営業することは困難となり、オンラインでの営業も増えた。CMが、そういった不便をフォローする一面もあるという。

 「実際、お取引先様との間でCMの話題が出て、盛り上がるということはよくあると社員からは聞いています。そういった一面もあるので、宣伝するなら幅広い層に向けたいと考えるのが当然。昨今、よく『テレビ離れ』と言われますが、私たちは、まだまだテレビの力は大きいと考えています。当社でもYouTubeや電車広告などさまざまな宣伝媒体を試していますが、やはりテレビとセットでなければ思うような効果が得られないように感じています」

 ただ、一般消費者がAGCのCMをいくら観ても、その商品を直接購入する機会はほとんどない。CMを打つことへの、費用対効果はどうなのだろうか。

 「短期的な効果として、当社が行っている生活者アンケートの中で社名認知度は確実に向上していることがわかっています。ただ我々の戦略として、短期で一喜一憂せず、AGCというブランドが長期的に定着・理解されているかを見ていくことも大切だと考えています。今は、社名を覚えてもらう最初のフェーズ。まず多くの方々に社名を認知していただき、次のフェーズでは深い理念や商品のクオリティの高さなども訴求したいです。B to B企業であるAGCにとってテレビCMとは、短期的な“効果”ばかりを求めるものではなく、未来への“投資”なのだと考えています」

(取材:衣輪晋一)

(提供:オリコン)
広瀬すずが出演、「耳に残る」と話題のCM
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