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【エール】最後に異例のメッセージ
 NHKの連続テレビ小説『エール』(月~土 前8:00 総合ほか※土曜は1週間の振り返り)は、26日放送の第119回で、多くの名曲を生み出した作曲家・古山裕一(窪田正孝)と妻・音(二階堂ふみ)の夫婦二人三脚の物語が完結。「第119回は、2つやることがあると最初から思っていました。一つは志村けんさん、もう一つは夫婦の終わり方」と、脚本・演出に携わった吉田照幸氏が本編最終回の裏話を明かす。

【写真】鏡越しに笑顔を見せる志村けんさん

■志村けんさん、鏡越しの笑顔のオフショットがあった奇跡

 第119回は、病に伏す音の療養ため、東京を離れて静かな生活を送っていた裕一のもとに、ある日、作曲家を目指しているという広松寛治(松本大輝)という青年が裕一を訪ねてくる。そして、東京オリンピックの後、裕一の元に届けられた、小山田耕三が亡くなる直前に裕一に宛てて書いた手紙を思い出す。

 小山田は、裕一が作曲をはじめるきっかけとなった日本を代表する西洋音楽の作曲家。裕一のたぐいまれな作曲の才能に気づき、コロンブスレコードに専属作曲家として推薦するが、一方で、裕一の活躍が自分の地位を脅かすのではないかと恐れていた。手紙は、裕一を西洋音楽ではなく、あえて流行歌の専属作曲家にしたことを懺悔(ざんげ)するものだったが、そのことが結果的にジャンルレスな裕一の活躍にもつながったともいえ、裕一は「感謝しかありません」と語るのだった。

 広松は「お元気なのに、なぜ曲を書かないのか」と、裕一に尋ねる。「人の力になる音楽をたくさん作ってきた」という裕一は、「私の役目は終わったんだ、次は君たちが担ってくれ」と、熱意ある若者に言葉をかける。「若い世代がまた新しい音楽を紡いでくれるよ」と、小山田、裕一、そして、若い学生へと、音楽の“つながり”が描かれた。

 回想シーンも盛りだくさんだった第119回の中で特筆すべきは、今年3月に亡くなった志村さんが、鏡越しに「子どもみたいにチャーミングな笑顔」を見せる初出しの映像があったこと。

 「最後に志村さんをどうやって出したらいいのか。もし天国に行くことができて、志村さんと再会できたら笑いについてお話したいな、と思っている僕の思いを台本に込めました。志村さんの初出し映像は、実際は現場でほかの人がNGを出した時に思わず笑っていた志村さんがたまたま映っていた映像で、編集担当が見つけてくれたんです。奇跡だな、と思うのはミラーショットじゃなかったら使えなかったかもしれないということ。鏡に映っている顔だから、思いを馳せることができる。本当に、偶然撮れていた映像なんです。志村さんは、本当に子どもみたいな笑顔をされる方で、それをこういう形で表現できて、みんなで頑張って、努力して、思いが詰まった作品ではこういう奇跡みたいなことが起こるんだな、と思いました」

■吹替なしで歌いきった二階堂ふみに感服

 学生が帰った後、病床の音が途切れ途切れに歌うのは、二階堂から出たアイデアだった。 

 「病床のシーンを撮影するに当たって、二階堂さんは食事制限をして、体重を落として役作りされていました。顔色の悪さや肌のカサカサした感じは、ある意味本物なんです。病床で音が歌うシーンは、僕が書いた台本にはなくて、二階堂さんご本人からの提案です。『歌いたい』と。あの途切れ途切れの歌で、彼女の病状の深刻さが伝わってくる。撮りながらいいアイデアがどんどん生まれていった、それが『エール』の現場でした」

 二階堂は、大河ドラマ『西郷どん』(2018年)でも劇中で奄美の島唄を歌い、感情を揺さぶるその歌声が話題になった。『エール』のヒロインオーディションでも、芝居の中で「気持ちを込めて歌える」ところが起用の決め手の一つになったと言われている。オペラの歌唱シーンは吹替えにすることも検討されたが、ひたむきに歌のレッスンに取り組む二階堂の姿を見た歌唱指導の担当者が「声質もいいし、いける」とGOサインを出し、二階堂自ら歌唱するシーンがどんどん増えていったという。

■窪田&二階堂から異例のメッセージ 最終回はカーテンコール

 「海が見たい」という音を裕一が支えながら、歩いていくと、足元のクローズアップに砂がまじり、GReeeeNのテーマ曲「星影のエール」のイントロとともに、出会った頃の姿の2人が海に向かって駆け出していく。タイトルバック映像のリフレインだが、実は10月上旬に撮影されたもの。

 「最後は海で撮ろうと決めていました。ある日、部屋を歩いているうちに砂浜に変わったら面白いんじゃないかと思って、やってみた演出です。撮影日は、この日1日だけで、予備日もなかったので当日の天気が快晴で本当によかったです。これも奇跡ですね。裕一と音を演じてきた、窪田さんと二階堂さんの2人からしか生まれないものがあると思ったので、カメラを極力遠くに置いて、走って行った先からはしゃいでいるあたりは何も演出せず、野放しで撮影しました(笑)」

 最後の最後、素に戻った窪田と二階堂が、「最後までご覧いただき本当にありがとうございました」と、メッセージを伝えるのは、朝ドラとしては異例のこと。スタッフ・キャストを代表して窪田が「世界中を未曾有の不幸が襲う中で、『エール』という名でドラマをやる意義を裕一を演じながら感じていました。少しでも観てくださる方の力にこのドラマがなれたのならば、スタッフ・キャスト一同、本当にうれしく思います。早く日常が戻ることを願って、(二階堂も一緒に)皆さん一緒に頑張りましょう」と、呼びかけていた。

 なお、あす27日放送の第120回は、NHKホールに人気キャラクターが集結して古関メロディーを熱唱する“カーテンコール”(特別編)を放送。物語のモデルとなった古関裕而さん作曲の名曲の数々をお届けする。

 「初回、原始人から始まっていろんな人を脱落させましたけど、ド頭でいままでないことをやるぞ、という決意表明ができたので、その後もいろんな試みができたのかなと思っています。最後がコンサートでも違和感ないかな(笑)。ほかの朝ドラではできないことだと思うんです。これだけ歌える人たちが出演していて、僕も『紅白歌合戦』をはじめ音楽番組の経験があって。何より、古関裕而さんにすてきな曲をありがとうございます、と伝えたいと思います」

(提供:オリコン)
連続テレビ小説『エール』第119回より。裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)夫婦二人三脚の物語が完結(C)NHK
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