小学5年生の息子がある日突然、いじめの「加害者」としてクラスメイトの保護者から訴えられた。子どものいじめ騒動に一家で向き合った実話を描いたコミックエッセイ『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』が話題を呼んでいる。「相手がいじめと受け取れば、それはいじめ」との考えを大前提に、謝罪から解決まで至ったリアルなエピソードと対処法は、知っておきたい情報が満載だ。著者の大原由軌子さんに話を聞いた。
【漫画】うちの子がいじめの加害者に…親はどう向き合う?「参考になる」の声も
■いじめる子は“問題”を抱えている場合が多い
──どんな「いじめ」があったのですか?
【大原由軌子さん】お掃除の時間に2日連続で遅れてきた友だちに、正座を強要し、掃除用具室に閉じ込めたと聞きました。後から知ったのですが、そのクラスの元担任が、正座で反省させるという教育方針を取っていたらしく、それが子どもたちの間でも浸透してしまっていたそうです。
──相手の保護者から、いじめの「加害者」だと言われたときの心境はいかがでしたか。
【大原さん】とにかくショックでした。どんな理由があったにせよ、「相手がいじめだと受け取れば、それはいじめ」というのがわが家の共通認識でしたから。そしてすぐに「私の子育てが間違っていたのだろうか?」という考えに至りました。
──ご自身を責めてしまったんですね?
【大原さん】というのも、実は以前、息子はいじめの「被害者側」になったことがあったんです。その際に相談した小児専門の精神科医の先生から、「いじめる子は、友人関係なり学校なり、そして家庭なり、何かしら問題を抱えている場合がとても多い」というお話を聞いていたんです。
──つまり、まずは家庭の問題として捉えたわけですね。
【大原さん】まだ原因がわからない段階でしたが、もし家庭に原因があるのなら、親が意識することでいい方向に変えられるのではないかと考え、まずは家庭に向き合うことからスタートしました。
■加害者・被害者・学校では難しい解決策 公的機関に“外部”の視点を
──相手に謝罪する際、とくに気を配ったことを教えてください。
【大原さん】先方に直接謝罪する前に、息子にも「実際、何があったのか」を聞きました。だけど、子どもというのは無意識のうちに、事実ではないことを口にすることもあるようなんです。それは必ずしも悪いことではなくて、未発達な防衛本能。つまり親に嫌われたくない、心配をかけたくないといった思いからしてしまう健全な行動なのだと、小児精神科医の先生もおっしゃっていました。ですから、まずは相手の言い分をすべて受け入れ、相手が納得するまで謝罪しようという姿勢でした。
──相手の保護者が、息子さんを“精神異常者”扱いする発言もあったそうですね。
【大原さん】はい。今振り返ってみると、「この問題とは関係ないのでは?」といった理不尽な言葉をたくさん浴びせられました。けれど、こちらにどのような言い分があっても、「加害者」と名指しされていたわけですから、強くは主張できませんでした。
──その後、学校とも面談されますが、なかなか解決に至らなかったようですね。
【大原さん】やはり学校は中立の立場でなければならないと思います。先生によっても対処はさまざまでしたし…。中には早く“面倒”を終わらせたいと思われたのか、声の大きい側の言い分だけを通そうとする先生もいらっしゃいました。そこで夫が「加害者・被害者・学校の3すくみになっていては解決も遠のくだけ。外部の客観的な視点を入れていこう」と提案してくれたんです。スクールカウンセラーや市の教育相談員といった公的機関に、学校と保護者の間に入ってもらうことにしました。
──息子さんとスクールカウンセラーとの面談は、とても効果的でしたね。
【大原さん】はい。第3者のプロの視点で、息子が“精神異常ではない”と判断してもらえたことは安心しました。子どもの世界ではよく起こり得るいじめだと説明も受けて、それもふまえて精一杯の謝罪を行いました。
■子の問題は家庭の問題 夫婦でしっかり向き合って
──息子さんとは、問題解決までのプロセスをどのように共有されましたか。
【大原さん】まずは「何があってもあなたを嫌いになることは決してない」と伝えました。そして叱るのではなく、「被害者も加害者も1人の生徒として、以前のような楽しい学校生活を取り戻せるよう、この問題を一緒に解決していこう」と夫婦で働きかけました。
──旦那さまの冷静な判断、毅然とした姿勢も問題解決の大きなカギだったようです。
【大原さん】私がひたすらオロオロしていたので、そこは本当に助けられましたね。子どもに問題が起きると「お前がちゃんと子育てしないからだ」と責める旦那さまも少なからずいると聞きます。だけど、子どもの問題は突き詰めれば家庭の問題。世の旦那さま方にはどうか、共に問題に向き合ってくださいとお伝えしたいです。
──シングルの場合はどうでしょうか?
【大原さん】どなたか親族に助けを求めるのもいいですが、やはりわが家のケース同様に公的機関に介入してもらうことをおすすめしたいですね。
■日々の簡単なメモが、問題解決の大きな助けに
──同じような問題に直面している親御さんにアドバイスするとしたら?
【大原さん】私は家族をテーマにしたエッセイ漫画を描いているため、その日の出来事を常にメモに残す習慣があったのですが、この件に関しては、相手の保護者の方が口にした言葉についてもできる限り、その場で記録を取るようにしていました。これが、学校や公的機関との話し合いを、冷静かつスムーズに進めるのにとても役立ったんです。
──感情が高ぶっているときこそ、文章にすることで気持ちの整理ができそうですね。
【大原さん】まさに専門家の方もそうおっしゃっていました。子どもがいじめをしていると言われたら、母親はパニックになります。だけどたとえば1日の終わりに少しだけ気持ちを鎮めて、そして簡単なメモでもいいので毎日記録したものは、必ず早期解決の大きな助けになるはずだと実感しています。
(文/児玉澄子)
(提供:オリコン) |
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『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』より(C)文春e-Books/文藝春秋 |
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