【オリコンニュース】
ざんねんないきもの、ヒットの裏側
 「ラッコはお気に入りの石をなくすと、ごはんが食べられなくなる」「ワニが口を開く力はおじいちゃんの握力に負ける」「ミジンコはピンチになると頭がとがる。しかし、ほとんど効果がない」など、生き物の“ざんねん”な部分にフォーカスした「ざんねんないきもの事典」シリーズ。児童書として異例のヒットを記録し、NHK Eテレでもアニメ化され、初版から4年経った今も人気を伸ばしている。もともと「本が苦手な子向けに作った」という本書に隠された工夫と込められた思いを高橋書店の山下利奈さんに聞いた。

【画像】「キリンは長い舌で鼻くそをほじる」ほか、“ざんねんないきもの”集

■25万人の小学生の投票で1位に 当初はタイトルの『ざんねん』に反論の声も

5月に発表された、25万人の小学生の投票による「小学生がえらぶ!“こどもの本”総選挙」では、シリーズ第1弾『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』が2回連続1位を獲得。10位には人気漫画『鬼滅の刃』のノベライズ『鬼滅の刃 しあわせの花』が入っていたが、それを凌ぐ5.6.7位に『ざんねんないきもの事典』シリーズ他全書がランクイン。“本離れ”が囁かれる現代に子どもたちの心を掴むその理由とは。

――改めて、「ざんねんないきもの事典」シリーズの企画のきっかけを教えてください。

これまでの図鑑は、生き物がいかにすごい能力をもち、工夫を凝らして生きているか、その“すごさ”にスポットが当てられることがほとんどでした。弊社でもそのような図鑑を出していたのですが、それらの情報を調べていくなかで、そんな“すごい生き物”のなかにも「どうしてこうなった!?」と、思わず突っ込みたくなるような一面があることに気付きました。そして、この突っ込みどころは、生き物好きの子どもにとって、たまらなくおもしろいのではないかと考えたのがきっかけです。

――初版から4年が経った今も第1弾の人気が続いていますが、出版当初の反響はいかがでしたか。

出版当初から好調な売れ行きではありましたが、じわじわと広がっていったようには思います。実際に本を見た書店員さんがおもしろいと思ってくれて店頭での展開が広がり、たくさんの人の目にとまるようになり、そして本を読んでくれた人がそれを友達に紹介する……という、良い輪ができていきました。そのような売れ方をしてくれたので、第1弾の発刊から時間が経った今でも、どんどん読者が広がっていってくれているのだと思います。

――その後アニメ化もされ、「ざんねんないきもの」が、言葉通り“ざんねん”ではなく、各所で良い意味で捉えられているように感じます。

もともと「ざんねん」というのは、我々としては決して否定的な意味ではなく、生き物への愛情や尊敬の気持ちをもって付けています。「ざんねん」と付けるまでには、社内でも賛否両論、むしろ否定の方が多くありました。しかし、「頑張っているんだけど、なんだかちょっとざんねん」「そんなざんねんな部分があるからこそ、愛おしい」そんな生き物達の姿を本書では紹介したいと考えています。それは読者の方々にも伝わり、「生き物のことがますます好きになりました」という声もたくさん届いています。

■生き物好きの子どもだけでなく親子3代で楽しめるテーマ性と情報の正確性

――5月には第5弾が発売されましたが、数年に渡ってシリーズ人気が続いている理由はどのようなところにあると感じますか。

まずは、「生き物というテーマ自体の魅力」。年齢・性別問わず、みんな生き物が大好きなのだということを感じます。そして、生き物にはまだまだ私たちの知らないことがたくさんあり、5冊出た今でも新しい情報を紹介できるという、奥深さもあると思います。その中でも、本書は、ただ文章を読むだけでなく、そこで得た知識を動物園や水族館で確認したり、親や友達に自慢したり、クイズを出し合って遊んだりと、さまざまな楽しみ方ができること。そして、子どもだけでなく、お父さん・お母さん、おじいちゃん・おばあちゃんまで3世代に渡って楽しめるところも、今までの児童書と違う点だと感じます。

――“ざんねんないきもの”はどのように見つけられていますか。

チーム総出で、さまざまな手段で探しています。監修の今泉先生にお話を聞くのはもちろん、さまざまな文献をあたり、おもしろそうな記事があればそれを深めて追っていきます。動物園や水族館に足を運ぶこともあります。間違った情報が混ざっていることも多いので、真偽の確認は慎重に行っています。

――動物だけでなく、植物なども掲載されてますよね。

生き物のことをもっと知ってほしいという思いから、第2弾では「恐竜」、第3弾では「植物」、第5弾では「野菜」や「細菌」と扱う種を増やしてきました。小学生がメイン読者なので、動物園などにいるメジャーな生き物がたくさん入るようにはしていますが、その一方で、日本にはいない生き物や珍しい生き物なども紹介するようにしています。例えば「サバンナモンキー」や「ニュウドウカジカ」などは、そんなに有名な生き物ではありませんが、本書で取り上げたところ大好評でした。

――制作担当者様のお気に入りの“ざんねんないきもの”を教えてください。

「ざんねんないきもの」の常連は「リス」です。第1弾では「シマリスのしっぽはかんたんに切れるが、再生はしない」、第2弾は「リスはドングリをうめた場所をすぐに忘れる」、第3弾は「リスはほお袋で食べ物がくさって病気になる」というように、同じ生き物でもたくさんのざんねんをもっているのです。個人的に好きなのは、第4弾で紹介した「クアッカワラビーは神対応すぎて心を病みがち」です。私も本書の制作で初めてこの生き物のことを知ったのですが、画像を検索したところ、本当にかわいくて、思わずパソコンのデスクトップ画像にしてしまいました(笑)。クアッカワラビーに会いに行くのが個人的な夢です。

――特に反響の大きかった“ざんねんないきもの”を教えてください。

読者の方にアンケートを取っているのですが、それぞれの巻での一番人気は以下の通りです。

第1弾では「ワニが口を開く力はおじいちゃんの握力に負ける」
第2弾では「ラッコはお気に入りの石をなくすと、ごはんが食べられなくなる」
第3弾では「リスはほお袋で食べ物がくさって病気になる」
第4弾では「カラスは頭がいいのに、やることはバカ」
第5弾では「トラはぬいぐるみが落ちているだけで道を変える」
これはネパールで本当にあった話だそうで、強くてかっこいいトラのイメージとのギャップに驚く読者がたくさんいるようです。

■生き物へのリスペクトとユーモアを持って伝えることのバランスの難しさも

――制作において気を付けていることがあれば教えてください。

タイトルこそ「ざんねん」と付けていますが、決して生き物のことをバカにするようなことはないように気をつけています。一生懸命生きている生き物たち、そして私たち人間には計り知れない生き方をしている生き物たちに、つねに尊敬の念をもって、紹介の仕方を考えるようにしています。それと子どもにとって分かりやすくおもしろい文章との両立には、いつも頭を悩ませています。また、本書は写真ではなく、親しみやすいイラストを採用しているのですが、このイラストも、実は写真資料などを何十枚も見た上で描いてもらっています。体の色、足やしっぽの付き方など、細かいところにも気を配っています。

――大きな絵や文字でわかりやすい印象を受けますが、現代の子どもたち向けな“一目でわかる”といった点も意識されているのでしょうか。

「ざんねんないきもの事典」シリーズは、もともと本を読むのが苦手な子に向けてつくった本です。なので、文字量も最低限に、小学生でもイメージしやすい例え表現もたくさん盛り込みながら、サクサク読める工夫をしています。1~2ページ完結なので、どこから読んでも、そして何巻から読んでもOKです。「いままで本をまったく読まなかった子が、この本は自分から進んで読んでいる」との声をたくさんいただけています。

――「ざんねんないきもの事典」シリーズを通して、どんなことを伝えたいですか。

“ざんねんないきもの”は、この本に載っている以外にもまだまだたくさんいます。そして、生き物については、まだ分かっていないこともたくさんあります。みなさんも動物園や水族館、自然に出かけて、“ざんねんないきもの”を探してみてください。そして、他の本なども読んで、生き物のことを調べてみてください。また、私たち人間にもたくさんのざんねんがありますし、みなさんにも苦手なことはあると思います。ざんねんないきものたちの生きざまを見て、「ぼくと一緒だな」と共感したり、「これでもいいんだ!」と励まされたり、「自分も頑張ろう!」と勇気をもらったりしてもらえたらうれしいなと思います。

(提供:オリコン)
当初は「本の苦手な子向けに作った」という『ざんねんないきもの事典』(高橋書店)
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