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『あな番』SNS時代の王道ミステリー
 田中圭と原田知世が「15歳差カップル」役でW主演を務める、サスペンスドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)。日本テレビでは25年ぶりの2クール連続放送となる「意欲作」だった。しかし、放送開始前の注目度の高さに対し、前半の第1章では視聴率において苦戦を強いられてきた。

【写真】西野七瀬ら『あなたの番です』キャスト陣のソロカット

 実際にドラマを観てみると、「交換殺人ゲーム」というテーマの目新しさを除くと、ストーリー展開などは実に王道のミステリーとなっている。また、視聴者の間では、後半にかけて着実に盛り上がりを見せているし、視聴率も第9話では、6%台だった前4話から8.0%へと上昇している。では、なぜ苦戦の様相を呈したのか。第2シーズンを前に、その理由を考え、第2シーズンからの楽しみ方を改めて考えてみたい。

■苦戦の最大の理由は「2クール連続」のハードルの高さ

『あなたの番です』が苦戦した最大の理由は、いちばんの売り文句であった「2クール連続」がイメージさせるハードルの高さにあったのではないだろうか。例えば、分厚いミステリー小説を目の前にしたとき、ミステリー好きは手強さを感じてワクワクする。その一方で、普段ミステリーや、小説そのものを読み慣れていない人は、分厚さだけでウンザリしたり、尻込みしたりして、手に取らないことは多々あるものだ。

 2クール続く『あな番』には、そんなミステリー好き以外の人にとって「めんどうくさそう」という印象があったのではないだろうか。当然ながら、近年の連ドラの主流となっている「1話完結」スタイルでないことも、「入りにくさ」には影響している。同スタイルは、見逃してもかまわないし、途中からでも入りやすいメリットがある一方、クライマックスにかけて積み上げられていくカタルシスが得られにくいデメリットがあることは、よく指摘されている。

 まして『あな番』のようなミステリーの場合、毎回はじめの部分で振り返りがあるとはいえ、初期設定を把握していないとついていけないし、1話見逃してしまうだけでも、わからなくなってしまうことが多い。しかし、「途中から入れない」「見逃せない」からこそ、見続けている人にとっては回を重ねるごとにおもしろくなっていくのは、ごく自然なことだ。

 また、「人がたくさん死に過ぎる」ことに抵抗感を示す声も多数ある。これはちょっと意外だったのだが、『あな番』について「怖すぎる」という声が多いこと。

 確かに、登場人物たちの意外な裏の顔が垣間見えたときにはゾッとする怖さがあるし、役者さんたちの狂気の演技に鳥肌が立つこともある。しかし、死亡フラグの立ち方や展開そのものは、意外と王道だ。「グロい」という声もあるが、70~80年代に放送されていた数々の怪奇&恐怖番組を親しんできた層にとっては、おそらく「グロい」という印象はあまりないに違いない。思うに、「怖さ」と「辛さ(からさ)」は、感じ方の個人差が著しく大きいもので、好きな人は相当に強烈な刺激を求める一方で、苦手な人は一切受け付けない部分もあるのだろう。

■登場人物37名、把握しきれない多さ

 そして、「入りにくさ」の大きな原因には、キャストの多さも挙げられるだろう。公式サイトに出ている登場人物だけで、なんと37名。キャッチコピーに「毎週、死にます」を掲げている通り、第9話を除いて毎週登場人物が死んでいく流れだが、最初のうちはとにかく人数が多すぎて、把握できない。

 登場人物がどんどん死んでいくアガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』ですら、8人の招待客と2人の召使との10人でスタートしていることを考えると、明らかに多い。多くのミステリーでは、後半に向けて、登場人物の背景が少しずつ見えたり、全貌が浮かび上がったりして、どんどんおもしろくなってくる。

 その点、『あな番』の場合はどんどん人数が減り、それぞれの人物像も浮かび上がり、おもしろくなってくる一方で、謎は解決するどころか、ますます深まっていく。しかも、心に引っかかる、思わせぶりな小道具や演出も実に多い。明らかにミスリードだろうと思っていたものが、意外にそのままだったり、その逆もあったりで、翻弄されてしまう。

 ただでさえ、登場人物の多いミステリーは、人物像や関係性を把握するまでに時間がかかるため、何度も戻ってみたり、疑問点が出てくると確認したりしながら読むことが多いもの。まして登場人物や小道具、演出などの伏線の多い『あな番』の場合は、録画や配信で繰り返し観ることが必要になる。

■能動的に向き合うことで楽しみが得られる、SNS時代のミステリードラマ

 おまけに、ネット上では、謎解きの好きな人たちによる「考察」が盛り上がっており、それらを観てから改めてドラマを観ると、新たに気づかされる点もある。非常に細かなチェックや、鋭い観察力に唸らされるときもあれば、ときには深読みしすぎの「考察」のほうが実際のドラマよりもおもしろくなってしまっていることすらある。

 今のドラマの主流になりつつある、ユルく楽しむ「ながら観」スタイルには向かないどころか、何度も観直したり、視聴者たちの「考察」をのぞきに行ったりと、手間がかかることこの上ない。しかし、何度も観直したり、視聴者の「考察」をチェックしたりと、手間をかけて作品と能動的に向き合うことで、本当の楽しみ方が得られるのは、SNSや配信が浸透している現代のミステリードラマならでは。

 第2章では、毎週誰か死ぬ展開はなくなり、第1章の数々の「伏線」が回収されていくという。「ながら観」ではなく、しっかり向き合って観るタイミングとして、第2章からのスタートは決して遅くない。
(文/田幸和歌子)

(提供:オリコン)
日曜ドラマ『あなたの番です』(C)日本テレビ
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