【オリコンニュース】
まるで猫の組体操? その背景は
 まるで「シルク・ドゥ・ソレイユ」みたい…。これは、NPO法人『ねこけん』で保護された猫たちのこと。ケージの上でおかしな体勢を取る様子はとてもユニークだが、実はそこには悲しい理由があった。『ねこけん』代表理事・溝上奈緒子氏に事情を聞いた。

【写真】「なんでそうなった⁉」アクロバティックな猫たち、不遜な面構えの“タキシードくん”も

■14匹の多頭飼育崩壊、飼い主は90歳過ぎのおばあさん

 白黒ばかり、同じような模様の猫たちが、ケージの上でおかしなポーズをとっている。『ねこけん』ブログにはその様子が紹介され、この猫たちがいる保護部屋を「シルク・ドゥ・ソレイユ部屋」と呼んでいる、と綴られていた。猫たちは手や足の使い方がとてもユニーク。さらに、模様から「タキシードくん」と呼ばれる猫は、面構えまで特徴的だ。

 だが、この猫たちがこのようなユニークな格好をしているのには、ある理由があった。それは、「人馴れしていないから」。なぜ慣れていないかといえば、多頭飼育崩壊から救い出された猫たちだったからだ。

 「もともと、この猫たちを飼っていたのは90歳を過ぎたおばあさんでした。先に『虐待なのでは?』と周辺住民からの連絡があり、私たちがおばあさんに会いに行ったんです」

 おばあさんの家では、アパート3部屋に実に14匹の猫を飼っていた。だが、おばあさんに猫への愛情がなかったわけではない。猫を譲渡したこともあったそうだが、譲渡先で虐待を受け、人に譲ることが怖くなってしまっていたという。

 「猫たちは不妊・去勢手術もされていませんでした。でもそれはおばあさんのせいではなく、体力的に猫を捕まえることができなかったせいなんです。おばあさんは手術する気はあって、何度も病院を予約していた。でも、いざ連れて行こうとしても、走り回る猫たちを捕まえることができない。予約してはキャンセルすることを繰り返しているうちに、不妊・去勢されていない猫たちがどんどん増えていってしまった、ということなんです」

 おばあさんに虐待の意志はなかったとはいえ、猫たちにとってみれば、そのアパートは劣悪な環境だった。掃除は行き届かず、清潔なトイレもない。飲み水すら緑色に濁っていたような状態だったという。

 「この子たちを幸せに大切にしてください。良いところへ行かれるようにお願いします」。そう『ねこけん』に依頼したおばあさんが保護費用を出し、『ねこけん』ボランティアメンバーの奮闘で、全頭が保護された。

 こうして『ねこけん』のシェルターに保護され、やっとひと時の安住を得た猫たち。当初は走り回り、逃げ回り、部屋があっというまにグチャグチャになってしまうような状態。

 「すぐに部屋の隅、ゲージの上など人から距離のある場所に行き、何匹かで組体操をしているような体勢になります。これはきっと、人が怖くて、少しでも人から離れようとしているから。だんだん慣れてくるとは思いますが、お世話が行き届かない環境で生きてきたからこそ、そんな状態になっているのだと思います」

 一見、面白おかしいように見えた猫たちの様子だったが、その背景には悲しい多頭飼育崩壊があった。だが、これからはひどい環境で暮らすこともない。人を恐れる必要もない。ゆっくり、少しずつでも、猫たちはいずれリラックスし、無理な体勢をとらなくなるだろう。いつか新しい家族に出会い、思う存分甘える幸せを味わってほしいものだ。

 ブログには、「『かわいい』『かわいそう』だけでは救えないこともあるのです。新たな飼い主を探すこともまた愛情の一つだと思うのであります」と書かれている。許容量を超えた飼育は、人も動物も幸せにはしない。手遅れになる前に行動し、SOSを出す。動物を飼育するのであれば、お互いが不幸にならないためにもそうした心構えが必要だろう。

(提供:オリコン)
組体操のような体勢の理由は?(写真:ねこけんブログより)
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