【オリコンニュース】
indeedが仕掛けるSNS戦略
 求人情報『Indeed』の企業アカウント「JOYとナタリー博士 by Indeed」が投稿したつぶやき「社内報を漫画雑誌っぽくしてみると俄然読みたくなる」が、「社内報をここまで面白くするのは天才」「声出して笑った」「元ネタがわかる絶妙さ」など大きな反響があった。同アカウントにはそれ以外にも週刊誌の中吊りをパロッた社報が投稿されており、これはアサヒビールの公式アカウントから模倣させてくれとの声がけがあり、そちらも反響が。そこには『Indeed』の会社理念とほかに、炎上と隣り合わせのSNS時代ならではのマーケティング戦略があった。

【画像】「社内報が読まれない」たどりついた答えがこちらでした…週刊誌中吊り広告風の社内報

■ただバズるだけでなく、誰が情報を拡散してくれるかも重要

 同投稿は漫画雑誌の後ろの方によくある連載陣の紹介と作者コメントのページをオマージュしたもの。有名漫画のタイトルをそれと分かるようにモジってあり、「かぶぬし様は億らせたい~天才たちの経営頭脳戦~(経営企画室)」「けいひ1/2(経理部)」「企画の刃(企画部)」「転送したらスパムだった件(リスクマネジメント部)」「フォトショの奇妙な補正(制作部)」などキレがある。それだけではなく、欄外に小さな文字で「※今週の『ハンダーハンダー(技術開発部)』は休載いたします」など、某人気漫画をメタ的にいじったものもあり、「よくぞこんな細かいところまで」と称賛されている。

 この反響について同社のマーケティング担当者は「フォロワーの外にまで広がり、多くの人に目にしてもらうことを望んでいたので本当に良かった」と喜びをにじませる。「制作しているチームメンバーもうれしがっており、さらに今回の現象に目を向けてみると、今回は、有名漫画家の方々にリツイートされたことも非常に大きいと感じています」

 バズは、いわゆる“インフルエンサー”から発信されることが主なきっかけの一つ。だが今回は、漫画雑誌ネタを、有名漫画家がリツイートしてくれたことで、同社が伝えたかった“文脈”の中で拡散。企画意図と似た方向性でのバズは単なる拡散の総量では測れない効果があり、投稿を目にした一人ひとりの受け取る情報量が多い…端的に換言すれば“より面白がってもらえる”ということを意味する。

 企業と生活者とを繋ぐメディアは大きく3つに分けられる。広告など金銭を払って購入するペイドメディア、ホームページなど自身で所有したものを指すオウンドメディア。活動した結果得られる評判や口コミをアーンドメディアと呼ぶ。「この反響はアーンドメディアに含まれますが、拡散された結果、今回のようにメディアの方に取材していただけるなどの副次的効果もある。メディアとのリレーションにつながる活動は我々も望んでいることです」

■何が炎上するか分からない時代、「常にユーザー目線でどう捉えられるのかを意識」

 同アカウントで話題になったものと言えばほかに、ビジネス用語の「あいうえお表」や駅の路線表に見立てた「確定申告線」などがある(なかなか確定申告が進まないあるあるネタ)。ほか「付箋ピアス」など職場にあると便利なグッズの提案など、クスッと笑えて仕事に役立つ情報が多い。そんな同アカウントのコンセプトを聞くと「日々の仕事をちょっと楽しく」だそうだ。

 「実は弊社の企業アカウントは別にもあり、そちらでは企業情報を、そしてこちらではこうしたネタ的な情報を発信しています。弊社は求人検索エンジンの会社ですが、世の中には仕事を探している人ばかりではない。例えば、履歴書の書き方を発信しても、すでに働いている人には興味がない情報になってしまうわけです。なので普遍的に仕事にまつわる情報やネタを発信。いざ仕事を探す時に弊社を思い出してもらえるようなコミュニケーションを目指しています」

 ここにはSNSに付きものの炎上対策もある。特に昨今はコロナ禍であり、発信する情報やネタに関しても「今はそれどころじゃない!」と、職種にはよるが、心の余裕がそこまでない人も多い時代であるはずだ。だからといって、炎上対策のために、「普遍的に誰にも当てはまるような楽しい情報やネタ」を提供しているわけではない。ミッションとして掲げる「We help people get jobs」のもと、「あらゆる人々」の仕事探し・就業を応援したいという想いから、さまざまな人に楽しんでもらえるコンテンツを提供し、それが結果として炎上対策にもなっている。とはいえ、炎上と隣合わせのネット社会であることもあり、「日頃から弊社に好意を持ってもらうよう、SNSユーザーとのコミュニケーションを重視しており、常にユーザー目線でどう捉えられるのかを意識している」とネット展開での難しさも語る。

 ところで昨今ネット上は、ブラック企業問題が辛辣に取り上げられていたり、「○○ハラ」など多くの被害者の悲痛な声が散見される。また逆に「○○ハラ」の規制が行き過ぎて息苦しいと感じる声もあり、仕事に関してはネガティブで否定的な書き込みが比較的多いのが現状だ。そう考えると同社の「日々の仕事をちょっと楽しく」というテーマや同アカウントの情報は、ネットというメディアの現在のアンチテーゼになっているようにも感じる。

 「そういった社会問題の解決など、このアカウントではそこまで大きな信念を掲げてPR活動をしているわけではありません。あくまでも『日々の仕事をちょっと楽しく』。ですが、日々の仕事をする上で、辛いと感じてしまったり、楽しく働けないような瞬間にある方々にも、もしこのテーマが届けられているのだとしたら、それはうれしく思います」

■「バズったからといってシリーズ化するなどの戦略はとらない」“右脳の感性”を大切に

 ちなみに、こういった秀逸なアイデアはどのようにして生まれているのか。同担当は「さまざまな職種や場所で働いている人のことを想像しつつ、日々の仕事や生活を改めて捉え直すようにしている」と説明する。

 「制作チームのメンバーは日頃から“なにか面白いことないか”という別の脳を働かせていると言っていました。車で例えれば常にアイドリング状態。そうすることでちょっとした発見が無意識下でインプットされることがある。会議でディスカッションをするうちに、そのアイデアがふと蘇り、会議が盛り上がったりもする。そのためにはカッチリとした会議ではなく、あくまでも談笑のような空気を流しておくのが重要なんです」

 まさに投稿ネタや情報を探っている人たち自体が「日々の仕事をちょっと楽しく」を体現しているような環境だ。またカッチリ決め込まないのは発信するネタでも同様。

 「他にもいろんなジャンルのネタや情報発信が弊社アカウントにはありますが、これがバズったからシリーズ化するとか、メインにするとか、そういったカッチリ決めた戦術は採っていません。左脳でガチガチに“このネタがウケるから月に何本”と決めるより、右脳の感性に頼った方が良い結果が生じることもあるのです。今後も時勢を見ながら、その時々に必要な情報、適した表現で継続していきたい」

 近年のマーケティングは、LGBTQや国籍・性差別など社会問題に取り組んでいることを発信し、それによって会社の認知向上、イメージアップ、株価の上昇を見込むのがトレンドだ。だが、単にトレンドに乗った短絡的な戦略では“無責任な投げっぱなし状態”になってしまう。同社の成功を引き合いに、今一度、自身を、そして自社をPRする際のアプローチを見直すことも大切なのかもしれない。

(取材・文/衣輪晋一)

(提供:オリコン)
「芸が細かい」と話題の週刊少年漫画の目次風社内報(画像提供:JOYとナタリー博士 by Indeed)
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