【オリコンニュース】
あざとい?ジェラピケ愛される理由
 コロナ禍でアパレル産業が軒並み苦戦する中、ルームウェア市場は拡大を遂げた。各社が参入し、競争が激化する中、ルームウェアブランドの先駆け「gelato pique」はECサイトの活用やゲーム『あつまれ どうぶつの森』 とのコラボ等で話題を呼び、更なる人気を伸ばした。“もこもこ部屋着”の大ヒットから10年余り、日本を代表するルームウェアブランドとして地位を確立し続ける秘訣とは。“今求められる部屋着”を聞いた。

【写真】「可愛すぎる」とネットで話題を呼んだジェラート ピケ×あつ森 つぶきち&まめきちなど全32型登場

■“寝るため”ではなく“楽しむため”に 下着もパジャマもコーディネートを考える新市場を創出

 ルームウェアに特化したブランド「gelato pique(ジェラート ピケ )」は、レディースファッションブランド「SNIDEL」「FRAY I.D」やコスメショップ「Cosme Kitchen」など、人気ブランドを多数展開するマッシュホールディングスが2008年に立ち上げた。当時パジャマにお金をかける習慣が浸透していなかった日本で、家でしか着られないような特別感が味わえる独自のおしゃれを提示し、“ルームウェア”という新たなファッションを生み出した。

 同ブランド立ち上げメンバーの豊山YAMU陽子氏は、当時パジャマはファッションの“脇役”だったと語る。

「初めは『インナーのラインナップがもっとあればいいのに』というお客様のお声がきっかけでした。スタートした当時は、パジャマは百貨店で上層階の寝具売り場の辿り着きにくい場所にコーナーが設けられていたり、ファッションビルでも下着コーナーは一角のワンラックほどしかなくて、パジャマはパジャマ、下着は下着、と明確に分けられていたんですよね。もっとお家の中のファッションを楽しんで欲しいという思いで、インナーとパジャマの間となるルームウェアをつくり始めました。勉強や仕事で疲れて家に帰ってきて、着替えるのが面倒くさいなっていう時間を『今日はなに着よう!』って高揚するような特別な時間に変えたかったんです」

 豊山氏の思いは予想以上に早く、ファッション好きな女子達に届いた。“寝るため”ではなく、“楽しむため ”に作られたジェラート ピケは、ルームウェアとして新たなファッションジャンルを確立し、瞬く間に大ブームとなったのだ。

「ブランドをスタートした2008年は、リーマンショックの影響から経済危機に陥った時代背景もあり、家の中で過ごす時間が増えて『巣ごもり』や『家ナカ』といった言葉が生まれた時期でした。そんな中でのジェラート ピケのフックたるや、すごかったですね。ブランドのコンセプトやプライス、全てが世の中の状況とリンクしたんですよね。色んな方の生活の中に入り込みやすかったんだと思います」(豊山氏/以下同)

■独自の手触りとデザイン誕生の裏側「商品企画の会議にはみんなお腹を空かせてくる」

 ジェラート ピケの代名詞といえば、”もこもこ部屋着”。女性のみならず、男性にも人気を博した独特の手触りとデザインはどのようにして生まれたのだろうか。

「『ジェラート ピケ』を直訳すると“アイスの生地”という意味になるのですが、口の中に入れたらふわーと溶けてしまいそうなアイスの生地を手の感触で表現してみた結果、あのファブリックが完成したんです。今でも、商品開発において“食べてみたい”という感覚を大切にしていて、商品企画の会議でもみんなお腹を空かせてくるんです。例えば、『美味しそうなチョコレートの色!』『冬だしもうちょっとシナモン効かせたいな』『春だから柑橘の爽やかな酸味が欲しいね』といった会話から商品が生まれています」

 ファッション業界の常識を覆した“もこもこ部屋着”だが、しばらくすると、やはり例に漏れず一大ブームは落ち着く。ジェラート ピケの部屋着は、着れば可愛く見えることが全女子に浸透した結果、一部で「あざとすぎる」という見られ方をされることもあった。

「時代が移り変わっていくのと同時に、衣食住のトレンドも変化していきますよね。住で言えばマンション事情も大きく変わったり、食であればグルテンフリーが注目されたり。その中で、今のトレンドやお客様の気持ちと、衣食住のバランスをどう取っていくかという部分は常に意識をしてきました。もちろん決して変わらない部分や、デビューから変えていない商品もたくさんありますが、変えても良い部分は進化が必要だと思っています。そうでなければ『自分のインテリアが変わってきたから、ジェラート ピケは合わないかな』と弾かれてしまうかもしれない。衣食住のバランスをしっかり捉えてジェラート ピケらしく進化していくことを大切にしています」

 同ブランドは、ルームウェア市場やファッショントレンドのみならず、インテリアや生活スタイルにまで至る、“衣食住”のトレンドの変化を踏まえた商品開発をしているという。実際、近年は暑い夏に対応する接触冷感素材や、季節の変わり目に着やすい調温効果のある素材などのアイテムでも新たな顧客層を獲得し 、寝具などを含む生活雑貨の販売やカフェの展開においても独自のブランディングに成功。立ち上げから10年余りで、まさに“衣食住”を提供するブランドにまで成長している。

■ステイホームだからこそできるルームウェアの使命「競争激化に焦り全くなかった」

 リーマンショックによる巣ごもり需要でのヒットも経験したジェラート ピケは、 2020年、奇しくも再び同じ需要が高まるタイミングを迎えた。しかし、今回は前回とは状況が違った。外出機会が減り、洋服が売れなくなると、多くのファッションブランドがルームウェアの注力に舵を切ったのだ。そんな状況に、豊山氏は焦りは全くなかったという。

「そもそも、かつては寝具と同じカテゴリーに分類にされていたルームウェアの新たな市場を作りたいと思って事業を始めていますから。その市場が盛り上がることは、嬉しいばかりです。ステイホームという状況下で、ルームウェア市場を牽引するジェラート ピケでしかできないことが必ずある。デビューからここまで根強く支持していただいた一つの使命として、皆様への感謝の気持ち、そして地球への感謝の気持ちを考えながら、何かできることはないか、と必死に考えた1年でした」

 競合ブランドが乱立する中、勢いは止まらなかった。その背景には、やはり一過性のファッションだけではない、人々の“衣食住”の核心を捉えた視点があった。

「コロナによって、立ち止まる、立ち返る、話し合う、または色んな形で時間を共有できる機会が与えられたと思っています。ただ楽しむだけではなく、心と体のバランスをじっくり考えてみる時期が来たのではないでしょうか。そこで、改めて商品づくりについて見直したときに、従来の“可愛い”とか“大人のデザート”というブランドのコンセプトはもちろんですが、環境配慮や心地良さといった点を加えていくことも重要だと再認識しました。例えば、代名詞であるもこもこ素材の『 ジェラート』という商品も、昨年からリサイクル紙を使って作っているものもあります。ただ『リサイクルすることが大事だよね』と言うことではなくて、多くの人たちに愛されているブランドだからこそ、率先してそういった問題に向き合い、商品を通して伝えていくことが使命だと思っています」

 コストを抑えて着心地を実現するために、綿を推奨するブランドは多い。リサイクル紙を使ってデザインや手触りを担保するのは、相当な労力と技術が求められるのだ。しかし、競合に勝つ、安くて生産性が高い、という目先の利益だけを追求しない真摯な姿勢が、より多くの人に支持される結果となった。アパレル業界の多くが赤字となった2020年、ジェラート ピケは年間を通じて前年を上回る業績を残した。

■人々のライフスタイルまでも変えたジェラピケの真骨頂とは「誰にも見せないからこそ思いっきり楽しめる」

ブランド立ち上げから13年。目まぐるしくトレンドが変化していく中で、日本を代表するルームウェアブランドとして愛され続ける理由は何なのだろうか。

「私たちとしては、男性目線やあざといを意識したことは一度もありません。だからこそ完成されているブランドなのかなと思います。 男性と女性どちらの目線も大事にしていて、男性に媚びない“女性の自立”と“可愛い”の両立を大切にしています。私たちはランジェリーのようなセクシーを追い求めている訳ではないですし、誰にも見せないからこそ家の中だけでこっそり楽しめるおしゃれもあります。そのちょうどいいバランスこそがジェラート ピケの真骨頂だと思います」

 “もこもこ部屋着ブーム”にとどまらず、“ルームウェア”という新たな市場を日本に生み出したジェラート ピケ。コロナ禍を経て、その市場はさらなる肥大化を遂げた。当初から一過性のトレンドではなく、市場の活性化を見据えていたという豊山氏。 それがまさに現実に起きている今、目指すブランドの姿とは何なのだろうか。

「〇〇があるからジェラート ピケで居続ける っていうよりは、ジェラート ピケ自体が普遍的で居続けられることが理想です。会社の理念にも通ずる部分なのですが、体に一番良い作用って“高揚する瞬間”があることだと思っています。パッって心が躍る瞬間って、人間を一番美しく見せたり、自分や周りをハッピーマインドにしてくれたりすると思うんです。その一瞬を作るために朝も夜も考えを巡らせているので 、これからも商品を通して幸せの連鎖を広げていきたいです」

 勉強や仕事で疲れてパジャマに着替えることすら面倒なあの時間を、見事に心ときめくひと時に変えたジェラート ピケ。誰かに見せるためのファッションではなく、自分の気分を上げるための家ナカファッションは、今まさに閉塞感漂う世の中で、多くの人々の“心躍る瞬間”を創出している。


(取材・文=鈴木ゆかり)

(提供:オリコン)
夏向けのタオル地、サテンやレーヨン素材のルームウェアも多数展開している「ジェラート ピケ」
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