【オリコンニュース】
元保育士が描く"ませガキ"愛
 子供とだけ仲良くできる“限定コミュ症”の高校生が、子供の面倒を見る「ボランティア部」に入部し、部活の仲間と子供たちに囲まれ、人見知りを克服しようと奮闘する漫画『俺、限定コミュ症なんでっ。』が話題だ。第一回LINEマンガ大賞を受賞した本作には「すごい癒された」「コミュ症男子カワユス!」など多くの反響が寄せられている。作者の桐谷のばさんに話を聞いた。

【漫画】思わずほっこり、可愛くておませな子供たちとの交流とは…

■元保育士だからわかる「子どもたちの個性」 ボランティア部、コミュ症は“実体験”

 桐谷のばさんは元保育士で、4年間の保育士勤務の中で体験した楽しいことや不安だったこと、実感したことなど様々な体験を作品に入れ込んで描いている。桐谷さん自身も子供が大好きで、「街中で子供を見かけたり、電車の中で目が合うと顔が緩んでしまいます」というほど。しかも主人公のナシくんこと梨川益臣と同じく、特定の人としか話すことができない「限定コミュ症」だそうで、主人公はまさに桐谷さんの分身だと言える。

――主人公を男子高校生にした理由は?
【桐谷さん】以前から、男子高校生が騒いだりはしゃいだりして日常を楽しむマンガを描きたいと思っていました。自分自身、男子高校生がわちゃわちゃする様子が好きだったりギャップに萌えたりしていて、可愛いものにとことん惹かれる男子高校生たちを登場させました。

――主人公のナシくんは子供の面倒を見る「ボランティア部」に入部しますが、「ボランティア部」の発想はどこから来たのですか?
【桐谷さん】大学時代、私自身がボランティアをしており、そこで一番印象に残っている活動が、子供広場で子供たちに配るバルーンアートを作ったことでした。目の前の子供たちが、うれしそうに風船で遊ぶ様子を思い出し、ボランティアで子供に関わる主人公、そしてそこから成長する主人公を思い描いたのが始まりです。

――「(保育課の)先生のネクタイうさぎさん」といった細かな描写を楽しんでいる読者の声が挙がっています。描く上で工夫されていることは?
【桐谷さん】登場人物の個性を細部まで表現することです。一人ひとり生い立ちがあり、生活があり、思いがあります。そんな人たちが一つのところに集まっているイメージで、裏話まで考えてキャラが生まれています。そんなキャラたちの個性を、作品を通じて少しずつ伝えて行けたらと思って描いています。その一つが先生のネクタイです。

■“ぽにっ”としたおしりや「おませ、人懐っこい、尖ってる」年齢/人格をかき分け

――「ほにゅーるいサン」など作中のキャラクターの支持者も多くラインスタンプでも人気です。作中の細かいディテールへのこだわりは?
【桐谷さん】ほにゅーるいサンに関しては、子供にも大人にも人気のキャラクターになってほしいという思いがありました。イメージの参考にさせていただいたのは「すみっコぐらし」です。保育園に勤めていたとき、「すみっコぐらし」にまつわる子供との大切な思い出がありますが、それを「ほにゅーるいサン」で表現したいと思いました。

――では、子供たちを描く際に気をつけていることは?
【桐谷さん】ある子はおませ、ある子は人懐っこい、ある子は尖ってる、など性格をうまく伝えるのはもちろんですが、やっぱり子供は可愛い! と思ってもらいたくて、全力で自分の可愛いと思う子供を表現しています。子供の素直さ、ほっぺのぷにぷに、手や爪の小ささ、おむつを履いたような“ぽにっ”としたおしりや歩き方、目の奥のキラメキなどが萌えポイントです!

――主人公の素直さや、子供をきっかけに少しずつ成長する姿が共感を呼んでいます。心理描写や表情で気をつけている点は?
【桐谷さん】自分の中の恐怖と必死に戦う心の葛藤、変わりたいと思っているが簡単に変われない絶望といった負の感情のときの目や、自分を守ろうとする際に身体の前に持ってくるおびえた手。その対比として、うれしいときは心からうれしい、楽しいことは全力で楽しむ、といった正の感情のときの目や、自信を持った手を描き分けたいと意識しています。言葉ではあまり表現しない主人公なので、口ほどにものを言う、目や手に違いを出せたらいいなと思っています。

■児童愛は貫く「担任した子供たちが卒業するまで見届けたら、マンガの道へ」

 小学生の頃から漫画家志望だった桐谷さんだが、両親に専門学校に行くことを反対され、幼児教育の道へと進んだ。しかし就職した保育園で、クラスの子供たちの似顔絵やクラス看板のイラストを描いているうちに、漫画家の道が頭にチラつくように。3年目、「自分が初めて担任した子供たちが卒業するまで見届けたら、マンガの道へ進んでみよう」と思い立ち、保育士をしながらマンガを描き続けた。4年目に保育園を辞めてマンガを出版社へ持ち込み始め、本作で第一回LINEマンガ大賞の大賞受賞に至る。

――第一回LINEマンガ大賞で大賞を受賞後、大きく変わったものはありますか?
【桐谷さん】受賞したときは「漫画家になる夢が叶った」と震える手でお世話になっている友人や家族に報告しました。家族が”漫画家”だと認めてくれたこともありますが、特に大きく変わったのは自分の気持ちでした。

――その変化とは、どんな気持ちでしょうか?
【桐谷さん】一番に思ったのは、マンガを通じて自分に関わってくれた人にお礼ができるということでした。なかなか作品を認めてもらえなかった中、「描きたい想いを形にしてください」と拾ってくださった担当さん、応援してくれていた友だち、たくさんの経験をさせてくれた保育園の子供たちや保護者の方、先生方、そして自分の作品を好きと言ってくれたフォロワーの方々。そして一番は、昔からイラストを描くことを支えてくれて機材や画材を買ってくれていた両親、厳しい審査をし、課題をくれる弟(笑)。自分に関わってくれた皆様に本当に感謝しています。

――電子書籍として連載されていますが、スマホで読まれることを意識している点は?
【桐谷さん】webでは拡大して見ることができるので、細かい所にこだわりを詰め込むことを楽しんでいます。またコメントで1話ごとに読者様の感想が聞けるので、こだわり部分を見つけていただけたときは飛んで喜んでいます。

――今後描いてみたいエピソード、挑戦したい作品のジャンルを教えてください。
【桐谷さん】ファンタジーやバトルなどに少し興味があります。世界観をしっかりと伝えられるような画力を手に入れることができたら、いつかは挑戦してみたいですね! もっとぶっ飛んだ、「疲れたときに何も考えずに読むギャグマンガ」も描いてみたい気持ちはあります(笑)。

(提供:オリコン)
『俺、限定コミュ症なんでっ。』 (C) Noba Kiritani / LINE
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