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阿部寛が明かす『下町ロケット』裏話
 俳優・阿部寛は現場で何を考えていたのか。昨年10月期の連ドラ、そして年明けのスペシャルドラマの感動も今なお記憶に鮮明なドラマ『下町ロケット』。そんな今作がBlu-ray/DVDとして再び世に出る今、主人公・佃航平を演じた阿部寛が自らの言葉で語ってくれた。

【写真】阿部寛が珍しく挑んだ“変化球”ではない役柄での熱演

■自身のプレッシャー以上に考えるべきことは多かった

──今回の『下町ロケット』に挑んだときの心境を改めて聞かせてください。
阿部寛 責任は前作以上に感じていましたね。キャストの多い作品だけに、3年も時間が空くと環境が変わっている人もいます。それこそ当時は新人だった竹内涼真くんや土屋太鳳さんは、名実ともにすっかり成長されていて。でも、僕が出演を決めたら、みんなもついてこなければならなくなる。自分自身のプレッシャー以上に、考えるべきことは多かったですね。

──自身のことより作品そのものを考えた判断をする。まるで企業の社長のようですね。
阿部寛 まさに佃航平を通して、社長というものを擬似体験させていただきました。前作でロケット打ち上げを成功させた佃製作所が、さらに成長するために農業ロボットに挑むのが今作ですが、若い従業員にとっては「せっかくロケットで実績を積みはじめたのになんで」という想いもあるわけです。一時期同じことの繰り返しで、それでも納得させなければいけない。生半可な説得力では付いてこないんです。一時期はこの芝居でいいんだろうかと、非常に悩みました。そんななか、太鳳さんがあるイベントで中小企業の社長さんたちから「佃製作所はいい会社ですね。若い人も古株もみんな一丸となっていてうらやましい」と言われたと報告してくれたんです。その言葉に本当に救われました。この作品を信じて、やっていこうとギアが切り替わりました。

──ご自身との戦いも多かったなか、現場での楽しい思い出もありましたか?
阿部寛 基本的には楽しい現場だったんです。みんな社長、社長と呼んで支えてくれていましたから。なかでも思い出深いのは、初めて新潟・燕市でロケをした第3話。田んぼに入ってみんなで田植えをしたのは本当に楽しかった。意外と簡単だなと思いきや、時間が経つうちにだんだん腰が痛くなってくる。さらに遠くを見渡すとご高齢の農家の方が畑仕事をされていて。普段、車で走って風景を見ているだけでは決してわからない、機械の必要性など農業のこれからの課題が身に沁みて実感できました。

■役者人生において間違いなく大切な作品

──そうした実感が、芝居を超えたセリフの説得力にもつながってくるのでしょうか。
阿部寛 それは大きいです。第3話は本当に好きな場面が多くて、田んぼで僕がひっくり返るのは台本になかったのですが、監督と話し合ってぶっつけ本番でやってみたんです。それをみんなが素で笑ってる姿が収録できて、おかげで背中まで濡れて、その後、半日寒かったけどうまくいきました。田植えを終えた(伊丹大役の)尾上菊之助さんが「今日は本当に来てよかった」とつぶやいたセリフが実に実感がこもっていて、僕の一番好きな場面です。伊丹社長とはその後に確執が生まれるので、第3話はよけいに感慨深いですね。

──仕事を通したさまざまな人間模様も本作の見どころ。なかでも吉川晃司さん演じる財前部長と佃社長の絆は胸を熱くしました。
阿部寛 吉川さんは本当に財前部長のごとく信頼できる方でした。すべての財前部長のシーンを、台本以上にシーズン1から今作まで作り上げて下さった。佃同様、僕にとっても信頼できる存在でした。

──こうして笑顔で振り返られていることからも、充実した作品だったことがうかがえます。
阿部寛 悩むことや過酷なことも多かった作品だからこそ、やり切ったという爽快感で満たされています。

──50代になって最初に挑んだ連ドラ『下町ロケット』は阿部さんにとってどんな作品になりましたか?
阿部寛 とにかく常にまっすぐ本気で挑まなければならない、そんなことを体感できた役でした。変化球の多いエキセントリックな役が多い僕にとっては、たくさんの仲間と総力戦で作り上げる経験もさせていただいた、役者人生において間違いなく大切な作品です。役者、エキストラ、スタッフ、そして作品とすべての出会いに感謝です。
(文/児玉澄子)

(提供:オリコン)
名作『下町ロケット』を振り返る阿部寛(写真:逢坂聡)
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