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天皇一家を60年映す『皇室アルバム』
 大阪・毎日放送による60年続く民放最長寿のレギュラー番組『皇室アルバム』。昭和、平成の時を経て天皇一家の歴史を記録し、5月の天皇陛下譲位のタイミングには番組の集大成となるDVD&Blu-rayの発売も控える。多くの日本人から関心を集める貴重な番組はどのように作られてきたのか? キーマンとなる2人に聞いた。

【写真一覧】35ミリフィルムで記録された1959年(昭和34年)のご成婚パレード(全10枚)

■民放最長寿のレギュラー番組『皇室アルバム』DVD&Blu-ray化

『皇室アルバム』(MBS/TBS系列で放送中)は昭和34年、天皇皇后両陛下のご成婚の年から始まった。それは、制作する毎日放送がテレビ放送を開始した年でもある。現在、番組を担当する堀素子チーフ・プロデューサーは「テレビ創成期の当時、ブラウン管を通じて天皇ご一家の姿を毎週にわたってお茶の間に届ける番組は画期的でした」と解説する。

 放送初期はゴールデンタイムの夜9時台に放送されていたことが記録に残っており、20%前後の高視聴率だったという。一方、番組をスタートさせたものの、テレビ取材はまだまだ難しく、皇室の方々がほとんど登場しない回もあった。皇室の周辺を取り上げる「皇居のおまわりさん」とタイトルが付けられた回からも、当時の苦労がうかがえる。

 それでもレギュラー編成していくなかで、宮内庁側もテレビ取材に理解を示していくようになる。昭和54年に行われた放送1000回記念パーティーでは当時の卜部侍従が「陛下(昭和天皇)は皇室アルバムの大変熱心な視聴者であられ、都合で観られない時にはビデオにとって必ずご覧になっている」とスピーチ。宮内庁が録画できなかった時は、毎日放送のスタッフがVHSテープを届け、その際「次回予告まで入れて欲しい」というリクエストがあったというエピソードもある。

 皇室報道は取材時間が制限されている場合も多く、『皇室アルバム』ならではの制作ノウハウも築いてきた。長年、10年近く番組に携わる毎日映画社の取締役報道制作本部長・木村将彦氏は「カメラポジションは各社横並び。基本的に撮影できる場面は同じですが、『皇室アルバム』では独自の映像をお届けできていると自負しています。例えば、両陛下をツーショットで撮るか、寄ってワンショットがいいかなど、撮影スタッフは、ご表情やその場の状況を瞬時に判断し、限られた撮影時間のなかで必要なカットを切り取ることに長けています」と説明する。

 また皇室取材では通常、皇室の方々にピンマイクをつけたり、インタビューマイクを向けることはできない。「遠距離から指向性が高いマイクを使用しても、音を録ることには苦労が伴います。薄い音を起こしながら、フォローのテロップを入れ、できる限りお伝えしています」と堀チーフ・プロデューサーは語る。

■ホームビデオのような距離感で撮影されている映像

 そんな60年の天皇ご一家の歴史が詰まった貴重な映像が天皇陛下譲位の節目の年に、DVD&Blu-rayに集約されて発売される。そこには、世紀のご成婚パレードなど、35ミリの映画用カラーフィルムで撮影され、ハイビジョンリマスターで甦った映像も含まれる。

 昭和の皇太子同妃両殿下時代は運動会やお弁当づくりのご様子など、ホームビデオのような距離感で撮影されている映像もあるから驚きだ。海外ご訪問時のご様子が詳細に映し出される映像もふんだんにあり、また今年、2月24日に開催された天皇陛下御在位30年記念式典の映像も盛り込まれる。

 DVD&Blu-ray全3巻を制作するにあたって、堀チーフ・プロデューサーが初めて目にした映像もあったという。それは昭和33年に撮影された「美智子さまご婚約内定記者会見」だった。「テレビでよく目にするのは『とてもご誠実で~』とお話されているあたりの短い場面のみ。今回、皇后さまが部屋に入られてから、出て行かれるまでのすべてのシーンを初めて拝見しました。当時の記者の不躾な質問にもうまくかわ(漢字は躱す)されるご様子は、現在の有名人のマスコミ対応でも参考になると思うくらい、パーフェクトなもの。皇后さまの聡明さにあらためて感銘を受けました」。それがノーカット、モノクロで提供される。

 編集するにあたって、木村報道制作本部長は「時系列で紹介し、時代感を出すことにもポイントを置きました」と説明する。「日本が高度成長期に戦後の復興からがんばっている様子も伝え、懐かしさも表現しました。この日本の歩みを天皇皇后両陛下が見つめてこられたということも感じて欲しいです。ただ、ひとつ難しかったこともありました。時代は変わりつつも、普遍的である皇室は変わらない部分もあります。それを時系列でどのように見せていくべきか。そこにこだわって編集しました」。

■『皇室アルバム』とは日本一有名な家族の60年にわたるアルバム

 DVD&Blu-rayのタイトルには『絆、そして祈り』の副題もある。この意図について木村報道制作本部長は「天皇皇后両陛下が大切にしていらっしゃるのは『国民との絆』と『家族の絆』であろうと、番組に携わるなかでそう感じています。そして『祈り』は、『祈り続ける者でありたい』という皇后さまの言葉からお借りしました。今回の映像でも、被災地ご訪問や戦禍の激しかった地への慰霊の旅などの場面から、それは感じとることができるかと思います」と解説してくれた。

 また堀チーフ・プロデューサーは「祈りに対する考え方から、海外の王室と日本の皇室の違いを感じます。日本の皇室は祈ることを軸にしているのではないでしょうか。宗教を越えた祈りであり、被災地などで人々の悲しみを聞き届けることも、一種の祈りだと感じます。天皇皇后両陛下のご活動のテーマにあるのかもしれません。これは皇太子ご夫妻にも引き継がれていくことだと思います」と補足した。

『皇室アルバム』とは何をみせる番組か? 最後にそんな質問もさせてもらうと、堀チーフ・プロデューサーから「日本一有名な家族の60年にわたるアルバムを視聴者は観ているのだと思います」という答えが返ってきた。民間放送局らしい切り口だ。「ご覧になる方も天皇皇后両陛下と同じように年を重ね、子どもを育ててきたことでしょう。家族の喜びも悩みも、自分のことのように身近に感じているのではないでしょうか。そんなふうに、自分たちの家族の歴史と照らし合わせながらご覧になってくださればと思います」。
(文/長谷川朋子)

(提供:オリコン)
『皇室アルバム』より(C)1959-2019 MBS(C)毎日映画社(C)2019「皇室アルバム」DVD製作委員会
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