龍鳴館

母さん、今回も中之条に行って来ました。今回も沢渡温泉です。訪れたのは源頼朝にゆかりあると言われる龍鳴館です。

これぞ昭和の旅館、と嬉しくなる佇まい。お忙しい中をお願いして、女将にお話を伺います。

この旅館の娘さんとして生まれた女将は、ご両親の看病のため沢渡へ戻ります。お二人が旅立たれた後、この宿を継ぐことを決意。戦後の大変な状況の中、必死の思いで旅館を成長させたご両親の忘れ形見として宿の湯を守っています。

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お風呂から出た後も芯まで温まるのが、沢渡のお湯の魅力と語る女将。食事は女将考案の体に優しい、アットホームなメニューです。歴史ある建物は隅々まで手入れされ、女将の愛情が垣間見えます。

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今日は女将のおもてなしに「ありがとうございます」を言ってばかりの日でした。僕にはまだ経験がないけれど、いつか守るものが出来たとき、僕は改めて女将に会いに来ようと思いました。ありがとうだけじゃなくて、僕なりの言葉を伝えに。

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宮田屋旅館

前略、中之条より

母さん、また中之条に行って来ました。今回は、沢渡温泉という場所をめぐります。まず訪れたのは、宮田屋旅館さんです。

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一歩入ると、「旅館に来たー!」モード全開に。もう何年もこういう宿に泊まっていません。旅館独特の畳の匂いに癒されながら、食堂へ。ご主人の鉾田さんいお話を伺います。

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お宿の自慢は、お湯はもちろん、この景色。四季折々の風景を求めリピーターさんがやってきます。この日は夏山の緑が輝いていました。仕事じゃなかったらいいのいなぁ・・・。

県外出身の鉾田さんですが、学生時代から大の温泉好きで、出会ったのが今の奥様。沢渡温泉の娘さんだったなんて、まさに運命ですね。奥様と沢渡の湯に恋した鉾田さんは、こちらを継ぐことを決意します。

館内はバリアフリーに改装され、お年寄りや車椅子の方でも過ごしやすくなっています。客室は落ちついた雰囲気。ここから見える景色もまた風情があります。

宮田屋自慢のお風呂では、一浴玉の肌、と名高い沢渡の湯を贅沢に堪能できます。季節の山の幸を楽しめるお食事も嬉しいですね。

群馬出身じゃないからこそ、見える群馬の魅力。僕も中之条を訪れて、鉾田さんと同じ視点で色々なものを見ているのかもしれません。そしてもうひとつ、鉾田さんの奥様が恋したのは、鉾田さんの笑顔なんじゃないかと・・・ちょっと勝手に想像してみました。母さん、この方の笑顔は今日の太陽よりまぶしかったです。

 

 

 

 

 

牧水詩碑

前略、中之条より

母さん、今回も中之条町六合地区へ足を運んできました。今回は、この地ゆかりの詩人・若山牧水の足跡をたずねます。

牧水詩碑①

若山牧水は、旅と自然をこよなく愛した明治うまれの歌人です。宮崎県に生まれた牧水は全国各地を旅し、その先々で作品を作りました。六合地区は名作「みなかみ紀行」で要所として登場します。手付かずの自然が牧水の心を大いに揺さぶり、ここで数多くの作品が生まれることになりました。これを記念して、六合には牧水詩碑が作られています。

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お話しを聞かせてくださった山元さんは、かつて牧水が辿ったルートをそのまま楽しめる現地ツアーの解説もなさっています。あの日、牧水の目に映った風景が今でも体感出来るのは六合地区ならではですね。

彼が人生で最も愛したもの、それは源流の「水」と、母「まき」さんだったそうです。その二つを合わせて「牧水」の号を名乗った若山牧水に、僕は今、ちょっとだけ親近感を抱いています。

それでは、また書きます。亮平より。

 

チャツボミゴケ公園

前略、中之条より

母さん、今回も中之条に行ってきました。幻想的な風景が広がるチャツボミゴケ公園です。

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酸性の温泉が湧き出るこの場所で、青々とした姿を見せてくれるチャツボミゴケは天然記念物として多くの観光客に愛されています。公園入り口に到着すると、温泉に来たような香りが漂い、テンションがあがります。

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赤い土が見えているのはここで鉄鉱石が採れた証。どんどん歩いていくと、名所「穴地獄」が見えてきます!

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この日は小雨の降る中の取材となりましたが、晴れた日にはない風情を楽しむことが出来ました。突き当たりの穴地獄までウッドデッキづたいに歩くと、なんだか違う惑星に来たような気持ちになります。

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視点を変えて山を見渡すと、こちらも絶景!カメラを構えた方も多くみかけます。

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酸性のお湯の中で元気に生きているチャツボミゴケに、僕も大きな勇気をもらいました。あ、でも別に仕事が辛いとかそういう意味じゃないんでだいじょうぶです。念のため今の話は先輩には言わないで下さい。

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それでは、また書きます。亮平より。

 

 

白根の見える丘

前略、中之条より

母さん、今回も中之条に行ってきました。山深い、尻焼温泉です。白根山を間近に見ることが出来る小さなお宿が目的地でした。その名も「白根の見える丘」です。

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気さくなご主人のお出迎えで一歩足を踏み入れると、ここに泊まりにきた人々や、周辺の動物たちの写真が。ここにはカモシカも遊びに来るそうです。それもそのはず、ラウンジから見た風景に僕たちは息を呑んでしまいました。

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白根の山々まで、目の前を遮るものがありません!あいにくの雨天でしたが、これはこれで慕情があります。ご主人の中村さんは、親子二代に渡ってこの地で温泉宿を経営。「美味しい山の料理を」という思いから始めた名水と国産大豆の豆腐は、まさに採算の合わない贅沢料理。この味を一度食べたら忘れられない、ということで全国からお客さんがやってきます。なにしろ一日4組限定、ますます泊まりたくなりますね。

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中村さんは日々何時間もかけて美味しい水を汲みに行くそうなんですが、その貴重なお水で淹れたコーヒーを頂いてしまいました。母さん、本当にこのコーヒー、美味しかったです!

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美味しい豆腐に舌鼓を打つのはもちろん、やはりこちらの醍醐味はお湯。2つの熱さを楽しめる内湯と、絶景の露天があります。紅葉の時期になると、白根の錦を独り占めできそうな素晴らしさですね。今すぐ、スーツを脱いでお湯に浸かりたかったです。

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中村さんは職人のこだわりと、お客さんをもてなすホスピタリティを兼ね備えた稀有なお人柄。レコーダーが回っていないうちから宿への思いや食事へのこだわり、そして周辺の自然や動物たちへの熱い思いを沢山話してくれました。

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お宿を出た僕たちは、代々中村さんたちが守っている河原の湯へ移動します。「これ、普通の川だよね・・・」という声をあげたくなるのを抑えつつ、近くに行ってみると・・・

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母さん!これ、温泉です!湯気が出ています!ちょうどいい温かさに、雨の中水着で楽しむお客さんの姿が。とても羨ましかったです。

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山を愛し、川を愛し、そして自然と動物たちを愛する中村さん。そんな中村さんの溢れんばかりの愛情に満ちたおもてなしを求め、年間を通して沢山の人が「白根の見える丘」に訪れる理由が見えた気がしました。旅は命の洗濯と言いますが、僕の心は今、かなりキレイになっている気がします。

それでは、また書きます。亮平より。

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赤岩集落・重要伝統的建造物群保存地区

前略、中之条より

母さん、元気ですか。亮平です。今回も中之条町に行ってきました。今回は、日本の原風景を懐かしむことが出来る赤岩集落という場所です。

かつて養蚕農家がさかんだったこの地区には蔵をベースにした天井の高い独特の建築様式の家が沢山残っています。駐車場に近い「ふれあいの家」から、小さな時間旅行が始まります。重伝建活性化委員会の会長、篠原さんがガイドをつとめて下さいました。

初めて来たのに、なぜか「懐かしい!」と声を上げてしまったこの風景。火の見やぐらを見たときは、幼稚園の頃を思い出してしまいました。ほら、みんなで待ち合わせしましたよね、母さん。

ここは、個人の自宅が歴史的価値を持つ「重要伝統的建造物群保存地区」なので、ひと声かければ家の写真も撮影してOKなんだそうです。町のみんなで話して決めた、と篠原さんは話して下さいましたが、皆さんの懐の深さにはただただ、頭が下がるばかりですね。さらに、地区の皆さんで定期的に絹製品のワークショップを開いているそうです。

忙しい毎日に追われて、昨日の晩御飯も思い出せないような時こそ、この赤岩地区に来て日本人の原風景に抱かれ、安心することが必要なのだと今回つくづく思いました。いろんなことをリセットして、また週明けから頑張ります!

それでは、また書きます。篠原さんの自信作、桑の葉茶をお土産に送りますね。

亮平より

 

冬住みの里資料館

前略、中之条より

母さん、元気ですか。亮平です。今週も中之条町に行ってきました。今回訪れたのは、草津と山ひとつ隔てた小雨地区です。ここにある「冬住みの里資料館」を訪ねたのですが・・・

なんと、ここは市川さんご夫婦のご自宅なのです!なんという大きさの家なんだろうとびっくりしていたら、資料館は敷地内の蔵だと教えてくれました。しかも、ご主人の市川さんご自身がガイドを勤めて下さるのだそうです。

蔵に入ってまず驚くのは、その涼しさ!とても暑い日でしたが、少し肌寒く感じるほどです。そして何より、収蔵してある数々の貴重な品々に、僕たちは驚きの声を上げるしかありませんでした。市川さんは朗々とした語り口で、この「冬住み」というフシギなシステムを教えてくださいます。

かつて六合村が出来る前、交通の要であった暮坂・小雨も草津の一部でした。当時草津で温泉を営む人々が、冬の間「町そのもの」を空っぽにして、この小雨地区の自宅で過ごしたシステムを「冬住み」と言うのだそうです。別荘ではなく、自宅が二つあったなんて羨ましいですね!江戸時代から多くの観光客が訪れた草津でしたが、市川さんのご先祖はここで「山本館」という旅館を営んだ名士です。

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当時から英語の看板を擁するあたり、山本館には当時から外国人客にも人気だったことがうかがい知れます。こうして多くの文豪や政府要人が訪れた宿には貴重な文献が残りました。しかし時は流れ、貴重な品々は市川家の蔵で静かに眠ることに。それを改めて発見したのが市川さんご夫婦です。

蔵を片付けたらどんどん出てくる文献や当時の生活用具。これは貴重なのではないかと専門家に問い合わせたところ、とんでもない貴重品ばかりだったことが判明し、市川さんはご自宅での資料館開館を決意します。横山大観に小林一茶、西郷隆盛や若山牧水、さらには水戸黄門直属の部下の直筆などが出てきたわけですから、想像しただけでびっくりですね。

名門・市川家ならではの家紋入り漆器には珍しい緑色の椀も。数百年の時を経てもなお、美しい輝きを見せてくれます。三々九度で使う杯は、実際にお二人がお使いになったそうです。

資料館にある素晴らしい収蔵品にも驚きましたが、僕がなにより心打たれたのは市川さんご夫婦の温かなお人柄です。とても大きな母屋には、びっくりする太さの大黒柱がありました。その横で、お二人のお話を聞きながらお茶を頂きました。

ご自宅に多くの人々を招き入れ、蔵を案内し、さらにその後は居間で美味しいお茶を振舞う。僕にはとてもそこまで出来ません。手作りのフキの煮物も、カブの漬物も、何度も何度も入れてくれたお茶も、本当に本当に美味しかった。母さん、中之条に来ても、僕は何も出来ていません。ただただ、ここで出会う人々の優しさに甘え続けてばかりです。でも、それがすごく温かくて、嬉しいのだけれど。

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それでは、また書きます。今度の休みに、おじいちゃん・おばあちゃんに顔を見せに行きますね。

亮平より

 

野反湖

前略、中之条より

母さん、また中之条に行ってきました。今月は、山深い六合地区へ向かうとの事で、長いドライブになります。今日は僕がドライバーを担当しました。中之条のつむじからおよそ1時間、目の前に現れたのは…

野反湖です!山にはまだ残雪が。それにしても空の青いこと!そして空気の澄んでいること!一気に観光気分になってしまいました。ここには有名なキャンプ場もあります。

ここでお話を伺ったのは野反湖の達人、中村一雄さん。見ごろを迎えたシラネアオイを求めて、僕たちは少しだけ山に入ることになりました。

中村さんにお話を聞いている間、ウグイスの歌声が軽快に響きます。足元には紫色がきれいなシラネアオイが群生していて、その可憐な花を間近に見ることが出来ました。

駐車場では太陽が照りつけていたのに、一歩山に入るとひんやりとした空気が漂います。中村さんいわく、6月でも羽織るものは忘れずに、とのこと。僕はスーツを着てきて正解でしたが、Tシャツ一枚の竹村さんは軽く震えていました。

野反湖周辺には、色々な動植物が暮らしています。物言わぬ彼らの命を大切にするために、山のルールはしっかり守らなければなりません。たとえば、一本くらいいいだろう、という気持ちでみんなが山野草を手折ってしまったら、きっと野反湖の生態系は壊れてしまうでしょう。美しいこの風景を守るため、中村さんは日夜奔走しています。

写真集を出すような中村さんには到底叶いませんが、僕なりに撮影したシラネアオイの画像を送ります。母さんが好きな、紫色の花です。

それでは、また。

亮平より

 

 

 

花の駅美野原

*スタッフが取材で伺った際にガーデンを彩っていたチューリップが見頃を終え、5月25日現在、園内ではバラが咲き始めているそうです。お花の情報などについて詳しくは公式HPをご覧下さい*

 

前略、中之条より

母さん、また中之条に行ってきました。「花の駅美野原」という場所で、5月31日まで開催されている「花と緑のぐんまづくりIN中之条」のメイン会場です。門をくぐるとすぐに、咲き乱れる花々が出迎えてくれました!

みのはら地図

中でも圧巻なのがパレットガーデン。デザイナーによる緻密なデザインで、美しいグラデーションが楽しめるんですよ。チューリップだけでもこんなに種類があるのかと驚きました。

ガーデンの奥には、絨毯のような菜の花畑が広がります。5/31までの土日は、菜の花に囲まれて足湯に入れるそうです!

なのはな

いろんなお話を聞かせて下さった中之条町農林課の宮崎さん。花の駅美野原をこの景観にするため、何年もかけて作り上げて来たスタッフの一人です。大きなことを成し遂げた人は、笑顔が違うんですね。

花の駅美野原の中には個性的なお店が見つかります。こちらは和風喫茶「山野草」。庵のようなたたずまいとのぼりに、思わず吸い寄せられてしまいます。

ドライバーさんから転職、長年の夢を叶えた店主の富沢さんは、お店を閉めた後に苔球作りや木の「骨」を活かしたオブジェ制作にいそしむそうです。タイミングが合えばワークショップとして参加可能だそうで、僕も作ってみたくなりました。

さんやそう店主

最後に訪れたのは、31日で閉店となってしまうレストラン美野原。窓から見える新緑がきれいです。

こちらは、お話を聞かせてくれた北詰さんです。名物のじゃがそばを食べられるのも、5月31日まで。駆けつけなくてはなりませんね。

いろんな人の努力や協力で花開いたのが、「花の駅美野原」。ひとつの花を咲かせることがどれだけ難しいか、そしてその草花を美しく保つことがどれだけ大切か、ここに来て初めて分かった気がしました。

花を見て美しいと思えるのは、まだ僕の心が壊れていない証拠なわけで、そう思ってまた少し嬉しくなっています。

それでは、また書きます。   亮平より

亮平菜の花ひとり

 

 

 

オープンガーデン福田

前略、中之条より

母さん、今週もまた中之条町に行って来ました。「個人のお宅の庭を見に行く」と先輩たちから言われ、正直どういうことなのか分かりませんでした。よその家の庭を勝手に見ても怒られないんでしょうか?そんな僕の心配をよそに車は進んで行きます。

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僕たちが降り立ったのは、のどかな風景の一角。そこには「オープンガーデン福田」の看板が!そうです、ここは福田さんの個人宅であり、毎年数千人が訪れる観光名所でもあるのです。中にお邪魔してびっくりしたのはその景観。これ、庭だけじゃなくて山だよなぁ・・・。

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これだけの植物を、どうやって管理しているのだろう?どれだけ大変なのだろう?僕には絶対ムリだけど、福田具可さんは余裕綽綽。自宅の庭と裏山はもちろん、近隣のみなさんとも協力して四季折々の美しい景観を作り上げているそうです。

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四季の庭を造るだけではなく、絶滅危惧種の保護にも力を入れている福田さん。こうしてみると、身近な植物も絶滅の危機に瀕していることがうかがい知れます。

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ちなみに、竹村さんが「花の名前とか、ひとつも分からないよな」って言っていたけれど・・・ごめんなさい、母さんのおかげで、僕、結構知ってます。

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教育者として活躍し、今は中之条のみならず群馬の緑を守り続ける福田さん。その背中は、とても頼りがいのある、カッコイイ背中でした。何かを守る強さを、いつか僕も身につけねばと思っています。

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それでは、また書きます。   亮平より