「チケットはすでに完売しました」
「申し訳ありません、満席なんです」
あの頃の俺たちには、見えなかった未来。いや、未来どころじゃない。右も左も見えやしなかったんだ。
この日、ふと立ち返ったゼロ地点。「桐生ケーブルテレビ」の文字が変わらず赤く燃えている。
「なあお前、ちょっとだけ前に進めたな」
珍しく自分を誉めた夕暮れ。
唐揚げを20個買ったらさ、
あの日と同じ味がしたよ。
「始まり」の味がね。