松尾由紀子は変わらない

「4戦目でようやく初勝利を飾れたのでうれしいです。」

彼女の試合後の第一声は、いたってシンプルなものだった。正直、もっと、闘志をむき出しにして乗り込んでくるのかと思った。だが、そうではなかった。松尾由紀子という選手は何も変わらない。9人制でも、6人制でも、群馬でも、山形でも。ユニフォームこそ違えど、仲間と勝利をつかむために力を尽くし、大好きなバレーボールに取り組む姿勢は何ひとつ変わらなかった。それがとてもうれしかった。

dsc_2463

松尾は、群馬銀行グリーンウイングスの前身、9人制時代の群馬銀行女子バレーボール部を正セッターとして、キャプテンとして支えた選手だ。チームの伝統を守り続けるとともに、6人制への難しい移行期にも、副キャプテンとして役割を十二分に果たした。だが、グリーンウイングスを離れなければならなくなった彼女はこれで終わらない。8年間在籍したチームに別れを告げ、まだまだバレーがしたい、上手くなりたい、その思いをもって山形酒田に新たな戦いの場を求め、再スタートを切った。

自前の体育館を持ち、バレー部の活動もある程度、優先されるグリーンウイングスの環境とは違い、新天地では制約も多いという。「今までと違い、練習は、午後だけという日がほとんど。恵まれていたんだなと感じます。だけど、限られた時間で集中してバレーもできているし、充実してますよ。」と現在の様子を教えてくれた。

dsc_2472

そして、新シーズンが開幕し、初めての古巣との対戦。「もっと緊張するかと思ったがそうでもなかった。」と笑顔で答えた様に、松尾に気負いはなかった。コート上でも、これまで同様、仲間を鼓舞し、プレーで引っ張り、勝利を求めるいつもの松尾の姿しかなかった。「きょうは、エースも、ミドルも、レフとも、決めて欲しいところで決めてくれた。」と、仲間の活躍を手放しで喜んだ。古巣との対戦という個人的なことよりも、開幕3連敗で、自信を失いかけそうになっていたチームに力を与える今季初勝利をつかめたことが彼女にとって意味のあることだった。

松尾由紀子は、いつでも、どこでも変わらない。仲間とともに、勝利をつかむために、全力でボールに向かっていくのみだ。まだまだ、高みを目指して進化しようとしている。そんな姿にファンは引き付けられるのだろう。

dsc_2852

失礼な言い方になるかもしれないが、リーグ全体で見れば、3部相当のチームのひとりのセッターに過ぎないのかもしれない。だけど、これだけ魅力が詰まったセッターと出会えた事がうれしいし、これからも応援できる事が喜びでしかない。グリーンウイングスは離れたが、OG選手としてより一層の活躍を願うばかりだ。ますますの輝きでリーグを盛り上げ、グリーンウイングスを刺激して欲しい。