「V1の扉を開けるために」群馬銀行グリーンウイングス チャレンジマッチPreview

リーグ開幕前から優勝候補に挙がっていた群馬銀行グリーンウイングスは、ラスト4試合を残し、V2優勝を決めた。2位以下に差をつけた優勝に今季のV2で抜けた存在であることを示したように感じた。

強さがあり、高さがある。銀行での仕事をしながらとはいえ、練習場となる体育館をはじめ、施設、練習の環境はV1に引けを取らない。「そりゃ強いよね、優勝して当たり前だよね。」ちょっぴり意地悪な声も聞こえてくる。だが、今季の群馬銀行グリーンウイングスの本当の強さは、そこではない。スタメン、控え、選手、スタッフ関係なく、それぞれの役割を全うする、誰かが苦しい時に、しっかりと支える事ができる。ひとりでなく、チームとして、勝利という目標に向かえるチームに成長した事だ。

入れ替え戦となるチャレンジマッチまでの時間は限られている。新しい事はいらない。今季やってきたことをしっかり出し切る。これまで作り上げてきたもの、そして、今季、彼女たちが確立したバレーを出し切れば、V1への扉は開かれるはずだ。

新チームが始動した時、各選手から聞かれたのは、「攻撃力と高さを武器に戦いたい。」というものだった。V2の他のチームと比較しても、高さがあり、アタッカー陣のタイプも様々で攻撃面には期待があった。守りでもブロックの高さはもちろん、レシーバーの位置取りも含めたトータルディフェンスに力を入れ、選手の特徴をチームの強さに変える事に力を入れていた。

そうしたバレーはリーグ戦の中でも徐々に形となり、結果につながっていった。特に、ミドルブロッカーの鈴木日葵、安福若菜のふたりは、中心的な役割を果たし輝きを放った。だが、そんなふたりもリーグ優勝の喜びに浸ることなく、入れ替え戦へ気持ちを向けている。

スパイク賞も獲得した鈴木は、「正直、優勝の実感はない。試合もまだ残っている。レギュラーシーズンの戦いには満足していない。自分の納得いくプレーは多くなかった。」と話し、安福も、「3レグの戦いは厳しかった。相手のミスで得点できた部分も多かった。チャレンジマッチでは、相手はミスしないと思う。」と優勝の余韻に浸っている様子はない。

入れ替え戦で対戦するV1のヴィクトリーナ姫路とは、昨シーズン、V2で、プレーオフも含め、グリーンウイングスが、3戦2勝と勝ち越した相手だ。だが、それは過去の結果に過ぎない。鈴木は、「姫路は1年、V1でやっていて揉まれている。向こうも負けられないだろうし、気合を入れてくるだろう。自分たちは挑戦者なので全員で頑張りたい。」と気の緩みはない。

安福も、「相手の外国人選手は大きいし、パワーもある。」と警戒するが、「ここまでこれたのは、チームメイト、スタッフはじめ、いろいろな人の支えがあるから。感謝の気持ちを忘れず、チャンスを無駄にせず、全力で挑みたい。」と決戦に向かう。

レギュラーシーズンを圧倒したように見えるグリーンウイングスだが、そうではない。

「レギュラーシーズンはしんどかった。少しでも気を抜くと負ける。」と、数字が示すほど簡単ではなかったことをキャプテンの吉岡みなみは口にする。

吉岡がポイントに上げたのは、1レグで敗れた大野石油戦だ。前日のJAぎふ戦にストレート勝ちし、大野石油戦でも第1セットを大差で奪う好スタート。だが、グリーンウイングスは、そこから連続で3セットを失い、1-3と逆転負けを喫した。

「気の緩みが出てしまった。もちろん、そんなつもりはないけれど出てしまった。」と振り返った。選手たちからすれば、意識して手抜きをしたというよりも、どこか安堵感の様なものから自身も、チームも、集中しきれなかったという事なのだろう。そんな、大野石油戦の経験から、吉岡は、声掛けをより大事にし、チームに緩みが生まれないよう、キャプテンとして気を配っている。

そして、そうした行動は、キャプテンだけに限らない。控えの選手たちも、同様に、積極的な声掛けで、コートでプレーする選手たちを支えている。今季は、セット間やタイムアウト間に、控えの選手たちが自発的にチームメイトに声を掛けに行く姿が格段に増えた。そして、外から見て感じる事を伝え、オンコートで戦う選手たちをサポートする。これこそが、今季の群馬銀行グリーンウイングスの強さなのだ。

吉岡も、「そうしたところに成長を感じる。リザーブの選手が気付いて、伝える声が増えた。自分が入った時にどうするのか、常に考えて、準備してくれている。」と話す。

今シーズンのグリーンウイングスは、劣勢の場面でも、途中から入る選手が流れを変え、勝利につなげるシーンが多く見られた。もちろん、選手は、スタートから出たい、より多くの時間コートでプレーしたい。その思いも持ちつつも、チームのために、自分が何をすべきか忘れず、行動できるのも今シーズンのグリーンウイングスの選手たちの成長と言える。

副キャプテンを務める斉藤千佳も、昨季と違い、今季は、途中出場が多かった。だが、ひとたびコートに立てば、チームの流れを引き寄せる事に大きく貢献した。

斉藤は、「途中から出る事が多く、気持ちの面で難しかった。だけど、シーズン後半は、起用法に関係なく、無心でプレーすることで自分らしさが出せた。」と振り返る。シーズン中、チームの状況や同ポジションの選手の様子、自分の状態などを冷静に見た時に、「気持ちを切り替えられるようになってからは、出た時の役割を考えるようになった。」と話す。

斉藤もまた、チームのために何ができるか、何をすべきか、考え、実践できる頼もしいひとりなのだ。もちろん、入れ替え戦でも、その思いは変わらない。

「出た時には、チームのみんなをいい方向に持っていけるようにしたい。自分より、チームの結果のためにがんばりたい。」と、斉藤は決意を口にした。

V1ヴィクトリーナ姫路との入れ替え戦は、2試合合計の結果で決まる。

吉岡は、「通用する部分もあると思う。大切なのは弱気にならない事だ。私たちの今のレベルの最高を出さないと同じラインに立てないと思う。試合までの残りの時間を無駄にせず、意識高く、勝つつもりの行動をしないといけない。」とV1昇格のために必要な条件を口にする。

斉藤も、「ここにきて、入れ替え戦に臨めるのも縁だと思う。差はあるけど、ぶつかって出し切りたい。」と覚悟を決める。

そう、逃げたら負けなのだ。できる準備、自分たちのバレーをやり切る事がV1への道を開き、何よりも大切な事だ。

吉岡は、「入れ替え戦は、自分たちで勝ち取ったもの。無駄にせず、やるしかない。バレーができる事に感謝して、恩返しできるよう、挑戦者らしく、戦いたい。」と決意を述べた。

群馬銀行グリーンウイングスが、6人制に移行し、Vリーグ参戦を決めた5年前、こんなにも早く、V1の扉の前に立てるとは思わなかった。チームの歴史においても、大いなる挑戦である。当然、期待やプレッシャーなど、選手たちにのしかかるものは多いだろう。だが、キャプテンが話すように、今回の入れ替え戦は自分たちが勝ち取ったものだ。誰に気にすることなく、自分たちのバレーをやり切って欲しいし、これまでに培ったものを出し尽くして欲しい。我々は、そんな彼女たちの姿を支持するし、全力で応援するだけなのだから。

2/22、23日の二日間、群馬銀行グリーンウイングスの持てるすべてをぶつけて、皆で、V1の扉を開けに行こう。